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12 present day3〜回想1
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Present day ~回想1
シイの控室のドアを前に立つ。
先程の静けさと打って変わり、そこには騒がしさがあった。
ヘリコプターの爆音。
吹き荒れるダウンウォッシュの風。
それらが、控室のドアを「ワイドオープン」状態へと展開している。
目の前には、私とシイが、先程迄一緒に腰掛けていたソファがあるが、肝心のシイが居なかった。
その状況に驚き…私はシイに飲ませる為に手に入れたミネラルウォータを、思わず床に落としてしまった。
私は控室を見渡す。
ソファの左側に位置する部屋の…引き戸が開いていた。
引き戸のある部屋へ向かおうと、私は体を左側へ向けようとする前に気付いた。
「引き戸と平行線状態に設置された鏡」に映った…ある人物に。
キュウだ。
そして向かいにシイもいた。
私は驚き、鏡のリフレクションを凝視した。
ふたりは、何かを言い合っていた。
ヘリコプターの轟音のせいで、会話の内容は聞こえない。
だが、ふたり共「鏡越し状態で、私に見られている事」に全く気付いていなかった。
その時だ。
突然、ヘリコプターの轟音が止んだ。
それと同時に、ふたりの会話が私の耳に届く。
「なんて事を…してくれたんだ!…君は院長に、何と申し開きをするつもりだ!」
シイの動揺した声が、私の耳に届いた。
「こうでもしないと…お前は、俺と話をしようともしないだろ!」
少しだけ声を荒げたキュウが、シイに反論している。
キュウは声を荒げてはいるが、鏡越しに映る彼のオーラは、平常運転だった。
対するシイのオーラは、「驚き」「戸惑い」「怒り」で構成されている。
その時、キュウがシイにゆっくり近づいた。
シイが後退りする。
シイは、聖職者が着用する丈の長い衣装に…完全に慣れていなかったのだろう。
キュウが近づいてきた事に「明らかに戸惑ったシイ」は、後退りしながら…自分で自分の裾を踏んでしまう。
当然、シイは軽くよろけた。
シイが床に膝を着く前に、キュウがシイを軽く抱き止める。
そのふたりを目にして、私は軽いデジャヴを感じた。
私は記憶の中から、デジャヴの正体を探した。
私の記憶が答えたデジャヴの正体は、「舞踏会のシイと美女」だった。
美女にキスされ、驚いたシイが後退りした。
シイに後退りされ、バランスを崩して倒れ込む美女。
王子様のシイが、美女を抱き止める。
「聖職者の衣を纏った」シイは、「舞踏会の王子様」のシイの時と比べて、完全に立ち位置が逆転している。
それを認識した瞬間、私の中で何かが塗り替えられた。
『ああ、王子様は…美女になってしまった』のだと。
あの時、私は自分は女だが、美女に好きだと迫られれば…同性とはいえ、テンション爆上がりだと言った。
だが、この時思った。
美女が躓いた時、迷いも無く抱き留めてやれるか?
答えは「NO」だ。
私がここまで自分の思いを巡らせている間、ふたりはじっと見つめ合っていた。
抱き留められたシイは、驚きの表情でキュウを見つめている。
「シイのオーラ、シイ本人の表情も」互いに一ミリの乖離も無く、「驚き」を浮かべている。
が、次の瞬間、そのオーラに変化が発現する。
シイに、ピンクのオーラが出現した。
そして…ピンク色が次第に濃くなる。
その変わりゆく速さは、上昇気流が「竜巻」に変化する様に似ていた。
シイの様子に、影響を受けているのだろうか?
