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4 特殊体質

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シイの特殊体質。
先の章にで私はそう言った。
けれども、正確に言えば「シイの一族の特殊体質」だ。
先の章でも述べたが、シイは「おしゃべりな」人ではない。
いや、これも正確ではないかな。
シイは悪友との下らないギャグやら、適当な雑談には喜んで付き合うが、自分の事は積極的に語らない。
それ故に、これから語る特殊体質について…情報のソースは例の「シイの幼馴染であるサン」という子だ。
この子は、シイと違い何でも「しゃべる子」だった。
しゃべり過ぎる傾向がある為、「もしかして話を盛られてる?」と話相手に疑われる事も、度々発生している。
それでも、シイが自分に関する事を積極的に語らない分、謎の多い「一族の特殊部分」を知る事が出来た事は…大袈裟な言い方だが、この「おしゃべりな幼馴染のサン」の功績だろう。
以下、サンの回想だ。

******

ハーイ!私はサン!シイの幼馴染。アンタって、シイと仲良いよね?もしかしていい関係だったりする?…いい関係って…シイは男の子かって?…う~ん、まだ分かんないんじゃない?かなり遅い方だけど。私?私は女の子だけど。えっ?ああ、そのジョークだよ!「いい関係」ってのは!挨拶を兼ねたジョーク!アンタ、真面目?シイと「仲良さげ」なだけあって、ちょっとシイとそう言う部分似てるよね?ちょっと気難しい…ジョーク通じない感じ?…全くさ…シイってあれでも小さい頃は、すごい寂しがり屋の甘えん坊だったんだよ?…私が一緒に寝てあげないと…癇癪起こしてさ。シイは小ちゃい頃に親父から離れて村にやって来たんだ。そこから暫くの間は、ずーっと私の後をくっついて歩くの。こうやって、私の服の端っこ握って…ん?私達の性別の事、詳しく聞きたいって?……………「まだ分かんない?」の部分が理解出来ない?………あ~あああ…そう言われると、そうかもね。あのね、あのね、私達一族って普通の人が思春期を過ぎる年齢ぐらい迄は、性別って不明なの。なんか言い伝え的な感じ…口語伝承ってやつ?えへっ…小難しい言葉知っているでしょう?昨日読んだ漫画に出てたの、むふふっ…ん、え、ああ続きね…口語伝承、口語伝承っと…一番最初の、私達の御先祖様が子供の頃のさ、とある日、色々あって「人で無いものに変化」したんだと。で、色々そこからあったんだけど、紆余曲折?へへっ賢そうな熟語知ってるでしょ?…で、その、その「紆余曲折を経て」元の人間に戻った…らしいんだけど、戻った時期がさ、普通の人でいう思春期を過ぎた頃なんだ、と。だから私達はえらい力持ち…ん?性別の話だったね?だからっと…人間に戻ったのが、思春期を過ぎた辺りで、そこからちゃんと女の子に変化してさ、結婚して子供産まれて…その子孫が私達なの…う~~~~ん、「人でないものに変化」した時は性別もクソも無い感じだったんじゃない?あ、ああ~!でもさ、でもさ、大変だった。私さ、性別が女に分化した時は大変だった!「普通の人が胎内から思春期にかけてゆっくり分化する」のにさ…私達は思春期過ぎた辺りに急激に分化するから…おばば様達から「キツイよ~」とは聞いていたけど、想像を超える「キツイさ」だった。もうさ…体が急な変化に悲鳴あげてんのがさ、わかるの…シイもきっとキツイんだろうね…普段からスカした態度取っているから…それでヒイヒイ言っているトコ、見てやりたい…あ、ああ、ごめん、なんか泣き声すると思ったら…ウチの子供だ、ったくあの乳母、何サボってんだよ。絶対っクビにしてやる…!」
回想終了。
サンとの会話は…会話というよりも、一方的な「マシンガントーク」だった。
サンの強烈なキャラに…私は圧倒されつつも、一方で満足していた。
シイの「分からない」の回答を得たからだ。
そして思慮浅い私は、安堵していた。
シイの今現在の性別は、未確定である。
男性に分化する可能性も、充分にある。
『あの人の特別になりたい』
私の口から思わず、希望が飛び出した。
そして思慮浅い私は、思い至れなかった。
サンが一言も言及しなかった(言及すら思いつかなかった、という表現が正確だろう)、性別未分化の人間が、そのメンタルに…恋愛感情をどれだけ「持てるか」について。
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