人恐の俺が異世界に飛ばされた訳だが

めると

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1話 異世界への旅立ち

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『ここは...何処なんだぁぁあ!!』





それは夏の日の昼だった



「あぁ~...溶ける溶ける」


暑い部屋で1人PCをする少年、【三日月悠人みかづきゆうと】は確かにこの世界にいた


クーラーは生憎故障中。
母は仕事で 大人しい方の妹は学校、うるさい方の妹は先日 右足の骨を折って入院している
つまり、今は1人だ。


「ったく、こんなに暑いとか何なんだよ...地球温暖化が問題なのかね」


窓を開けるとそこにはいつもと変わらない風景がある


「...うそ...だろ?」


外には俺と同じくらいの歳の男子高校生が3人組で歩いている


「人間がいる人間がいる人間がいる....」


バタンッ!!!!


窓とカーテンを閉めたのは悠人が《人間恐怖症》だからであろうか

何にせよ、この身体の震えが止まるのに1時間はかかった


カタカタカタ...俺がパソコンを使っていると、


「ただいまぁー...」

と大人しい方の妹が帰って来た。当然 部屋にいるから返事はしない。

人間恐怖症って言っても、家族や仲の良い人は反応しないらしい。精神科の先生は

「これは心の病気だ。本人が変わらなければ治らない」


などとふざけた事を言いやがる


「人が簡単に変われるかっつーの。第1俺がこうなったのは全部あいつのせいなんだからな...」


と呟いていると、トントン...ガチャ..


「おにーちゃん」


「どーした?〈ゆい〉はお兄ちゃんの『おかえり』が無かったから怒ってるのかな?」


「違うよ...。今日お母さん帰れないからご飯作ってって...」


「そっか、んで。ゆいは何が食べたいのさ?」


「...バーグ」


「え?サイボーグ?天才なゆーとお兄ちゃんでもサイボーグは作れないぞ?」


「ハンバーグっ!!」


「あー、そっちね。はいはい、作るから材料は任せたぞ妹よ!!」


「...人間恐怖症なお兄ちゃんは買い物出来ないもんね。ゆいも お料理は苦手だから それくらいはしなきゃ」


「材料はこの紙に書いておいたぞ、ほらっ」


ゆいに紙を渡す


「...お兄ちゃん。」


「ん?」

「...何ですぐに材料が書いてある紙をゆいに渡せたの?お兄ちゃん今何もしてなかったよね...?」


「そりゃ、母さんから連絡があったからだろ?ゆいに連絡が来て、家で引きこもってる俺が連絡を貰わない訳ないし。
それに、ゆいは昔からハンバーグが好きだからなぁ。
最後にハンバーグを食べたのは1ヶ月前、大体のことは見当がついたよ」


「...馬鹿おにぃ。...それと。偶には〈みゆ〉(うるさい方の妹)の事、心配してあげてね...?人間恐怖症で外に出れないって言っても、メールくらいは出来るんだから」


「わかったよ、ほら。行った行ったっ!お金はリビングのソファーの間にあるからな!」


「...相変わらずそーゆーところは賢いのに」







「んじゃ、頂きまーす」「頂きます..」


今夜はハンバーグにご飯、それと味噌汁という普通なメニューだった


「んん、中々上出来だな。これは将来良いニートになれるな!」


「良いニートって...」


「誰にも迷惑をかけない完璧な引きこもりさっ」


「そもそもニート自体迷惑をかけてるんじゃ...」


「ささ、TVでもつけるか...ブフッ...!!キャァァァア!!人間だぁぁぁあ!!!」


どうやらそれはグルメ番組らしく、俳優さんの顔がドアップで映し出されていた

人間恐怖症とはこれまた厄介で、画面越しであればある程度は反応しないが、意識していない状態で見てしまうと反応するらしい。生身の人間は意識していても反応するみたいだが。。