キュウが吸い寄せられる様に、シイに顔を寄せた。
それから、キュウはゆっくりと…シイの唇に自分の唇を重ねた。
その出来事の影響だろう。
更なるオーラの変化がシイに現れた。
シイがこのような短時間で、オーラに沢山の多く変化を見せた事は初だ。
私はその事実に驚き、自分の体を固まらせたまま…シイのオーラを凝視した。
その時だ。
シイの「濃くなる赤色のオーラ」の色の中に、金色が薄らと発現した。
私は再度驚き…シイの「金色オーラ」を見つめる。
「金色オーラ」は、薄らとした光にも見えた。
それは唇を重ねたキュウをも、包み込む形で広がる。
キュウが自分の両手で、シイの頬を包みこんだ。
それからキュウは、自分の顔を少し傾け…より深くシイと繋がろうかとする様に、自分の唇を深く重ねる。
シイが、それを受け入れるかの様に、薄っすらと目を瞑る。
それは私が初めて見た…シイの表情だ。
少なくとも私とキスをした時には、シイが見せてくれなかった表情だ。
シイのその「何とも形容し難い表情」
私はその表情に、吸い込まれる様に魅入っていた。
何処かで見覚えのある表情だ。
初めて見ると言ったくせに、見覚えがある…この矛盾。
見覚え。
そうだ、それは…何かの絵画で見た。
私も脳が、その記憶を探り当てた後、それを全面に押し出してくる。
その正体は、ある有名画家の絵画だった。
そちらの「異世界」で有名な画家「クリムト」の「抱擁」だ。
恋人からキスを受け、うっとりとした表情を浮かべる女性。
彼女の表情は、「うっとり」の一言では説明できない…「恍惚」としたモノが浮かんでいた。
そして、私はその絵画を「何と美しくも、羨ましい」と思ったのだ。
なんとも、妙な感覚ではないか。
元恋人が、別の恋人とキスする姿を…「羨ましいと感じた絵画の女性と同じだ」と認識するなんて。
キュウが、シイの頬を包んでいた手を撫でる様に動かす。
シイはその手に…頬を擦り寄せている。
それからシイは、自分の手を伸ばし…キュウの首元に回す。
シイは、ゆっくりとキュウの首に抱きついた。
そして、私の心臓が…口から飛び出そうな程、「ドキリ」としたセリフを…シイは言った。
「…私は…本当に…ロクが好きなんだ…本当な…」
シイは最後迄、セリフを言えなかった。
キュウが、シイの呟きを自分の唇で塞いだのだ。
キュウが邪魔くさそうに、シイの被り物の聖職者の頭巾に手を掛けた。
と、その時だ。
『ガチャーン!』
派手に「何と何か」がぶつかる音が響いた。
「何と何か」の正体は、「キュウとコート掛け」だった。
「キュウとコート掛け」だけを見ていたら、『ガチャーン!』というクラッシュ音が発生した原因は分からなかっただろう。
私は直ぐ様、シイに視線を遣った。
シイの着用する衣の長裾から、シイの足が伸びていた。
その形を見て、私は直ぐに理解した。
『シイが、キュウを蹴飛ばした』のだと。
その事実を認識し、私は驚き固まってしまった。
キュウも、私同様に固まっていた。
だが、誰よりもこの「事実」に驚いていたのは「シイ自身」だった。
シイは自分の大きな目を、皿の様に大きく開き「事実」を凝視して…固まっていた。
その時だ。
再び、ヘリコプターの轟音と共に…ダウンウォッシュの風が部屋に入り込んだ。
それらが、合図と言わんばかりに「私達三人」は、金縛が解けた様に体を動かした。
シイが、よろりと立ち上がる。
それから、シイは恐る恐る…キュウに近づき、尻餅をつく様に座り込む彼を抱き起こした。
『キュウを抱き起こすシイの姿』を私は認識し、再び私の中でデジャヴが顔を覗かせる。
私のデジャヴがちょろっと囁く。
『王子様のシイは、まだ健在だと』
「…すまない、キュウ。………許してくれ。」
言葉少なめに、謝罪と許しを乞う『王子様のシイ』を…キュウは無表情で凝視していた。
それからキュウは、自分を抱き起そうとするシイの手を振り払い…逆にその手を掴んだ。
再度、驚きの表情を浮かべるシイを、キュウが抱き寄せた。
それから、キュウはシイを己の胸に抱き留めた状態もまま、乱暴に引き摺る様にして…引き戸のある部屋から共に出た。
シイは、驚きの表情を浮かべ、キュウに引き摺られるがまま…自分の足をもつれさせながら、ついていく。
いや、連れて行かれてるという表現が正確だろう。
そしてキュウは、ヘリコプターが「ホバリング」するバルコニーに…シイを引き摺って行く。
