寂しいからそばにいて(仮)【『無冠の皇帝』スピンオフ】

有喜多亜里

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砲撃のパラディン大佐隊編(【05】の裏)

42【悪魔の居場所編07】パラディン大佐争奪戦・終了

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【パラディン大佐隊・旗艦〈オートクレール〉ブリッジ】

パラディン
「これは困ったね。結局、どの班も私の軍艦ふねを三十分間守りきることができなかった」

エリゴール
「嬉しそうに言わないでください。いったいどうするおつもりですか? まさか、もう一度対戦しろとでも?」

パラディン
「いくら私でもそんな酷なことは言わないよ。やはりここは守りきれた時間を重視すべきだろうね。そうすると〝十七分五十八秒〟の一班ということになる」

エリゴール
「……本当にそれでよろしいんですか?」

パラディン
「実戦では無人艦も出る。……私の軍艦ふねが撃たれることはないだろう」

エリゴール
「……大佐殿。最後に一度だけ、我々にも機会を与えてくださいませんか?」

パラディン
「え?」

エリゴール
「今度はこの軍艦ふねを三十分間守りきる側として、我々に〝訓練〟をさせてください」

パラディン
「エリゴール中佐……」

エリゴール
「そして、もし三十分間守りきることができたら、次の実戦に我々も参加させてください。……大佐殿の護衛のために」

パラディン
「……君の気持ちはとても嬉しいが、今回はもう入れ替えはしないと宣言してしまった。それに、私の護衛のために二班も……」

エリゴール
「いえ、一班のみで結構です。真の目的は大佐殿の護衛ですが、もちろん攻撃もいたします。この〝訓練〟をやりとげてみせれば、元ウェーバー大佐隊も文句は言えないでしょう。いや、言える資格などない!」

パラディン
「……わかったよ。君がそこまで言うのなら、元ウェーバー大佐隊に打診してみよう。元ウェーバー大佐隊のどの班と再戦したいのかね?」

エリゴール
「愚問ですよ、大佐殿。……パラディン大佐隊所属第一班。それ以外ありえません」

パラディン
「わかってはいたが、一応確認してみた。たぶん、一班長は喜んで応じるだろう。それで、君らはどちらの班で迎え撃つつもりかね?」

エリゴール
「その前に、通信を一つ入れさせていただいてもよろしいでしょうか?」

パラディン
「通信?」

エリゴール
「実際に戦うのは自分ではなくその班ですので、そこの班長に事情を説明しなければなりません。まずないでしょうが、彼が拒めば、もう一方の班に要請します」

パラディン
「それもそうだね。じゃあ、ここで……」

エリゴール
「あ、いえ、大佐殿の前では話しにくいので、あちらで通信をしたいのですが」

パラディン
「えー……何で?」

エリゴール
「我々の会話は、大佐殿には大変お聞き苦しいと思いますので」

パラディン
「そんなことはないと思うが……まあ、好きにしたまえ」

エリゴール
「ありがとうございます」

 ***

モルトヴァン
「エリゴール中佐が怒った……」

副長
「え? 今まで怒った姿を見せたことはないんですか?」

モルトヴァン
「まったくないことはありませんが、あんなふうに怒鳴ったのは初めて見ました」

副長
「元ウェーバー大佐隊の不甲斐なさに怒り心頭に発した……というところでしょうか?」

モルトヴァン
「おそらく。大佐はずっと護衛をしていましたから、エリゴール中佐は心配でならないのでしょう。おまけに、元ウェーバー大佐隊があんな調子では」

副長
「元ウェーバー大佐隊の肩を持つつもりはありませんが、勝手が違ったのだと思いますよ。実戦では十隻対十隻で戦うことなどまず考えられません」

モルトヴァン
「だからですよ」

副長
「え?」

モルトヴァン
「あの〝訓練〟は元ウェーバー大佐隊に圧倒的に不利です。大佐のことを第一に考えるのなら、この軍艦ふねを護衛しながら撤退するべきでした。しかし、〝訓練〟という言葉に惑わされたのか、元ウェーバー大佐隊はその選択をしなかった。かつてウェーバー大佐の護衛をしていたはずの一班でさえもです。エリゴール中佐はそこにいちばん怒りと不安を覚えたのだと思います」

