アッサラーム!アライくん

gaction9969

文字の大きさ
39 / 42

Ally-39:収束なる★ARAI(あるいは、令和○○草紙/吹き抜けろ碧の閃コー)

しおりを挟む

「ジロー動画が撮っちゃれやがやぁッ!! こいらぁ何かてら立ち技がば齧っとら知らんざげ、素人女にシメ落とされちゃがるサマを三十秒くらいの面白動画に仕立てて爆散しちゃるがにぎよぉッ!!」

 いやぁ。もうオチかけてるような……がっつり入っちゃってるもん……とか思う間もなく、

「……」

 あっさりその細マッチョは膝を折り、白目で横倒しになっていく。オラァ、連れてけがばぁッと、周りで委縮していた仲間ツレたちに向けて言い放つと、最後、脇腹にふんとカラフルスニーカーの爪先をねじ入れてから、よたよたとこちらに向けて二三歩よろめいてきた。

「……」

 図らずも、お互い強制ウインク状態で向き合って開いた右目同士が合ってしまうのだけれど。何か分からないけど鼻から同時に息を吐きつつ苦笑し合ってしまった。この部屋前の廊下に落ちていた金色の「万博記念メダル」を制服スラックスのポケットから手渡す。と、あちゃばぁ、落としちょったんげなぁ、と、御大はまたおもねるようなへりくだるような微妙な照れ笑いをしてくるのだけれど。目印として落としてくれていたのだったら、僕らは頼られていたってことになる。僕も照れくさくなって、へっへという笑い声を重なり合わせてしまうのだけれど。

 そんな傍から見ると何とも言えない感じだろう輩たちに向けて、ちょっと二人とも大丈夫っ、との天上のラビオリが如くに、何といういたわりと友愛じゃが層状になった(どういう状態だろう)言葉をかけてくれたのは、先般どえらけねゃあ必殺技を放った水色の力天使デュナミスなのだけれど。そのままよいしょと言いながら机の天板から降りて来る。

「た、大したこつがば無かちょよ、ぁもジローも、ちぃとカスっただけじゃがげに、そ、そいよりもシアンのの、あんの御開帳パック○まん○がには、ど、度肝抜かれちゃっとがにあ、あっ、あっあっあっあ」

 腫れあがった頬が痛そうだけど、御大は最大限気張ってか、そんな弱々しいながらも可笑しくて堪らない、みたいな笑い声を上げるのだけれど。

「も、もうぅ、しょうがなかったんだし、あでも今日は見せてもいいやつ穿いて来てて良かったなぁってもうっ!! 言わせないでよぉ、え、えへ、え、えっえっえっ」

 三ツ輪さんの方も慣れてなさそうなノリツッコミをかますと、そんな風に張り合うかのように奇妙な笑い声を立てるのだけれど。

 強いな、ふたりとも。

 さりげなく横目で、三ツ輪さんのその顔を視界の端に何気なく入れてみたら。

 えっえっえっえ、と口で言いながら、その顔は見た事もないほど、ぐしゃぐしゃに歪められていて。

「……助かったがばい、流石は副団長がばるこつはあるじゃじ」

 アライくんが、その柔らかそうな焦げ茶色の髪ごと小さい頭を自分の胸元までぐいと引き寄せると、

 ふえええ、よかったよぉ……みたいに震える声を抑えながら泣き始めてしまったから。

 僕はその場にいるのも何だから、輩たちが去ってがらんとした部屋から廊下に出ていこうとする。と、

「……」

 何故か室内に戻ってきた猿人氏と髪人氏と鉢合わせてしまう。双方、先ほどまで集団とやり合っていた時の余裕そうな顔はどこへやら、何かに怯えるように委縮した感じだ。どうしたの? と思う間もなく、その後ろから現れた人物に思わず息を飲んでしまう。

「……」

 リコ御姉様おねいさまだった。その見目麗しい顔は蒼白で、険しい表情のまま固まっていたのだけど。まさかこれから元老院中枢との決着ラストバトルが……?