ああ、何という事だろう。
美女は、王子様に戻る事はできなかった…私のデジャヴが、「OMG」と嘆きながら…影を潜めた時だ。
シイを抱き留めて、引き摺るキュウ。
キュウに引き摺られながら、部屋を出るシイ。
このふたりと、私はガッツリ鉢合わせした。
当たり前である…。
ふたり共、驚いた顔を見せた。
先に口を開いたのは、キュウだった。
「あんたも、一緒に来るんだ…ママ。」
キュウは私に向かってそう言い放つと、シイを拘束する手を片方だけ解いた。
それから、足の不自由な私を…ヘリコプターに乗る手助けをするかの様に、私に手を差し伸べた。
********
二年以上、前の事だ。
「ロク…すまない。君とは、結婚出来ない。」
ある日の事だ。
何の前触れも無く、シイから私は告げられた。
その言葉を耳にして、ドライで冷たい「何か」が…私の心の中に流れる。
心中に流れた感情の名を見つけられないまま、私はシイに尋ねた。
「私に悪い所があるなら言って、直すわ。」
「違う、そうじゃない。」
「最初から、私の事は遊びだった?…私の田舎の『はとこ』みたいに?」
「そんな事はない。「純粋な好き」が結婚への発動条件なら、君以外居ない。」
「他に『気になる人』が出来たの?」
「違う。君より『気になる人は居ない』君が一番大事だよ。」
私の質問を重ねる度に、シイの答えが「情」に深いものになって行く。
シイの「情」に溢れた言葉で紡ぐ回答は、私の心を抉った。
シイが「情」に溢れた言葉を紡ぐ度、それに比例するかの様に私の「堪らない気持ち」が私の心を一杯にする。
シイの回答には「嘘偽り」が全く無かったのだ。
間違い無く、シイは私が一番好きだ。
この時ほど、私は自分のオーラが見える能力を…呪わしく思った事はない。
いいや、この時だけに限った事ではない。
最近では、「見たくもない」モノを見るのだ。
シイの中に発現し始めた、ピンク色のオーラ。
偶にピンクから、赤よりのピンクに変わっていく様子。
これらは、私に対して発現されたオーラじゃない。
私が、シイの顔にキスをした時の「カケアミ」状の白黒オーラ。
これは「戸惑い」と「違和感」を表していた。
どれも、最近から出始めたオーラだ。
冷たくドライな何かが、私の心の中で何かを崩していく感覚に襲われた。
心の状態を表すかの様に、冷たい声色が私の口から発せられた。
「二度、恋愛に失敗してきたわ。」
シイが少し目を見開いて私を見た。
「二度とも、「愛」を知らないクズ男達だった。」
言葉にしてみると余りの「情けなさ」に、我ながら涙が出て来る。
思いの外、過去を乗り越られてない事を…自覚したまま、私は言葉を続けた。
「二度とも、自分を責めたわ。私が「子供」過ぎて…人を見る目が無かったのだと。」
シイが私に接する時の…様々なシーンが脳内再生される。
仕事で自分に余裕が無い時でも、何処かで私を…気していた。
それは「戸惑い」と「違和感」を意味する「アミカケ」のオーラを発現させていた時…でさえもだ。
今では嫌と言う程、分かっている。
それは、私へのベースに「愛」があるからだ。
だからこそ、私を気にかけてくれる。
「だから、クズ男達の「「サヨナラ」を受け入れたわ。浅はかな自分への罰と思って」
「ロク…」
間違いなく、シイは愛情深い人だ。
今度こそ、本物を見つけてたと思った。
「今度も、私は罰を受けなきゃならないの!?」
「ロクっ…!」
「触らないでっ!」
私へ伸ばしたシイの手が、ビクッとなった。
私は…ポロポロ涙を流した。
シイは嗚咽を漏らす私に、ハンカチを差し出したり、水を差し出したりと、やはり「気にかけて」くれる。
何よりも、シイのオーラや表情が物語っている。
『心配だ。』
『申し訳ない』
私の嗚咽が落ち着いた辺りで…シイが言葉を紡いだ。
「『君が一番好きだ』その言葉に嘘はない。」
シイは先程「続きだ」と…言わんばかりに語り出した。
「都合の良い事ばかり、と言われればそれまでだ…結婚は、出来ないけど…」
シイが一度、言葉を切った。
シイのオーラに緊張の色と模様が発現した。
それは「氷の女王」を飾る「霜の結晶が勢いよく伸びる枝」の如く、シイから伸びる。
「君とは、繋がっていたい。」
笑い声が…部屋の中にこだまする。
おそろしくネガティブ且つ、攻撃的な感情を含む笑い声だ。
私の中で、過去にシイの言った言葉が顔を覗かせる。
交渉事の主導権の話しだ。
