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3 シイ
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シイを初めて見た時、私はシイの事を「キレイな子」だと思った。
金髪の髪。
白い肌。
虹色の瞳。
思春期らしい子供のスレンダーな体格。
すらっと伸びた手足は、マネキンを連想させる程バランスが良かった。
あ、誤解をしないで欲しい。
この頃は特別な感情を、シイに対して持っていた訳ではないから。
そして「推し活」みたいに騒ぐ気持ちも無かった。
シイの見た目の感想として、「綺麗」だと思っただけ。
見た目はさておき、性格は寧ろ…シイの事を、とっつきにくい人だと思っていた。
シイと少し打ち解けた後、雑談をする間柄になった頃の話だ。
初対面時の「綺麗」の感想を伝えた事がある。
すると、シイは予想に反し…嫌な顔を見せた。
それが、照れ隠しから来る表情でない事は、オーラの色が証明していた。
「この珍しい瞳のせいで私の一族は世間と隔離して生き、挙げ句滅ぼされたんだんだよ。」
「…」
「おまけに、私は不良品だし。」
それだけ吐き捨てる様に言うと、シイはさっさと私から離れてしまった。
後でわかった事だが、シイの言う「不良品」とは「左目虹彩部分」の傷を差していたらしい。
左目虹彩部分を「月」に例えると、シイの虹彩部分は「満月一歩手前の月」を連想させる様に黒く欠けていた。
両目の違いについて私は気になってはいたが、シイの「不良品」発言に対し、大いなる闇を感じ、聞けずじまいの状態だった。
シイには年の近い幼馴染がいる。
大層お喋りな子で、その子がある日「不良品」の理由について教えてくれたのだ。
シイが実の父に殴られた時の後遺症らしいのだ。
そういう事を知り、私はシイに「シンクロニシティ」を感じる様になった。
とは言えシイを「面倒くさい人」だな、とは思った。
私がシイを「綺麗」と言った。
だがそれは、「珍しい瞳」を差していた訳ではない。
勝手に100%誤解しているのだ。
メンドクサイ。
そう思う一方、「気に障ったなら申し訳ない」という気持ちにもなり、私は素直に自分から謝ったのだ。
しかし、この件を気にかけていたのは、シイも同じだった。
シイのオーラの色が物語っていた。
「大人気ない事をした」
↓
「どうやって謝る機会を作ろう…」
↓
「向こうからやって来てくれた。助かった」
分かりやすいオーラの変化だと思った。
そしてシイという人間を「そこまで悪い人ではない」とも思った。
些細だが、この件でお互いの距離は少し縮まった。
だが、この「予想外」と比較にならない程の「距離が縮まる出来事」が起こる。
そこは、シイの仕事場だった。
シイの机の上に、無造作に置かれたギフトBOXが見えた。
しかも、そのギフトBOXは中途半端に開封され、中身が丸見えだ。
中身は、白い光沢のあるワンピースだった。
私の視線が数秒間、そのワンピースに釘付けになってった。
それに気付いたシイが、私に申し出た。
「私宛の貰い物で申し訳ないけど…気になるなら差し上げるよ?」
「…」
「…君が差し支え無ければだけど」
「……あるわ。私には似合わない代物よ。」
そう言うと、シイは首を少し傾げて私を見た。
思い返しても、なんと幼稚な態度だと自己嫌悪に陥る。
私のルックスは、お世辞にも美しいとは言えなかった。
私は自分の不自由な足以上に、自分の顔のパーツが大嫌いだった。
特に、父親譲りのダンゴ鼻と、高すぎる頬骨が。
私を「家の恥」と決め、見捨てた父。
鏡を見る度、父の事が顔を過り…その都度心が軋むのだ。
「…私なんかより、あなたの方が絶対に似合うわ。その代物」
そう言い放つ私の声音に…シイは強いネガティブを感じ取ったのだろう。
シイがガクリと…肩を落とした。
それから気を取り直すかの様に、シイは煙草を吸い出した。
ふうっー
シイが煙草の煙を長く天井に向かって吐き出す。
それから私に向かってこう言った。
「君が自分をどう思っているか、私は知らないが…私は君に似合うと思ったから譲渡を申し出たんだよ。」
煙草を灰皿に押し付けてシイは続けた。
シイは流し目だけ私に送って畳み掛ける様に言った。
「私が嘘を言ってるかどうか…君なら分かるよね。」
私の目を真っ直ぐ見て…シイが言い放つ。
オーラを見るまでもない。
お世辞でもなんでも無く、シイは私の為に申し出たのだ。
嘘のないオーラが私の目の端迄…届いた時、私のコンプレックスがシュと溶けた感覚に襲われた。
「…ごめんなさい。ありがとう、頂戴するわ」
私がそう言うと、シイが嬉しそうに微笑んだ。
それからギフトの箱を私の前に持って来た。
「絵画に登場する…天使が着てそうな雰囲気の衣装だろう?」
「…ふふふ、そうね」