 では無かった。

 シアン大丈夫? アライくん……だよね、ごめんね本当にごめん……と、感情を抑えつけたような感じのままでそう室内を横切りつつ言葉を発すると、左手奥のこじんまりとしたドアに真っすぐに向かう御姉様。

「……!!」

 えええ、躊躇せずに蹴り開けたよ……まさかこの続きの間にいたのって……僕は慌ててその背中を追う。

「……」
「……」

 やっぱり。雑多な物置のような小部屋には、所在なさげに立ち尽くすアカネさんとアオイさんの姿があって。

「……何やってんの」

 御姉様の背中から冷たさをその狭い空間全部に伝導させんばかりの碧色のオーラが立ち昇っているのを、確かに僕は見た。

 いやちゃうねんてアイツら勝手に、とか言い訳をしようとした向かって左はアオイさんだろうか、その同じ見た目の流麗な顔のあたりで、

「!!」

 スパァン、といい音が鳴ったかと思ったら、御姉様の神速の平手ビンタが飛んでいたわけで。み、見えなかった……

「……言い訳トカ、そうイウ場ジャねんダヨ……」

 地の底から響いてくるかのような、聞く者すべての背筋をぞわつかせるような、煉獄の死宮殿バルハラが如くの(意味は分からないけどとにかく怖ろしい)声にも戦慄ではあったものの、顔が見る間に腫れてきたアオイさんはと言うと、相対している御姉様の形相(こちらからは見えないが見えなくてよかった)にさらにの恐怖を覚えているようで、静かにその場に崩れるようにして両膝を突くと、あ、ほんますんませんでした、と小声で言うのであった。そして、

「アカネも」

 御姉様が向きを変えてもう一人に促すけど、こちらは完全に不貞腐れてそっぽ向いた無言のままだ。でももう何か手馴れているのだろうか、その横顔に向けても迷いなく神速の一発が入る。しかし、

「……!!」

 怒りの形相を浮かばせたアカネさんが反撃の右を振りかぶってくる。けどそれを難なく自分の左腕でブロックすると、カウンターの平手ビンタがまたもその今度は逆側の頬を打ち鳴らしているのであった……それでも意地で無言のまま掴みかかってくるアカネさん……が、それをも軽くいなしてその華奢なる左腕を後ろに極め上げつつ壁に押し当てると、右腕も左手で抑えつけて拘束状態へスムースに移行させ、抵抗かなわなくなったその相手目掛けて、謝レ、謝レ、と感情の抜け落ちたイカれた機械音声じみた声と共に、上から振り下ろすようなチョッピング平手かべパンにて躊躇なく打擲を続けておる……や、やばぁぁあああいッ、

ジロ「も、ももももういいですってばッ!! もう充分反省の色は十全にッ!! この私の目には映っておりますぞぉっ」

リコ「……コイツは根性ババ色やサカイ……心の根ッコから屈服スルマデヤラントカンノヨ……」

シア「リコ姉ッ!? 落ち着いてって!! もうアカ姉限界だから!! 身体的にも精神的にも逃げ場を塞いじゃうのやめよう? 相手がね、どうともしようが無くなるから!! ね、ねえ届いてるの私の言の葉ッ? も、もぉぉやめたげてよぉぉぅ!!」

アラ「そ、そうじゃがば、もう目ぇば見開いて零れ落とさんように必死じゃし、唇のわななきも一向に止まって無かじゃし、気道がば震えんように不自然なほどの深呼吸を繰り返すばようになっちょるがでもうあかんがじッ!!」

 結局、

むわぁぁああああああん、との低いサイレンのような唸り泣き声と共に、ごべんだざーい、との、やっぱり決壊してしまったアカネさんからの詫びの言葉が入って、ようやくことここに至るまでの事態は収束した(と思われる)わけで。

 その後の交渉によっても、我が団が「祭」で使用できる部屋は変わらなかったものの、半分ではなく三分の二まで使ってよいとなったけれど、あまり改善というほどのものは見られなかったものの。

 とにかく無事に「祭」を開けるということが大事だと、僕は今そう思っているわけで。一緒にいられる残りの日々を大切に、忘れられないものにするために。

 そして、当日の朝を迎えたわけで。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...