「主導権を握られる」イコール「生殺与奪の権を渡す」」なのだと。
自分に都合の良い要求を口にするシイに、厚かましさを感じた。
私は、今迄仕事上で…「シイの交渉事」は沢山目にしてきた。
中には、強い反感を示す相手も当然、居た。
今の私は正に、その立場なのだ。
私は、シイを見つめる。
シイが黙り込み、俯いた。
その顔とオーラは怒られ、モジモジする子供そのものだった。
そこにきて私は、笑い声を発しているのが…自分だと気付いた。
それに気付いてからは、更に可笑しくなった。
無性に可笑しくて可笑しくて、仕方なかった。
私は腹が捩れる程笑い、笑いが収まる頃には…シイは私から見て顔が見えない程、頭を垂れて俯いていた。
「今まで通り、「あなたのママ」をやれ、と?」
笑い声の余韻を引きずった、上擦った声で私はシイに尋ねた。
シイがゆっくり顔を上げる。
「ロクっ……………!」
「これ以上っ…!私に何を望むの⁉︎」
私の言葉に…表情を強張らせたシイが、ぎこちなく口を開いた。
だが、シイが言葉を発する前に…私が言葉を発した。
「それが了解できるならっ…ふたり目の夫と別れてなんか、いないっ…」
シイが再度、頭を垂れる様に俯いた。
その様子は、判決を待つ被告人を彷彿させた。
「あなたとの間に「鎹の子」が居ない私に何を…望むの!?」
またもや、シイとの過去のやり取りが脳内再生された。
そう遠くもない過去だ。
私がシイの唇に触れ、ハグをする。
その度にシイは、癒されオーラを放った。
そのシイのオーラが「アミカケオーラ」に変化したのは、最近の事だ。
変化をもたらしたのは「悪夢」の存在だ。
「悪夢」は、シイに影響を与えただけじゃない。
私にも影響を与えたのだ。
私は、シイに手を伸ばした。
両手でシイの頬を包む。
シイが顔を上げて、私見つめた。
強張った表情とオーラには「覚悟」があった。
「どんな裁きでも受け入れる」
そう物語っていた。
『生殺与奪の権を…』
そう話していたシイが再度、脳内再生される。
今のシイは全く真逆だ。
『生殺与奪の権を…』私に、握らせているじゃないか。
私は世界中の誰よりも今、この人を地獄に落とす力を持っている。
そう認識した瞬間、私の中の「攻撃的なモノ」がポトリと落ちた。
「シイ…あなた…あなた………苦労するわ…この先…とても」
シイは無言で、私の両手に手を添えて目を瞑った。
*****
「何で、ロクさん来なかったのお!?」
ニイが明るい調子で、私に尋ねてきた。
シイと私が、「恋人関係終了」後、暫く経過後の話だ。
「私が仕事を引退したら、ニイの地元へ…ワンシーズン滞在する話になっている。ロクも一緒に行こう。子連れも歓迎だと彼は言っている」
私を長めのヴァカンスに誘う「懐かしいシイ」が、私の脳内で再生される。
「別れた、だの…くっついたのってのはよお…俺の地元じゃあ平常運転だぜ。だから、シイのヤツの事は気にしねえで…遊びに来てくれよ!」
私に気を遣う様に、ニイが私をヴァカンスに誘ってくれた。
実際、今の彼は…私に物凄く気を遣っている。
彼のオーラにも、それが「あちあり」と出ている。
ニイは普段から、ぶっきらぼうな「べらんめえ」調の話し方をする。
そのせいで誤解されがちだが…ニイは、シイと比較にならないレベルの「気にし屋」である為、物事をあれこれと考え、それに起因する不安を抱え込む「根暗」だ。
むしろ、シイの方が自分の中で、自然発生した「不安」や「クレーム」は一ミリの遠慮もせずに、それらをアウトプットする。アウトプット後、それ等はある程度忘却の彼方となるようで、その一分後には、他の事で「はははっ」笑っている様な「根明」タイプだ。
シイは、「それはそれ、これはこれ」とでも言う様に、私が同行しないヴァカンスをニイの地元で過ごしているらしい。
これが、ニイと逆の立場ならば…ニイはひとり部屋に引き篭もり、ウジウジと「別れ」を引きずっていたのだろう。
とはいえ…ニイは、例の「ナンパ」文化が根付いた地域性で育った人間だ。
ある程度の「失恋減価償却期間」が終了すると、回復期に突入し、そこからの浮上は光速レベルだ。そしてニイは再度「ナンパ文化」を前面に出して、次の恋に邁進するのだ。
「相談事があって私の所来たんでしょ?」
私の指摘にニイは、分かりやすくも「ギクリ」とした表情を見せた。