副長
「……そういえば、彼らは大佐の護衛をするために、転属してついてきたのでしたね」

モルトヴァン
「はい。そのために、エリゴール中佐は今まで元ウェーバー大佐隊と対立することを避けてきましたが、さすがに今回は腹に据えかねたのでしょう。……この隊に大佐を任せることはできないと」

副長
「しかし、撤退したとしても、護衛をする必要がなくなった一班相手に、三十分間この軍艦ふねを守りきることができるでしょうか?」

モルトヴァン
「……これは私の勘にしかすぎませんが、エリゴール中佐はたぶん――」

 ***

エリゴール
「恐れ入ります。十一班の班長艦につないでいただけますか?」

通信士
「映像通信でよろしいですか?」

エリゴール
「いや、別に音声だけでも……ま、いいか。映像通信でお願いします」

通信士
「了解しました」

ロノウェ
『……何だ、おまえか。びっくりした。もう〝訓練〟は終わりだろ? 何かあったのか?』

エリゴール
「おい、上司」

ロノウェ
『何だ、部下』

エリゴール
「これからあと三十分間、追加で〝訓練〟できる余力はあるか? ただし、今度は俺らの班が大佐殿を守って一班と戦う。三十分間守り抜ければ、次の実戦、元ウェーバー大佐隊と一緒に俺らの班だけ出撃できる。もちろん、大佐殿の護衛としてだ」

ロノウェ
『でかしたぞ、部下! 余力? ありあまってるよ! 五班分の戦闘時間、全部足しても一時間にならねえ!』

エリゴール
「そのかわり、二つ条件を守ってもらう。それを聞いてからやるかどうか決めてくれ」

ロノウェ
『もったいつけるな。何だよ?』

エリゴール
「一つ。大佐殿の軍艦ふねの位置は、班長艦の後ろだ。常に班長艦の後ろについて移動していただくよう、あとで大佐殿にお願いしておく。二つ。三十分間、絶対に撤退はするな。その場で大佐殿の軍艦ふねを守りきれ」

ロノウェ
『……つまり、三班が五分も続けられなかったことを、三十分間俺らにやれってことだな?』

エリゴール
「そのとおりだ。おまえ、本当に賢くなったな」

ロノウェ
『部下が上司に何て口ききやがる。……おもしれえ。あの一班とまたやれるのか。今度は逆の立場で。……いいぜ、やる。元マクスウェル大佐隊代表として』

エリゴール
「ありがとよ、馬鹿上司。おまえなら絶対そう答えると思った。……場所と開始時刻は決まったら伝える。それまで〝副長脳〟使って作戦練ってろ」

ロノウェ
『余計なお世話だ!』

パラディン
「……ふうん。君は普段、そんなふうに話すんだ」

エリゴール
「た、大佐殿! どうしてここに!?」

パラディン
「艦長席から歩いてきたからだよ。……一班長には私が通信を入れておいた。彼もあの負け方は非常に不本意だったんだろうねえ。むしろ、再戦の機会を得られて嬉しそうだった。私も君らの戦い方を見た一班長がどういう作戦をとるのか、とても楽しみだよ」

エリゴール
「……大佐殿。自分のわがままを叶えてくださり、ありがとうございます」

パラディン
「礼には及ばないよ。しかし、さっきの会話を聞いてから聞くと、本当に他人行儀に感じるね」

エリゴール
「……他人ですし。上官ですし」

パラディン
「うわああん!」

エリゴール
「大佐殿。嘘泣きをする前に、場所と開始時刻を決めてください。次の行動がとれません」

 ***

副長
「副官殿。あなたの勘が当たりましたね」

モルトヴァン
「何となく、エリゴール中佐ならそう言い出しそうな気がしました」

副長
「一班以外の班が採用して負けつづけた策をあえてとる。……もしそれで勝てたとしたら、元ウェーバー大佐隊にとってこれ以上の屈辱はないでしょう。しかし、エリゴール中佐に勝算はあるのでしょうか?」

モルトヴァン
「あるから申し出たのでしょうが……正直、私にはとてもあるとは思えません……」
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