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第1章
許さないよ、父母
しおりを挟む「誠に残念ですが、ユリファス様は属性を授かれませんでした。無能です」
シーンと静まり返る教会。そこに神父の言葉が響く。『無能』と。
母ルーシアは下を向いている。何を思ってるのか分からないがいい雰囲気では無いのは確かだった。
重い空気が漂う中で真っ先に声をあげたのは父、ベルモスだった。
「ま、まってくれ!冗談だろ...?俺とルーシアは神童でその子供が無能なわけないだろっ」
ベルモスの額から汗が流れる。無理もない、跡取りである息子が無能だと言われたのだから。
「いいえ、これは確かです。ユリファス様からは何の属性も感じられません」
無言になる父ベルモスだったが、暫くして神父が嘘をついてないと感じると低い声を出した。
「ユリファス...来い」
「えっ...」
「来いと言っている!!それと神父、この中に金が入っている。この事は他言無用だ」
ベルモスは紙袋を神父に投げつける。
そしてユリファスの手を乱暴に引っ張ると先ほどまで乗っていた馬車に乗り込む。その後を黙ってルーシアも付いていく。
そして1時間ほどの静寂が続いた後、馬車が止まった。
「降りろ」
「はい...」
今までの楽しかった時間が嘘だと思うほど低く怖い声を出すベルモス。
ユリファスが降ろされたのは薄暗い森だった。自分を嘲笑うような鳥の声が聞こえてくる。
「いいか、お前は無能のゴミクズだ。今後アイリスト家を名乗ることを禁じる。さっさと消えろ」
父ベルモスから言われた言葉は衝撃そのものだった。
「嘘ですよね...お母さまっ!!」
「黙りなさい汚らわしい。ベルモス、早くこのゴミを殺してくださる?」
「えっ...」
ユリファスはじっと2人を見つめる。だが涙で曇りよく見えない。
「もうすぐ夜だ。ここは夜になると魔族の活動が活発な森、ほっといても死ぬだろ。こんなゴミに俺の魔法は勿体ないからな。つーか俺の魔法が汚れてしまう。まぁ歩けないように足は潰しておくか」
そう言うとベルモスは右手をユリファスの足に向け唱える。
「炎よ、燃やせ」
手からでる真っ赤な炎にユリファスの足が包まれる。
「うぐっ...!!いだい”よ”ぉ”...ッ!! やめ”で...」
ドロッと皮膚が溶け、一部黒く焦げている足を抱え倒れるユリファス。肉の焦げる臭い匂いが辺りを漂う。
「...早く屋敷に戻って新しい子を作りましょ」
「あぁ」
ベルモスとルーシアは馬車に戻ると何事も無かったかの様に屋敷へと戻って行くのだった。
憎い憎い憎い憎い憎い憎い。
痛いいだいいだいいだいいだいいだいいだい。なんでなんで、なんで。
「........殺してやる...絶対に”な”ァ”..!!!!」
森の中に大きな、復讐の声が響き渡る。
その声は悲しく、憎く、そして怒りであった。
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