「オーラの色、ピンク1:赤:4ネイビー:5…赤がネイビーと絡み合い、一部が溶けている…色恋絡みの心配事?シイの話題が出たって事は、シイが絡んでる?」
ニイが、冷や汗を掻いて項垂れた。
「怖え…ロクさん、お、お見通しぢゃっ…ねえか…。」
「そうよ。あなたが偶にシイに対して『友達』以上の感情を抱いていた事は、知っているわ…私が気になるのは「元カノ」である私に「元彼」と表現していいのかな…「元彼シイ」の事を相談する…あなたの心境、ね。」
ニイが遣り辛そうに…目の前で組んだ自分の手で、自分のを隠す。
「あなた程の『恋愛大先生』が『専門分野』で他人のアドバイスが求めるなんて…しかも相談相手に選んだのが、「恋愛経験があなたよりも少ない私?」あり得ないでしょ?自分では色々と背負いきれないから、シイママに泣きついてきた?…みたいな感じ?どんな事でシイは…あなたを困らせているの?具体的に言って。」
「…お見通し過ぎて怖え…ちょっ、ちょっと待って。」
ニイは数分間黙っていたが、やがて意を決したかの様に話始めた。
その話の内容は、私も予想だにしない「斜め上の展開」だったのだ。
Present day ~回想1
シイの控室のドアを前に立つ。
先程の静けさと打って変わり、そこには騒がしさがあった。
ヘリコプターの爆音。
吹き荒れるダウンウォッシュの風。
それらが、控室のドアを「ワイドオープン」状態へと展開している。
目の前には、私とシイが、先程迄一緒に腰掛けていたソファがあるが、肝心のシイが居なかった。
その状況に驚き…私はシイに飲ませる為に手に入れたミネラルウォータを、思わず床に落としてしまった。
私は控室を見渡す。
ソファの左側に位置する部屋の…引き戸が開いていた。
引き戸のある部屋へ向かおうと、私は体を左側へ向けようとする前に気付いた。
「引き戸と平行線状態に設置された鏡」に映った…ある人物に。
キュウだ。
そして向かいにシイもいた。
私は驚き、鏡のリフレクションを凝視した。
ふたりは、何かを言い合っていた。
ヘリコプターの轟音のせいで、会話の内容は聞こえない。
だが、ふたり共「鏡越し状態で、私に見られている事」に全く気付いていなかった。
その時だ。
突然、ヘリコプターの轟音が止んだ。
それと同時に、ふたりの会話が私の耳に届く。
「なんて事を…してくれたんだ!…君は院長に、何と申し開きをするつもりだ!」
シイの動揺した声が、私の耳に届いた。
「こうでもしないと…お前は、俺と話をしようともしないだろ!」
少しだけ声を荒げたキュウが、シイに反論している。
キュウは声を荒げてはいるが、鏡越しに映る彼のオーラは、平常運転だった。
対するシイのオーラは、「驚き」「戸惑い」「怒り」で構成されている。
その時、キュウがシイにゆっくり近づいた。
シイが後退りする。
シイは、聖職者が着用する丈の長い衣装に…完全に慣れていなかったのだろう。
キュウが近づいてきた事に「明らかに戸惑ったシイ」は、後退りしながら…自分で自分の裾を踏んでしまう。
当然、シイは軽くよろけた。
シイが床に膝を着く前に、キュウがシイを軽く抱き止める。
そのふたりを目にして、私は軽いデジャヴを感じた。
私は記憶の中から、デジャヴの正体を探した。
私の記憶が答えたデジャヴの正体は、「舞踏会のシイと美女」だった。
美女にキスされ、驚いたシイが後退りした。
シイに後退りされ、バランスを崩して倒れ込む美女。
王子様のシイが、美女を抱き止める。
「聖職者の衣を纏った」シイは、「舞踏会の王子様」のシイの時と比べて、完全に立ち位置が逆転している。
それを認識した瞬間、私の中で何かが塗り替えられた。
『ああ、王子様は…美女になってしまった』のだと。
あの時、私は自分は女だが、美女に好きだと迫られれば…同性とはいえ、テンション爆上がりだと言った。
だが、この時思った。
美女が躓いた時、迷いも無く抱き留めてやれるか?
答えは「NO」だ。
私がここまで自分の思いを巡らせている間、ふたりはじっと見つめ合っていた。
抱き留められたシイは、驚きの表情でキュウを見つめている。
「シイのオーラ、シイ本人の表情も」互いに一ミリの乖離も無く、「驚き」を浮かべている。
が、次の瞬間、そのオーラに変化が発現する。
シイに、ピンクのオーラが出現した。
そして…ピンク色が次第に濃くなる。
その変わりゆく速さは、上昇気流が「竜巻」に変化する様に似ていた。
シイの様子に、影響を受けているのだろうか?
