I don't like you, but I love you

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「恋愛」
この言葉の意味をググれば、様々な解釈が出てくる。
ググった一例として「特定の相手に愛情を感じる事」と説明されてる例もある。
多少の「気持ち悪さ」否めないが…この解釈では「家族にも当てはまるじゃないか」と考える人もいるかもしれない。
私はそう思った時、「恋」という言葉をググった。
「恋」
「恋:特定の相手に強く惹かれる事」
うん、この解釈ならば男女の惚れたはれたに近いイメージだ。
「愛」
こっちもついでにググってみた。
「愛:いつくしむ気持ち。親子愛、兄弟愛。ペット愛などもある」
別々にググって私はピンときた。
「恋」
遺伝子を残すシステムダウンロードが完了し、その実行の為に特定の相手に惹かれる事。
それプラス、その「特定の相手を愛しむ気持ち」を持つ事が「恋愛」なのではないかと。
身も蓋もない言い方だけど、性欲を発散させたい気持ちのみで…相手に惹かれる事は「恋」ではないのだ。
つまりは「恋愛」とは、遺伝子を残す為の発情システムが作動中の「そのワンランク上」の…相手を愛しむ…という事を指すのだと、思う。
こんな事を冷静に調べ、考えている私は…かなりの変わり者で暇人だろう。
しかし、こういう事を調べてしまう背景には「それなりの手痛い経験を積んだ」からこそだ。
4章で少し語った通り、私は結構な「恋愛体質」だと思う。
村社会で「はとこ」に熱を上げ、彼の子を産んだ。
その後、私は村を出た後で…別の男性と結婚している。
が、その男性とも子供を儲けた後、別れてしまう。
つまりは、私シイと出会う前には既に「バツ2子持ち状態」だったのだ。
当時を内省すると、私は焦っていたのだと思う。
バツがひとついた状態では、それを挽回する事に一生懸命だったのだ。
バツが二つの状態の時、私は諦めてしまった。
このまま、二人の子を育て上げ、それが完了した時点で私の人生は終わり。
漠然とそう思い込んでいた。
だが、そこは恋愛体質人間の「怖しい」ところだ。
少しでも「脈のありそうな相手」が出現すると、途端に諦めの感情は「忘却の彼方」だ。
しかもその相手は、自分に好意的且つ、我が子にも優しい感心を示す。
シイと私は…お互いのプライベートへ互いに「緩やかな侵食」をする様になる。
その度、お互い豊かな表情を見せ、砕けた口調での会話が増していく。
増えていくそれらに…私を有頂天になっていた。
これは、天から私に与えられた「ギフト」だと。
シイを「恋愛対象」として意識したあの日。
シイから譲られた、「ギフト」のワンピース。
シイは…ワンピース以上の「ギフト」だ。
「最後で最上のチャンス」なのだ、これは。
私は、シイに夢中になっていた。
*****
「私は、男に分化すると思う。」
私が、シイと共にテレビで「緩いトーク番組」を視聴していた時の事だ。
突然、シイが「男に分化する」発言をしたのだ。
テレビでは、白いモーニングと純白のウェディングドレスの花嫁が映っていた。
少し驚く私に、シイが続けて言った。
「花嫁衣装の白色は『あなたの色に染めて』という事らしいね。」
私は自分の胸の鼓動が…高揚するのを生々しく感じ取った。
「分化にも傾向があってね…周囲が男性ばっかりだと、未分化の奴は女性に分化する傾向があるらしい。サンは女性に分化しただろう?そうなると、私は逆に分化する可能性が高い、かなあ…」
シイの後半のしゃべりは、独り言に近かった。
「今の養父の所に来てからも、私の扱いは男性寄りなのは…強く感じるし、そこのところも…分化に影響するんだろうね。」
私は緊張して、思わず生唾を飲んだ。
今だ。
言ってしまえ。
私達は「いい感じの関係」だ。
シイは変わり者だけど、良い人だ。
きっと最高の配偶者で、良き父親になってくれるに…違いない。
逃すな。
逃すな。
チャンスをモノにしろ。
「…ん?この花婿も白い衣装だけど、これも花嫁の色に染めて欲しいって意味かな?…そしたら、お互いがお互いの色にチェンジするだけじゃないか?一緒に居る内に互いの色に混ざるの?…色が見える君は、そこの所…分かるの?」
「試してみればいいわ。」
「え?」
「シイ、あなたって基本は人の意見を鵜呑みにせず、自分で確認して己の納得する着地点を見つけようとするでしょ?」
おそらくシイは、私の言っている事がわからないのだろう。
キョトンとした顔で、シイが私を見つめている。
シイの表情に「ハテナ」が色濃く浮かぶ。
それらが物語っていた?
『何を言ってるの?ロク』
私は意を決して…シイに申し出た。
「シイ、あなたが男性に分化したら…私との結婚を考えてくれる?」
シイは一瞬、驚いた顔を見せた。
しかし次の瞬間、シイは嬉しそうに微笑んで言った。
「うん。いいよ。」
拍子抜けする程、ライトな口調だった。
私の緊張が「シイの予想以上の軽い反応」に肩透かしを食らったのだろう。
私は気が抜けて、自分の座るソファの背もたれに、ダラリと伸びてしまった。
「ロク?…どうかした?」
「…いやだって、だって…私は緊張MAXでプロポーズをしたのよ?あっさり承諾されると思わなかった。」
「…ああ、なるほど。」
「私は、仕事でのあなたを見てるからね…交渉事も絶っ対に、主導権を相手に握らせないでしょ?」
「それは、基本だよ。主導権を取られる事は『生殺与奪の権』を握られる事だ」
さっきの微笑みが消え、シイが仕事上で見せる「隙の無い表情」になった。
「だから、そことのギャップに驚いて……ああ、脱力してしまっただけよ。」
私がそう言うと、シイは納得した様子だった。
「…あ、そういう事」
「でも、嬉しい。今日は人生最高の日。私のプロポーズを…そんな貴方が承諾するなんて。」
「ニイが言っていた。結婚って、好き人とする事なんでしょ?世界的な社会通念ではね。ウチの国では違うけど…君の指す結婚がニイの言う意味だって事は、理解出来る」
シイが答えた。

ああ、補足しておくわ。
会話に出て来た「ニイ」という人物は、シイの悪友だ。
彼は「恋愛」に疎いシイに対し「事ある毎」に「恋愛座学」をレクチャーする存在だ。
「ふふっ…結婚式にはニイも招待しなきゃ、ね」
「そうだね。それまでに「仕事からの引退」を含む「諸々の課題」を片付けてから臨まなきゃね」
そう応じたシイの様子は…「無邪気な子供そのもの」を連想させた。
この時、私は気づくべきだった。
オーラで「全てを分析出来る能力」を、持っているくせに。
いや、思い返せば…私は気付かないフリをしていた…のかもしれない。
何故なら、シイのオーラには嬉しい感情が、発現されていた。
そこに嘘偽りは一切無かった。
だけども、そこに「恋」を表す色も無かった。
どうしてこの時、私は「気付かないフリ」をしたのだろう。
そうすれば、私達は泥沼に陥らなかったのに。
恋は盲目とはよく言ったものだ。

だけども、シイも方はどうだったのだろう?
私と同じく…相手へ向ける愛情の序章に「恋」はあったのだろうか?

「愛」があっても「恋」がない人物。
それが…この当時のシイだったのだ。
いや、シイには「恋」というモノが感覚的に分からなかったのだ。
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