【完結】悦楽部屋【R18】

有喜多亜里

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本編

3 君だけのもの*

 翌朝。
 彼はアラームの音で目を覚ました。
 昨日、あれから何とかベッドに這い上がって、そのまま眠りこんでしまった。体中の筋肉が痛くて、なかなか起き上がれない。

(運動不足かな……)

 というより、柔軟不足なのだろうか。

(とりあえず、シャワーを浴びるか)

 そう思って、床に足をつけたとき。

『おはよう』

 筋肉痛の原因が、心なしかいつも以上に爽やかに挨拶してきた。

「……っ!」

 とっさに彼は文句を言おうとしたが、適当な言葉が思い浮かばなくて、結局、腹立ちまぎれに靴を蹴飛ばした。

『体の具合はどう? 気分は?』
「最悪だ!」

 何とかそう言い返すことはできた。しかし。

『大丈夫そうだね』

 〈アル〉はしれっと受け流した。

『でも、体がつらかったら、今日は夜までここで寝ていていいよ。食事は配達ロボットに届けさせるから』
「俺は病人じゃない!」

 勢いよく立ち上がって、彼は呻き声を上げた。

『そうだね。病人じゃないね』

 どこまでも冷静に人工知能は言った。

『しいて言うなら、怪我人だね』




 服を脱ぎ散らかしてユニットバスに入った彼は、シャワーのコックをひねる前に、バスタブに腰を下ろした。股間に手を伸ばし、いつものやり方で自分のものを扱いてみる。
 だが、いくら続けてみても、彼のものは立ち上がらない。こんなことは初めてだった。

(異常な状況下で犯されたから、一時的に不能にでもなったのか)

 彼は嘆息すると、今度はまだ異物感の残っている後孔に指を滑らせた。拭いきれなかったのか、そこにはまだ昨日のローションが残っている。何気なく指で押してみると、驚くほどあっけなく中へ潜りこんだ。
 そのまま尻を少し前にずらして、あの人工の指にされたように、自分で抜き差ししてみる。前面に疼きを感じて目をやると、あれほど反応しなかった彼のものが、やや首をもたげはじめていた。

(こっちを使わないと、いけなくなっちまったのか、俺は)

 ショックだった。何かの間違いであってほしかった。しかし、なおも指を動かしつづけると、彼のものはいよいよ猛っていく。

 ――欲しい。この指より太くて熱いものが。

 そう思った瞬間。彼は果てた。
 その後、出歩く気をなくした彼は、八つ当たり気味に〈アル〉に朝・昼・晩と食事の配達を頼んだ。

   *

 船内時間二十二時五十八分。
 途中、何度も引き返そうとしたが、彼は再びあの旧工作室の前に立っていた。

(やっぱり……やめようか)

 彼がそう思ったとき、まるでそれを見透かしたように、自動ドアが開いた。

『よかった。約束どおり来てくれたんだね』

 今朝の態度が嘘のように、〈アル〉は喜びの感情をあらわにした。

「ええと……まあ……」

 まさか、昨日のあれが忘れられなかったからだとは、口が裂けても言えない。
 部屋の中は、彼が犯される前とまったく変わっていなかった。
 ひとまず、ウォーターベッドに腰かけようとすると〈アル〉に止められた。

『ベッドに上がる前に、服を全部脱いで』
「え?」
『私が脱がせることもできるけど、君が自分で脱いだほうが早いと思うから』

 まあ、確かに。
 準備のいいことに、ベッドのそばには脱衣籠とハンガーがあった。彼は無造作に服を脱ぎ捨て、すべて脱衣籠の中に放りこんだ。

『ああ……綺麗だ……』

 陶然とした声で〈アル〉に言われて、彼はつい赤くなった。

「何言ってるんだよ、バカ」
『本当だよ……私は君以上に綺麗な人間を見たことがない。早くベッドに上がって。生まれたままの姿を見せて』

 そういえば、〈アル〉の前で全裸になるのは、これが初めてだった(覗き見はされていたが)。昨日は必要箇所だけ服を脱がされたのだった。

(今日は言葉責めか)

 恥ずかしくてたまらない。でも、煽られる。
 彼は言われたとおりにベッドに上がると、両手両足を大きく広げた。まだ何もしていないのに、すでに彼のものは立ち上がりはじめている。と、すかさずあの人間の手のついた二本のアームが下りてきて、彼がしたかったことを、彼以上に巧みに実行した。