「私みたいな…ポーかフェイスな奴より、君の様な愛嬌ある表情を出来る人が着た方がいいと思う。」
「…ふふ、天使はダンゴ鼻なんかじゃ無いわ。」
私がそう返すと、シイが一歩、私から引いてじっと私を見つめた。
「……………え、何?」
シイがあまりにも長い間、私をを「まじまじと見つめる」せいで、私は戸惑い始めた。
「こっちの方が好きかな」
「え?」
シイがぐいっと顔を私に近づけてきた。
おかげで私のダンゴ鼻と、シイの形のいい鼻がぶつかりそうになる。
思わず後退りする私に…シイがあっけらかんと言い放った。
「私は自分の顔より、君の顔の方が好きかな。」
薄く透明なオーラが、霧の様にシイから放たれてる。
それが物語っていた。
心底感じる「素直な気持ち」だと。
一瞬、頭の中が真っ白になった。
それとは対照に、顔が赤くなってくるのが自分でも分かる。
ここからだったと思う。
私の恋心は。
「…ん?ちょ…ちょま」
「ちょま?」
「ちょっと…待って、シイ…あなた、あなたって」
「あなたって?」
シイが、怪訝な表情で私の言葉を繰り返した。
「女なの?…こんなワンピースを、人から貰うって…女性?」
私は焦った。
私の生い立ちの件からお察しの通り、私は恥ずかしながらも「恋愛体質」なのだ。
とはいえ、同性をそういう対象として見た事は、今まで一度もない。
まさか、目覚めてしまったのか…私。
焦る私をシイは怪訝そうに見つめて、回答を寄越した。
「わからない」
「へ?」
間の抜けた「へ?」が自分から発せられたものだと…理解するのに数秒間を、私は要した。
それ程、シイの回答は予想外だった。
私の驚きを「置いてけぼり状態」にしてシイが続けた。
「これを私に寄越してた奴は、私に似合うと思って寄越した、らしい。私の見た目が妖精みたいだとか…言っていたかな?…うん?君の発言からして、ソイツは私が女だと思ったから寄越したって事なのか?」
「…し、知らないわよ…ソイツって人に聞いて見たら…」
「…そうか。そうだよな。うん…」
そう言うとシイは頭を掻きながら私から離れて行った。
悪い人で無さそうではないけど、なんか…変わった人?
シイの変わった部分に面食らい、それ以上の事は突っ込まなかった。
けど、私は後で思い知る事となる。
シイの「わからない」の意味を。
そしてそれが思いの外、恋愛対象として厄介であると言う事…を嫌と言う程、思い知る事になる。
それは次章のシイの特殊体質が大きく影響しているのだ。
詳細は次の章にて。
シイを初めて見た時、私はシイの事を「キレイな子」だと思った。
金髪の髪。
白い肌。
虹色の瞳。
思春期らしい子供のスレンダーな体格。
すらっと伸びた手足は、マネキンを連想させる程バランスが良かった。
あ、誤解をしないで欲しい。
この頃は特別な感情を、シイに対して持っていた訳ではないから。
そして「推し活」みたいに騒ぐ気持ちも無かった。
シイの見た目の感想として、「綺麗」だと思っただけ。
見た目はさておき、性格は寧ろ…シイの事を、とっつきにくい人だと思っていた。
シイと少し打ち解けた後、雑談をする間柄になった頃の話だ。
初対面時の「綺麗」の感想を伝えた事がある。
すると、シイは予想に反し…嫌な顔を見せた。
それが、照れ隠しから来る表情でない事は、オーラの色が証明していた。
「この珍しい瞳のせいで私の一族は世間と隔離して生き、挙げ句滅ぼされたんだんだよ。」
「…」
「おまけに、私は不良品だし。」
それだけ吐き捨てる様に言うと、シイはさっさと私から離れてしまった。
後でわかった事だが、シイの言う「不良品」とは「左目虹彩部分」の傷を差していたらしい。
左目虹彩部分を「月」に例えると、シイの虹彩部分は「満月一歩手前の月」を連想させる様に黒く欠けていた。
両目の違いについて私は気になってはいたが、シイの「不良品」発言に対し、大いなる闇を感じ、聞けずじまいの状態だった。
シイには年の近い幼馴染がいる。
大層お喋りな子で、その子がある日「不良品」の理由について教えてくれたのだ。
シイが実の父に殴られた時の後遺症らしいのだ。
そういう事を知り、私はシイに「シンクロニシティ」を感じる様になった。
とは言えシイを「面倒くさい人」だな、とは思った。
私がシイを「綺麗」と言った。
だがそれは、「珍しい瞳」を差していた訳ではない。
勝手に100%誤解しているのだ。
メンドクサイ。
そう思う一方、「気に障ったなら申し訳ない」という気持ちにもなり、私は素直に自分から謝ったのだ。
しかし、この件を気にかけていたのは、シイも同じだった。
シイのオーラの色が物語っていた。
「大人気ない事をした」
↓
「どうやって謝る機会を作ろう…」
↓
「向こうからやって来てくれた。助かった」
分かりやすいオーラの変化だと思った。
そしてシイという人間を「そこまで悪い人ではない」とも思った。