キュウが吸い寄せられる様に、シイに顔を寄せた。
それから、キュウはゆっくりと…シイの唇に自分の唇を重ねた。
その出来事の影響だろう。
更なるオーラの変化がシイに現れた。
シイがこのような短時間で、オーラに沢山の多く変化を見せた事は初だ。
私はその事実に驚き、自分の体を固まらせたまま…シイのオーラを凝視した。
その時だ。
シイの「濃くなる赤色のオーラ」の色の中に、金色が薄らと発現した。
私は再度驚き…シイの「金色オーラ」を見つめる。
「金色オーラ」は、薄らとした光にも見えた。
それは唇を重ねたキュウをも、包み込む形で広がる。
キュウが自分の両手で、シイの頬を包みこんだ。
それからキュウは、自分の顔を少し傾け…より深くシイと繋がろうかとする様に、自分の唇を深く重ねる。
シイが、それを受け入れるかの様に、薄っすらと目を瞑る。
それは私が初めて見た…シイの表情だ。
少なくとも私とキスをした時には、シイが見せてくれなかった表情だ。
シイのその「何とも形容し難い表情」
私はその表情に、吸い込まれる様に魅入っていた。
何処かで見覚えのある表情だ。
初めて見ると言ったくせに、見覚えがある…この矛盾。
見覚え。
そうだ、それは…何かの絵画で見た。
私も脳が、その記憶を探り当てた後、それを全面に押し出してくる。
その正体は、ある有名画家の絵画だった。
そちらの「異世界」で有名な画家「クリムト」の「抱擁」だ。
恋人からキスを受け、うっとりとした表情を浮かべる女性。
彼女の表情は、「うっとり」の一言では説明できない…「恍惚」としたモノが浮かんでいた。
そして、私はその絵画を「何と美しくも、羨ましい」と思ったのだ。
なんとも、妙な感覚ではないか。
元恋人が、別の恋人とキスする姿を…「羨ましいと感じた絵画の女性と同じだ」と認識するなんて。
キュウが、シイの頬を包んでいた手を撫でる様に動かす。
シイはその手に…頬を擦り寄せている。
それからシイは、自分の手を伸ばし…キュウの首元に回す。
シイは、ゆっくりとキュウの首に抱きついた。
そして、私の心臓が…口から飛び出そうな程、「ドキリ」としたセリフを…シイは言った。
「…私は…本当に…ロクが好きなんだ…本当な…」
シイは最後迄、セリフを言えなかった。
キュウが、シイの呟きを自分の唇で塞いだのだ。
キュウが邪魔くさそうに、シイの被り物の聖職者の頭巾に手を掛けた。
と、その時だ。
『ガチャーン!』
派手に「何と何か」がぶつかる音が響いた。
「何と何か」の正体は、「キュウとコート掛け」だった。
「キュウとコート掛け」だけを見ていたら、『ガチャーン!』というクラッシュ音が発生した原因は分からなかっただろう。
私は直ぐ様、シイに視線を遣った。
シイの着用する衣の長裾から、シイの足が伸びていた。
その形を見て、私は直ぐに理解した。
『シイが、キュウを蹴飛ばした』のだと。
その事実を認識し、私は驚き固まってしまった。
キュウも、私同様に固まっていた。
だが、誰よりもこの「事実」に驚いていたのは「シイ自身」だった。
シイは自分の大きな目を、皿の様に大きく開き「事実」を凝視して…固まっていた。
その時だ。
再び、ヘリコプターの轟音と共に…ダウンウォッシュの風が部屋に入り込んだ。
それらが、合図と言わんばかりに「私達三人」は、金縛が解けた様に体を動かした。
シイが、よろりと立ち上がる。
それから、シイは恐る恐る…キュウに近づき、尻餅をつく様に座り込む彼を抱き起こした。
『キュウを抱き起こすシイの姿』を私は認識し、再び私の中でデジャヴが顔を覗かせる。
私のデジャヴがちょろっと囁く。
『王子様のシイは、まだ健在だと』
「…すまない、キュウ。………許してくれ。」
言葉少なめに、謝罪と許しを乞う『王子様のシイ』を…キュウは無表情で凝視していた。
それからキュウは、自分を抱き起そうとするシイの手を振り払い…逆にその手を掴んだ。
再度、驚きの表情を浮かべるシイを、キュウが抱き寄せた。
それから、キュウはシイを己の胸に抱き留めた状態もまま、乱暴に引き摺る様にして…引き戸のある部屋から共に出た。
シイは、驚きの表情を浮かべ、キュウに引き摺られるがまま…自分の足をもつれさせながら、ついていく。
いや、連れて行かれてるという表現が正確だろう。
そしてキュウは、ヘリコプターが「ホバリング」するバルコニーに…シイを引き摺って行く。
ああ、何という事だろう。
美女は、王子様に戻る事はできなかった…私のデジャヴが、「OMG」と嘆きながら…影を潜めた時だ。
シイを抱き留めて、引き摺るキュウ。
キュウに引き摺られながら、部屋を出るシイ。
このふたりと、私はガッツリ鉢合わせした。
当たり前である…。
ふたり共、驚いた顔を見せた。
先に口を開いたのは、キュウだった。