「ゆいちゃん  ゆいさん  ゆい様っ!!消して下さいっ、お願いいたします!!」


悠人はそれはそれは美しい土下座を妹にした

「はぁ、、お兄ちゃんがつけたんでしょ...はい、消したよ?全くもぉ...」


「だっていきなり人間の顔があったら叫ぶでしょ!?はぁ。最近のTVはこれだからダメなんだよ...」


「...何それ。変なの」


「んじゃ、ご馳走様。俺は部屋に居るから食べ終わった食器は洗ってくれるがいい!それと風呂はもう沸かしたから入っても良いぞ!一番風呂は譲るさ!ゆいたんっ」


「お兄ちゃんのキャラ安定してないなぁ...まぁ把握したよ」


悠人が二階の俺の部屋に向かおうとすると

「あ、お兄ちゃん」


「どうしたゆいさん?」


「...God Bastardsゴット バスターズってゲーム知ってる?」


「んあ?聞いた事ないな」


「今学校で流行ってるんだけど、あんまり良い噂は聞かないんだよね。PCのデータが盗まれたりするって。だから気を付けてね?」


「ああ、覚えとくよ~!」


ダッダッダ...階段を駆け上がる


「お兄ちゃんのあの顔、絶対何か企んでるよね...」


「さてとさてと~!」


PCの電源を入れる。


「God Bastardsだっけ?ええーっと...、、。あ、これか?」


レビューは書かれてない、そんなことを確認しながらダウンロード画面を開く


「配信日は...って3日前!?へぇー、通りで知らないゲームなわけか

《~夢と希望の世界、バイリール・ワールドへようこそ~》か。

こ、れ、はーー。うん  ファンタジー系のバトルゲームかな。まっ、ダウンロード...って高っ!!!」


《15,000円》と言う金額に悠人は驚いた


「いやいや、こんなのを中学生のゆいの友達が買ったって?...もっかい探してみるか」










~~30分後~~


「これしかねぇしっ!!あーくそ。もう良いよっ!買えば良いんだろ!」


ダウンロードが始まったみたいだった


「これでウイルスが送り込まれたりしたらマジで会社潰すぞ...?勿論人間に合わないように 色々計画を立ててだな...」


そうこう言ってるうちにダウンロードが終わったみたいだ


「さてと、んじゃやるか」


『ピロォォーンッ。
ようこそ、夢と希望の世界、バイリール・ワールドへ。ここに来るための入場料15,000円は全てシステム向上の為に使われています』


「へぇ、そんな設定なんだなぁ。けど15,000円分の楽しみがないと会社潰すぞ...?(2度目)」


『今、貴方は「15,000円分の楽しみがあるのか?」と思いましたね?
それはこのゲームのゲームマスターである、【向田 雅人むかえだ まさと】様が保証しています!さぁさぁ!冒険が始まりますよ...?
早く貴方のお名前をお教え下さい。
...それでは貴方のご武運をお祈りしています』


「【三日月 悠人】っと。ってこいつ何で俺の思考を...?まぁいいや」


悠人はあくびをし、


「んじゃ、ゲームをさせて貰うぜ」


そう一言呟いて その夜は終わった。










~次の日の朝~


トントン、ガチャッ


「...お兄ちゃん、朝ごはん作っといたよ。今から学校にいって来るから...」


「うわあぁぁぁ!!なんじゃこれ!!凄い、凄過ぎて気持ち悪いぐらいだぜっ!!

まずは画質。これは本当に凄い!今までして来たどのゲームよりも高画質でリアリティがありまくりだ。

そして敵として出てくる《God(ゴッド)》は何と言ってもかっこいい!つか普通のモンスターも出て来るし!

そうそう、かっこいいと言えばこの容姿だよな!!好きに変換できて約80億のパターンがあるそうだ。

それに装備も中々いい!武器は剣だけで短剣、双剣、大剣、太刀、片手剣などと多くの種類がある。それに弓や銃、ハンマーから爪楊枝まで全てが武器として使えるぅ!!!

つか そもそもアクションが良いんだっ!!一度として同じ動きはしない。

似たような動きは再現できるが操作は難しい。んだがそれにより 返り血も全て違う形で飛んで来るんだよなぁ。

とにかく、本当に凄いゲームだ。15,000円の価値なんて優に越してやがる...」



「...おにぃ。何やってたの?」


「おお!妹よ!God Bastardsってゲーム知ってるか?これはやばい、した方がいいぜ。

しなきゃ人生の半分は損してることになるからよ!!」


「...」


「ん?ゆいどうした?」


「どうした?じゃないっ!!ってかそれ教えたのゆいだよ!?    
...全く...。それで、PCのデータは盗まれたりしたの?」


「いや、全く!!こんな神ゲーは生まれて初めてやったぜ!
後からするタイプの課金機能ないから 無課金でも プレイヤースキル と プレイ時間 で追いつくことが可能なのさ!!