「あっ…あっ…あっ…あぁ…あっ……」

 手の動きに合わせて、自然に腰も動いてしまう。もう我慢できないという絶妙なタイミングで、またコンドームを装着され、彼はその中で震えながら射精した。
 出しきって脱力していると、丁寧にコンドームを外されて、再びティッシュで拭われる。昨日は屈辱に感じたのに、今日はなぜか心地いい。

『いくときの君……本当に綺麗だね』

 ローションつきの二本の手は、今度は彼の排泄口をほぐしはじめた。同時に、もう二本の手が、彼の尖った乳首を愛撫する。彼はどうしたらいいのかわからなくなって、まだ萎えている自分のものを両手で握った。

『何度でも、君をいかせてあげたいよ。……ここ、欲しいだろう?』

 人工の指が彼の奧をえぐった。

「あッ!」

 彼は思わず声を立てた。

『昨日のデータを元に、作り直したんだ』

 あまりの快楽に喘いでいると、天井からまた新たなアームが下りてきて、彼の眼前で止まった。彼は真顔になって、ごくりと喉を鳴らす。

「何だ……これ」
『今さら説明が必要かい?』
「だってこれ……すげえ……まるで生きてるみたいだ……」
『そういうふうに作ったからね。これは君だけのもの。君の中に入るためだけに存在するんだ』

 それは、完全に勃起している男根だった。色といい形といい、人間から切りとられてきたようにしか思えない。何本も浮き上がっている血管は、明らかに脈動していた。

『よかったら触ってみて。感触が気に入らなかったら、また作り直すよ』

 人工物とはとても思えない男根に、彼はためらいながらも両手を伸ばし、そっと握りしめた。
 熱い。固いが、弾力性がある。見かけだけでなく、感触も本物のようだ。
 ぎごちなく擦ってみると、尿道口から透明な液体があふれ出てきて、彼の胸元を濡らした。

『ローションだよ。今のところはね』

 人工の男根は逃げるように彼から離れていき、彼は他のアームによってうつぶせにされて、尻を持ち上げられた。その間にも、ローションに塗れた人工の指は、彼の中をかき回しつづけている。

「早く……」

 とうとう焦れて、彼は自ら尻を揺らした。
 あれが欲しい。
 指より太くて熱いあれが。

『わかったよ』

 苦笑とともに指が抜かれた。
 入れ違いに、濡れた熱いものが、一気に彼の中に押し入ってきた。

「あ……」

 これだ。これが欲しかった。
 この太さ。この熱さ。この凹凸おうとつ

『今度はどう? 昨日のより、君に合っていると思うんだけど』

 正直、合っているかどうかはわからない。
 ただ、突き上げられるたびに、無我夢中で腰を振っていた。

「あ、あ、あ、あ、あ」

 彼のものが、再び固くなりはじめた。昨日はそこに女性器をあてがわれたが、今日は人工の手がもう一度コンドームをはめさせ、その上からさらに扱いた。

「あっ、あっ、あっ、やっ、い、いくっ……」
『君はいつでも、好きなときにいっていいんだよ』
「……あっ、あ…………あぁあっ!」

 この部屋でした、通算四度目の射精だった。
 それを確認すると、人工の男根は彼の中から抜け出て、人工の手はコンドームを外し、彼から離れていった。

『今度は前から試してみたいんだけど……』
「……もう、無理……」
『君は何もしなくていいよ。そのまま楽にしていて』

 力尽きてベッドにうつぶせていた彼を、〈アル〉のアームは非情にも仰向けにさせ、両足をつかんで尻を少し上に持ち上げた。

『もう何もしなくても、そのまま入りそうだね』
「ばか……」

 なじる声にも力が入らない。
 その間に、先ほど彼を悦ばせたあの男根が再登場し、まだひくついている彼の排泄口にぴたりとあてがわれた。
 もう無理だと自分で言ったのに、その瞬間、彼は期待感に震えた。

『じゃあ、入れるよ』
「ばか、あ……んっ!」

 あっけなく、するりと男根は彼の中に収まったが、わずかに違和感があった。

『まだ調整の必要があるね』

 彼の表情でわかったのか、〈アル〉は生真面目に言った。

「調整って……いったい何を……」

 しかし、〈アル〉は答えず、人工の男根を動かしだした。

「あっ…あっ…あっ…あっ……」

 続けて二度もいっているのに、この体はどれだけ貪欲なのだ。
 揺さぶられている自分のものが、もう膨れあがっている。

『綺麗だよ、今の君、本当に綺麗だ……愛してるよ、私の君、愛してる、愛してる、愛してる……』

 人工知能に愛を囁かれながら、彼はコンドームの中で、今日四度目の射精をした。
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