「あんたも、一緒に来るんだ…ママ。」
キュウは私に向かってそう言い放つと、シイを拘束する手を片方だけ解いた。
それから、足の不自由な私を…ヘリコプターに乗る手助けをするかの様に、私に手を差し伸べた。
********
二年以上、前の事だ。
「ロク…すまない。君とは、結婚出来ない。」
ある日の事だ。
何の前触れも無く、シイから私は告げられた。
その言葉を耳にして、ドライで冷たい「何か」が…私の心の中に流れる。
心中に流れた感情の名を見つけられないまま、私はシイに尋ねた。
「私に悪い所があるなら言って、直すわ。」
「違う、そうじゃない。」
「最初から、私の事は遊びだった?…私の田舎の『はとこ』みたいに?」
「そんな事はない。「純粋な好き」が結婚への発動条件なら、君以外居ない。」
「他に『気になる人』が出来たの?」
「違う。君より『気になる人は居ない』君が一番大事だよ。」
私の質問を重ねる度に、シイの答えが「情」に深いものになって行く。
シイの「情」に溢れた言葉で紡ぐ回答は、私の心を抉った。
シイが「情」に溢れた言葉を紡ぐ度、それに比例するかの様に私の「堪らない気持ち」が私の心を一杯にする。
シイの回答には「嘘偽り」が全く無かったのだ。
間違い無く、シイは私が一番好きだ。
この時ほど、私は自分のオーラが見える能力を…呪わしく思った事はない。
いいや、この時だけに限った事ではない。
最近では、「見たくもない」モノを見るのだ。
シイの中に発現し始めた、ピンク色のオーラ。
偶にピンクから、赤よりのピンクに変わっていく様子。
これらは、私に対して発現されたオーラじゃない。
私が、シイの顔にキスをした時の「カケアミ」状の白黒オーラ。
これは「戸惑い」と「違和感」を表していた。
どれも、最近から出始めたオーラだ。
冷たくドライな何かが、私の心の中で何かを崩していく感覚に襲われた。
心の状態を表すかの様に、冷たい声色が私の口から発せられた。
「二度、恋愛に失敗してきたわ。」
シイが少し目を見開いて私を見た。
「二度とも、「愛」を知らないクズ男達だった。」
言葉にしてみると余りの「情けなさ」に、我ながら涙が出て来る。
思いの外、過去を乗り越られてない事を…自覚したまま、私は言葉を続けた。
「二度とも、自分を責めたわ。私が「子供」過ぎて…人を見る目が無かったのだと。」
シイが私に接する時の…様々なシーンが脳内再生される。
仕事で自分に余裕が無い時でも、何処かで私を…気していた。
それは「戸惑い」と「違和感」を意味する「アミカケ」のオーラを発現させていた時…でさえもだ。
今では嫌と言う程、分かっている。
それは、私へのベースに「愛」があるからだ。
だからこそ、私を気にかけてくれる。
「だから、クズ男達の「「サヨナラ」を受け入れたわ。浅はかな自分への罰と思って」
「ロク…」
間違いなく、シイは愛情深い人だ。
今度こそ、本物を見つけてたと思った。
「今度も、私は罰を受けなきゃならないの!?」
「ロクっ…!」
「触らないでっ!」
私へ伸ばしたシイの手が、ビクッとなった。
私は…ポロポロ涙を流した。
シイは嗚咽を漏らす私に、ハンカチを差し出したり、水を差し出したりと、やはり「気にかけて」くれる。
何よりも、シイのオーラや表情が物語っている。
『心配だ。』
『申し訳ない』
私の嗚咽が落ち着いた辺りで…シイが言葉を紡いだ。
「『君が一番好きだ』その言葉に嘘はない。」
シイは先程「続きだ」と…言わんばかりに語り出した。
「都合の良い事ばかり、と言われればそれまでだ…結婚は、出来ないけど…」
シイが一度、言葉を切った。
シイのオーラに緊張の色と模様が発現した。
それは「氷の女王」を飾る「霜の結晶が勢いよく伸びる枝」の如く、シイから伸びる。
「君とは、繋がっていたい。」
笑い声が…部屋の中にこだまする。
おそろしくネガティブ且つ、攻撃的な感情を含む笑い声だ。
私の中で、過去にシイの言った言葉が顔を覗かせる。
交渉事の主導権の話しだ。
「主導権を握られる」イコール「生殺与奪の権を渡す」」なのだと。
自分に都合の良い要求を口にするシイに、厚かましさを感じた。
私は、今迄仕事上で…「シイの交渉事」は沢山目にしてきた。
中には、強い反感を示す相手も当然、居た。
今の私は正に、その立場なのだ。
私は、シイを見つめる。
シイが黙り込み、俯いた。
その顔とオーラは怒られ、モジモジする子供そのものだった。
そこにきて私は、笑い声を発しているのが…自分だと気付いた。
それに気付いてからは、更に可笑しくなった。
無性に可笑しくて可笑しくて、仕方なかった。
私は腹が捩れる程笑い、笑いが収まる頃には…シイは私から見て顔が見えない程、頭を垂れて俯いていた。
「今まで通り、「あなたのママ」をやれ、と?」