しかもだよ?これPCでダウンロードしたらスマホでもログイン出来るようになるみたいだぜ?だからいつでも何処でも出来るってわけ!!
まぁ俺は外に出ないから意味無いけど!!」


「ふーーんっ、まぁゲームばっかしてないでゆみにメールをしてよね?
どうせそのゲームに夢中でしてないんでしょ?病院でも1人は寂しいだろうから...」


「わかってるよ、ってかゆい。時間大丈夫か?」


「!?  あわあわ...んじゃ、行ってきますっ」


「おう、気を付けろよ~」


バタンと音を立てドアが閉まる


「...鍵閉め忘れたなアイツ...」


ガチャ。


「さてと、ゆい特製朝ごはんを食べてゲームにリトライするか!
...おぉ、昨日のハンバーグを潰してご飯と炒めたやつだな。うん、中々美味いな。あいつも将来 良いニートになれるなぁ~。
あ、ゆみにメールしとくか...



《ゆみへ  元気か?って言っても足折れてたっけ?笑     んで、こっちは皆元気だ。母さんは忙しいみたいだけどな。あと2日で退院だっけ?早く帰ってこいよっ    完璧で美しい、人間恐怖症な兄より》



これで良いかな?送信っと!!」


朝ごはんを食べ終わったのですぐさま部屋に戻る


「さてとさてと♪夢と希望の世界、バイリール・ワールドに行くぜ!いぇい♪」


徹夜のせいか、テンションがおかしな事になっている。クマができた目を擦りながら俺はゲームに飛び込んだ。
だがそこで意識はぷつりと消えたのだった。


「...ん、あぁ、寝てたのか俺。ん?何か様子がおかしいな...何で俺外にいるんだ...?
あ、夢か。おーけー、意識がある夢で一度してみたかった事があるんだよね~。うらァ...ッ!!」


そう言うと 悠人は自分の顔を思いっきり殴った


「...!?グフッ...!!ドン...!!    ...はぁあ!?痛ぇぇよぉぉぉっ!!」


口から血が出ていた。どうやら唇を切ったらしい


「え?は?どーゆーことだ?つか...





『ここは...何処なんだぁぁあ!!』




え?は?いや待て待て、冷静になれ。
俺は確かGod  Bastardsをしようとして...?
ん?この世界、バイリール・ワールドに似てね?」


悠人は周りを見渡した


「あ、なるほどなるほど...これは...《God Bastardsの世界に飛ばされた》訳だな!!」


悠人は飲み込みが早かった。
それは日頃から異世界ファンタジー系の本を読んでいたとか、ニートでアニメを見過ぎたとか 様々な理由があったが、一番は

《そうなってほしいと心の何処かで思っていたからだ》


「取り敢えず、〈ログアウト〉できるかだな...ログアウトッ!!」


...反応が無い


「ふむ、やはりログアウトは出来ないか。んじゃあ今持ってる〈アイテム〉は...」


ピロンッ


「うぉっ、何か出てきたぞ...えっと...〈アイテム〉か?...俺が徹夜でゲットした〈アイテム〉が消えてるだと...!?
クソォォォ(|||ノ`□´)ノオオオォォォー!!」


悠人は体育座りになって顔をうつ伏せた









~30分後~


「むふぅ...もー やだよ。助けてよぉ!〈ヘルプ〉だよぉぉ」


ピロンッ


「え?〈ヘルプ〉?なになに。」


『この世界はGod Bastardのバイリール・ワールドの世界です。
プレイヤーは全て初期状態としてリセットされます。無論、アイテムや装備品などもです。
ですがPCやスマートフォンで磨かれた《技術(スキル)》はそのまま残っています。それを頼りに頑張ってくださいね♡
これはゲームマスターからのプレゼントです。有効活用して下さい』


ピロリンッ


「〈プレゼント〉?   何だこれ、〈受け取る〉っと......は?」


そこには《5000G》と書かれていた


「いやいやいや、少な過ぎ!!
ナニコレ、フザケテルノ?
5000Gって日本で言う5000円と変わらないぐらいだぜ?これで生活できるかっ!!」


辺りを見渡した。相変わらずの平地が続いている。悠人は大きなため息をついて、

「...取り敢えずは人と会わないと話しは進まないのが普通なんだが...俺が人間恐怖症なのゲームマスターは知ってるよな? 
その辺もしっかり考えてるよな...?

