摩訶☗大大大☖異世界 ダイ×ショウ×ギ=レインジャー

gaction9969

文字の大きさ
10 / 23

☖2一醉象(あるいは、創成/立ち上る⇔立ち昇る/混沌液上の砂楼閣)

しおりを挟む
「イデガーでござーる。あ、『香』の『棋霊スカリトォ』の加護を受けているで、あ、ござーるぅぅ」
「マカローニャンは『飛車』だよっ。あえて言うと振る方が得意かなっ」
「ヘペロナは『角』だよっ。あえて言うと『角換わり』が得意かなっ、ってそれ敵方に行っとるやないかーいっ」
「えっと」

 緑髪斜に構え男子ツァノンの描写もままならないままに。なかなかに濃いい面子があたしの意向とかは意に介さず、何かに誘引されるかのように打ち揃い始めているよ……それにしても大体その内のふたりくらいが双子のようにカブってくるのは勘弁だよ、認識しづらいよ……

 どうやらあたしが再昏倒している間に、話はするすると進んでいたようで。

「……これはこれは。最早、周りがほっとかなくなってるみたいにゃん……これは僥倖、超僥倖……そしてその鷲掴みの度合いをほんの少し緩めて欲しいのにゃん……」

 どんどん部屋に入ってくるひとたちに圧倒される度合いと比例して、背中吊り下げから両手でのハンギングへ移行させていた黒猫があたしの指で作った輪っかの中でそんなことをのたまいだすけれど、何の僥倖なのよ。

「以下九名、全てはハカナ殿の手駒でございますれば」
「あ、存ん分んにぃ~、あ、お~つ~か~い~な~す~ぅ~れぇぇ~」

 そして歌舞伎っぽいのが一人いると、こちらが喋る間をうまく測れなくて困るのだけれど。ただでさえコミュ力無い側の人間なんだから。そして、

「いよいよ、こちらから討って出る、その刻が来たのです。どうか我々をお導きください、『白の聖棋士』、ハカナ殿……ッ!!」

 いちばん話分かりそうだったジェスが、もう何か凄い視野が狭まっていて見ていらんない。青白色にうっすらと光を反射している西洋の全身鎧のような重装備をいつの間にか身に着けていたけど、その蒼い流水のような光を湛えていたはずの瞳は結構見開かれていて結構鬼気迫ってる感が強い。うぅんとりあえず……

「『敵』の情報とか、無いの?」

 目の前で揺れている黒猫を直視しつつ、そんな落とした声色にて問うけれど。

「にゃふ……それがし、最初の大元の『世界』設定を創ることは好きなのですが、その後の細かい調整とかデバッグとかが壊滅的に嫌いアンド苦手なのですにゃん……今回は『将棋』をモチーフにした世界と、そこに降ってわいた『混沌』……こと『摩訶★大将棋』要素をブチ込んだところまでは我ながらノリノリでしたにゃんが、その後意外とその『混沌』がカオス走ってしまいまして今や『世界』全土がそのわやくちゃに呑み込まれかけていると、端的に説明するとそんな感じになりますなんにゃぼぼぼッ……!! くくく苦しいですにゃ~」

 知らないけど。情報をと。言ったはずでは?

「キミ、猫をいじめるのはよくないだよっ。とにかくうちらと敵対している勢力をツブす。それだけで、いや、それだけが喫緊の課題と、そう言えるんだよ?」

 あたしの組み合わせた両の手指から、金色の瞳を白目へとのけぞらせつつ苦しむ猫神を摘まみ上げつつ、飛車か角のどちらかの幼女がそのような分かったような分からないようなことを諭すように言ってくる。そして、

「先ほどのハカナの対局を見ていて感じたんだよ、つまり奴らはちょいと『動き』『利き』が異なるだけの、手の内が知れてしまえばさほど恐れるには足らない存在であるということが、だよ?」

 もう一人のつがいのような幼女がこれまたしたり顔で、うんだから? のような事をのたまうのだけれど。もうこちらで与えられた情報を咀嚼するしかない。

 「将」殿の命により、「敵」方の根城であるところの北西は「ムルデスタ城」へとあたし以下十名の「隊」で攻め込むと。分かった。納得が早過ぎるかと自分でも驚きだけれど、もう「この世界」における流儀というか「呼吸感」というのは掴め始めている。そしてハッタリを取り戻すんだ、あたし。さっきの対局では最後、大混乱の勢い任せで、さらに感情まで逆巻かせてやっちゃったけど、それも「評価」されたっていうならそれで、とにかく突っ切ってやる。