笑い声の余韻を引きずった、上擦った声で私はシイに尋ねた。
シイがゆっくり顔を上げる。
「ロクっ……………!」
「これ以上っ…!私に何を望むの⁉︎」
私の言葉に…表情を強張らせたシイが、ぎこちなく口を開いた。
だが、シイが言葉を発する前に…私が言葉を発した。
「それが了解できるならっ…ふたり目の夫と別れてなんか、いないっ…」
シイが再度、頭を垂れる様に俯いた。
その様子は、判決を待つ被告人を彷彿させた。
「あなたとの間に「鎹の子」が居ない私に何を…望むの!?」
またもや、シイとの過去のやり取りが脳内再生された。
そう遠くもない過去だ。
私がシイの唇に触れ、ハグをする。
その度にシイは、癒されオーラを放った。
そのシイのオーラが「アミカケオーラ」に変化したのは、最近の事だ。
変化をもたらしたのは「悪夢」の存在だ。
「悪夢」は、シイに影響を与えただけじゃない。
私にも影響を与えたのだ。
私は、シイに手を伸ばした。
両手でシイの頬を包む。
シイが顔を上げて、私見つめた。
強張った表情とオーラには「覚悟」があった。
「どんな裁きでも受け入れる」
そう物語っていた。
『生殺与奪の権を…』
そう話していたシイが再度、脳内再生される。
今のシイは全く真逆だ。
『生殺与奪の権を…』私に、握らせているじゃないか。
私は世界中の誰よりも今、この人を地獄に落とす力を持っている。
そう認識した瞬間、私の中の「攻撃的なモノ」がポトリと落ちた。
「シイ…あなた…あなた………苦労するわ…この先…とても」
シイは無言で、私の両手に手を添えて目を瞑った。
*****
「何で、ロクさん来なかったのお!?」
ニイが明るい調子で、私に尋ねてきた。
シイと私が、「恋人関係終了」後、暫く経過後の話だ。
「私が仕事を引退したら、ニイの地元へ…ワンシーズン滞在する話になっている。ロクも一緒に行こう。子連れも歓迎だと彼は言っている」
私を長めのヴァカンスに誘う「懐かしいシイ」が、私の脳内で再生される。
「別れた、だの…くっついたのってのはよお…俺の地元じゃあ平常運転だぜ。だから、シイのヤツの事は気にしねえで…遊びに来てくれよ!」
私に気を遣う様に、ニイが私をヴァカンスに誘ってくれた。
実際、今の彼は…私に物凄く気を遣っている。
彼のオーラにも、それが「あちあり」と出ている。
ニイは普段から、ぶっきらぼうな「べらんめえ」調の話し方をする。
そのせいで誤解されがちだが…ニイは、シイと比較にならないレベルの「気にし屋」である為、物事をあれこれと考え、それに起因する不安を抱え込む「根暗」だ。
むしろ、シイの方が自分の中で、自然発生した「不安」や「クレーム」は一ミリの遠慮もせずに、それらをアウトプットする。アウトプット後、それ等はある程度忘却の彼方となるようで、その一分後には、他の事で「はははっ」笑っている様な「根明」タイプだ。
シイは、「それはそれ、これはこれ」とでも言う様に、私が同行しないヴァカンスをニイの地元で過ごしているらしい。
これが、ニイと逆の立場ならば…ニイはひとり部屋に引き篭もり、ウジウジと「別れ」を引きずっていたのだろう。
とはいえ…ニイは、例の「ナンパ」文化が根付いた地域性で育った人間だ。
ある程度の「失恋減価償却期間」が終了すると、回復期に突入し、そこからの浮上は光速レベルだ。そしてニイは再度「ナンパ文化」を前面に出して、次の恋に邁進するのだ。
「相談事があって私の所来たんでしょ?」
私の指摘にニイは、分かりやすくも「ギクリ」とした表情を見せた。
「オーラの色、ピンク1:赤:4ネイビー:5…赤がネイビーと絡み合い、一部が溶けている…色恋絡みの心配事?シイの話題が出たって事は、シイが絡んでる?」
ニイが、冷や汗を掻いて項垂れた。
「怖え…ロクさん、お、お見通しぢゃっ…ねえか…。」
「そうよ。あなたが偶にシイに対して『友達』以上の感情を抱いていた事は、知っているわ…私が気になるのは「元カノ」である私に「元彼」と表現していいのかな…「元彼シイ」の事を相談する…あなたの心境、ね。」
ニイが遣り辛そうに…目の前で組んだ自分の手で、自分のを隠す。
「あなた程の『恋愛大先生』が『専門分野』で他人のアドバイスが求めるなんて…しかも相談相手に選んだのが、「恋愛経験があなたよりも少ない私?」あり得ないでしょ?自分では色々と背負いきれないから、シイママに泣きついてきた?…みたいな感じ?どんな事でシイは…あなたを困らせているの?具体的に言って。」
「…お見通し過ぎて怖え…ちょっ、ちょっと待って。」
ニイは数分間黙っていたが、やがて意を決したかの様に話始めた。
その話の内容は、私も予想だにしない「斜め上の展開」だったのだ。
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