んまぁ、ずっとこんな平地にいるのは暇だし歩くだけ歩いてみるか」


悠人は歩き出した。初期装備のパンツ一枚で。その姿はまるで産まれたての子鹿のようだった


「いやぁ...パンイチの俺が1人でいるとか、絶対モンスターに襲われるよな...」


その時、奥の草陰から音がした


「おいおい、フラグ回収早過ぎねぇか?とりあえず...」


悠人は近くに落ちてた〈木の棒〉を装備した。触った物のステータスは自動で表示されるらしい


「〈攻撃力2〉...イケる!!さぁこいよモンスター共!!」


そこに現れたのは一匹の小さなスライムだった。


「何だよ、スライムか。んま、初戦だしレベル上げも兼ねてこいつでいいか。
うっしゃ!やってやるぜ!」










~2時間後~



「はぁ...はぁ...こいつ何なんだよ...物理攻撃が全く効かねぇし。
つか〈木の棒〉脆すぎ!3回使ったら折れたぞこれ
もーやだよ、このスライムもこいつで攻撃してこねぇし。攻撃してこいよ!罪悪感が残るだろうがっ!!」


悠人はスタミナが切れかけていた


「はぁ...はぁ...なぁスライム。お前俺の仲間になるか?」


スライムは何も反応しない


「やっぱモンスターは言葉を理解できないよな。もーいいよ!俺は寝るぞ!」


するとスライムは突然 草陰に消えていった

「んー?家にでも帰るのかー?」


悠人は目を瞑ったまま声を出した


ドスンッ...ドスンッ...


「おいおい、スライムのくせに大きな音を出すなよなー」


悠人は目を瞑ったままだ


ドスンッ...ドスンッ...


「静かにしろよ。俺は眠いんだ」


悠人はまだ目を瞑ったままだ


ドスンッ..!!ドスンッ...ッ!!


「うるせぇぇぜ!!」


目を開けるとそこには



【一匹の巨大な怪物がいた】










「、、、」


悠人は口を開けたまま、ただ呆然と立ち尽くしていた
怪物は悠人を見てダラダラとヨダレを流している。体調は5メートルほどで体重は恐らく2トンほどあるだろうかー


「ぶ、武器は...木の枝は何処だぁぁあ!!」


近くを見渡すが武器になりそうなものはない


《グルルルルッ...》


怪物は喉の奥から低い音を出した

それは威嚇だろうが、悠人は挨拶と思うことにした


「あ、えーっと。。こんにちは?」


ぺこりっ


ズバンッ...!!


悠人の頭から少しの髪の毛が旅立つ


「危ねぇ...俺がお辞儀してなかったら今頃...っか良くも俺の髪を...」


《ガグル...》         ドスンッ!!


「やばいやばいやばい..!!」


再び怪物の右腕が 悠人を潰そうとしていた。とっさに左へ避けた おかげで 何とか助かったようだ


「うぉ!?危ねぇ...てか身体が軽く感じるな!さっきの戦闘の経験のせいか?取り敢えず...」


悠人は考えた。考えたのだ。どうすればこの怪物は自分を襲わないのか

どうすればこいつの注意を引けるのかを


そして出た答えは一つだった



「これが欲しいんだろっ!」


もはや見事としか言えないぐらいの行動だった。
初期装備のパンツを脱ぎ出したのだ



「ほーらっ、受け取れよ!!」


悠人は投げた。大切な、大切な初期装備である〈パンツ〉を

だが怪物(ばけもの)はこちらに突っ込んでくる
悠人は全裸で走り出した


ドシン...!!ドシン...ッ!!


「おいおいおいおいっ!俺の〈腰尻守り〉(パンツ)を無視すんじゃねぇ!!」


30メートルほど逃げた所で悠人はスタミナの限界を感じた
もちろん先ほどのスライムとの激戦?も大きく影響されてはいるが、一番は良いニートを目指して 規則悪い生活を行なっていたからだ


「ぜぇ...ぜぇ...無理だろこれ...」


悠人は倒れた。そして目を瞑った
もう諦めていたのだ


「あぁ、母さん。可愛い双子の妹よ。俺の分まで元気に暮らせよ...」


怪物が大きく口を開け悠人に近づいてくる
その口からは生暖かくて嫌な匂いが出ていた


《ガルル..!!グワァ..ッ!!》


怪物の牙が悠人に触れようとしたその時だった










ーーースピュン...ッ!!


突如 風を切るような音が平地にとどめいた
悠人は何か、自分の体が液体で濡れる感触を感じた。その液体は暖かかった


「...あれ、まだ生きてるのか?」


全裸の悠人が目を開けるとそこには



〈可愛らしい猫耳と尻尾生やした少女と、切り刻まれた肉の塊が落ちていた〉
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