些細だが、この件でお互いの距離は少し縮まった。
だが、この「予想外」と比較にならない程の「距離が縮まる出来事」が起こる。
そこは、シイの仕事場だった。
シイの机の上に、無造作に置かれたギフトBOXが見えた。
しかも、そのギフトBOXは中途半端に開封され、中身が丸見えだ。
中身は、白い光沢のあるワンピースだった。
私の視線が数秒間、そのワンピースに釘付けになってった。
それに気付いたシイが、私に申し出た。
「私宛の貰い物で申し訳ないけど…気になるなら差し上げるよ?」
「…」
「…君が差し支え無ければだけど」
「……あるわ。私には似合わない代物よ。」
そう言うと、シイは首を少し傾げて私を見た。
思い返しても、なんと幼稚な態度だと自己嫌悪に陥る。
私のルックスは、お世辞にも美しいとは言えなかった。
私は自分の不自由な足以上に、自分の顔のパーツが大嫌いだった。
特に、父親譲りのダンゴ鼻と、高すぎる頬骨が。
私を「家の恥」と決め、見捨てた父。
鏡を見る度、父の事が顔を過り…その都度心が軋むのだ。
「…私なんかより、あなたの方が絶対に似合うわ。その代物」
そう言い放つ私の声音に…シイは強いネガティブを感じ取ったのだろう。
シイがガクリと…肩を落とした。
それから気を取り直すかの様に、シイは煙草を吸い出した。
ふうっー
シイが煙草の煙を長く天井に向かって吐き出す。
それから私に向かってこう言った。
「君が自分をどう思っているか、私は知らないが…私は君に似合うと思ったから譲渡を申し出たんだよ。」
煙草を灰皿に押し付けてシイは続けた。
シイは流し目だけ私に送って畳み掛ける様に言った。
「私が嘘を言ってるかどうか…君なら分かるよね。」
私の目を真っ直ぐ見て…シイが言い放つ。
オーラを見るまでもない。
お世辞でもなんでも無く、シイは私の為に申し出たのだ。
嘘のないオーラが私の目の端迄…届いた時、私のコンプレックスがシュと溶けた感覚に襲われた。
「…ごめんなさい。ありがとう、頂戴するわ」
私がそう言うと、シイが嬉しそうに微笑んだ。
それからギフトの箱を私の前に持って来た。
「絵画に登場する…天使が着てそうな雰囲気の衣装だろう?」
「…ふふふ、そうね」
「私みたいな…ポーかフェイスな奴より、君の様な愛嬌ある表情を出来る人が着た方がいいと思う。」
「…ふふ、天使はダンゴ鼻なんかじゃ無いわ。」
私がそう返すと、シイが一歩、私から引いてじっと私を見つめた。
「……………え、何?」
シイがあまりにも長い間、私をを「まじまじと見つめる」せいで、私は戸惑い始めた。
「こっちの方が好きかな」
「え?」
シイがぐいっと顔を私に近づけてきた。
おかげで私のダンゴ鼻と、シイの形のいい鼻がぶつかりそうになる。
思わず後退りする私に…シイがあっけらかんと言い放った。
「私は自分の顔より、君の顔の方が好きかな。」
薄く透明なオーラが、霧の様にシイから放たれてる。
それが物語っていた。
心底感じる「素直な気持ち」だと。
一瞬、頭の中が真っ白になった。
それとは対照に、顔が赤くなってくるのが自分でも分かる。
ここからだったと思う。
私の恋心は。
「…ん?ちょ…ちょま」
「ちょま?」
「ちょっと…待って、シイ…あなた、あなたって」
「あなたって?」
シイが、怪訝な表情で私の言葉を繰り返した。
「女なの?…こんなワンピースを、人から貰うって…女性?」
私は焦った。
私の生い立ちの件からお察しの通り、私は恥ずかしながらも「恋愛体質」なのだ。
とはいえ、同性をそういう対象として見た事は、今まで一度もない。
まさか、目覚めてしまったのか…私。
焦る私をシイは怪訝そうに見つめて、回答を寄越した。
「わからない」
「へ?」
間の抜けた「へ?」が自分から発せられたものだと…理解するのに数秒間を、私は要した。
それ程、シイの回答は予想外だった。
私の驚きを「置いてけぼり状態」にしてシイが続けた。
「これを私に寄越してた奴は、私に似合うと思って寄越した、らしい。私の見た目が妖精みたいだとか…言っていたかな?…うん?君の発言からして、ソイツは私が女だと思ったから寄越したって事なのか?」
「…し、知らないわよ…ソイツって人に聞いて見たら…」
「…そうか。そうだよな。うん…」
そう言うとシイは頭を掻きながら私から離れて行った。
悪い人で無さそうではないけど、なんか…変わった人?
シイの変わった部分に面食らい、それ以上の事は突っ込まなかった。
けど、私は後で思い知る事となる。
シイの「わからない」の意味を。
そしてそれが思いの外、恋愛対象として厄介であると言う事…を嫌と言う程、思い知る事になる。
それは次章のシイの特殊体質が大きく影響しているのだ。
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