 差し当たって「出立」まではあまり時間も無いそうで、おそらくこの後「将」殿に謁見あって即出発という流れになるだろう。その時に少しでも諸々を「把握」しているというところは示しておきたい。って思って欠けてる情報を埋めようとさっきから聞いているけど、うぅんあたしのコミュ術が拙いのかあまり響いていないんだよ……

 飛角金銀桂香歩三兵。「手駒」としては充分だしバランスとしてもこれ以上は望めないほどの布陣、それはいい(ちなみにゼルメダは「金」、ジェスは「銀」の「棋霊」を宿しているとのこと)。それぞれの「駒」としての動きや運用方法、って言っちゃうとあれだけどそういったことは短くも長かったあたしの将棋人生により脊髄レベルにまで叩き込まれている。そこもいい。注意すべきは……

 「摩訶大将棋」的な要素、と猫神は苦しげな顔をしながらもそう言った。「古来駒」、曖昧もわっと知ってるくらいだけど、今では考えられないような破天荒な要素があったと思う。それらが「敵」であるということ。未知の、それゆえの留意点。あるいは淘汰されていった「不条理なルール」、そんなのもあったかも知れない。それも要注意。相手方についての情報があれば何でも収集しておきたいけど、この世界のヒトたちも青天霹靂感をみんな滲ませていたし、さしたるものは得られないかも。そこは柔軟に対応していくまでだ。

 さらには「ATS」……あたしが名付けたのだけれど、交互に指していく「手番」というものは無く、アクティブに盤上は推移していくということ、一応「指し手」としての「束ねる役割ロゥル」というのはあるみたいだけど、それに従うも従わないも、究極は個々の「駒」に委ねられているということ。それもまた、あたしにとってはまだ未知に近い。「考えて考えて先を読んでその局面の最適手を放つ」っていうのが通常の将棋だとしたら、「考えつつ考える前にも考えている間も動いて局面をいち早く制圧していく」ってのがこちらの最善策なのかも知れない。「自分」だけでも無く、「自陣」だけでも無くっていうか。

 そう考えていくと、「仲間」のみんなのことは知っておきたい。うっすら感じていることだけど、それぞれの「性格」だとか「考え方」なんかも明らかに「指し手」には影響及ぼしてるよね……ポカ&ホンタとスゥを比較するとよく分かるけど、同じ「歩」とは思えないほどなんだよなあ……

 でも。

 そこに考えが至ってふと思う。普通の将棋においての「歩」だって、色々な使われ方があるよね。「突き歩」「打ち歩」「垂れ歩」「継ぎ歩」、「成り捨て」「底歩」とか「焦点の歩」なんかも。攻める・守る、それに適した性質……もっと言うと「資質」みたいなのがあるとしたら……例えば駒の配置は同一の局面だとしても、そこからの展開・形勢は大きく変わってきたりするのかも……やっぱりみんなのこと、知りたい。そう、「駒」としてだけじゃなく、やっぱり「人」としても。こんなにも他人のことを知りたいなんて思ったの初めてくらいかと思ったけど、一人じゃないってことが、こんなにも心強くて安心できるってことを少し分かってきたから。

「みんな、お願いがあるの。みんなの『資質』からまず教えてもらっていい? 戦場では第一に味方お互いのことを良く知った上で行動しないといけないと思うから。もちろんあたしから指示は出すと思うけどそれはあくまで緩い方針みたいな感じで、その場その場での『自分』の判断で即応に動くことがまずは大事と見てる。それに戦場ではおそらく『取ったり取られたり』で自陣敵陣を行ったり来たりするだろうけど、敵方に行った時でも『資質』を理解してたらある程度の対応は出来ると思うから。でもなるべくみんなを敵方に渡すっていうような指し回しはしないつもり。『先手必勝』『一気呵成』の気持ちで最速最善の一手を目指す」

 よくまとまらないまま頭の中にある事をどかっと出してしまった言葉たちだったけど、面してた九人一同が一斉に、はわわ、みたいな顔をしたようにあたしには見えた。何でだろ。

「流石は勇者ハカナですにゃおおぉぉん……ッ!! 『資質』ッ!! そいつを分かりやすく『可視化・パラメータ化』したやーつは既に作り込んでおいたという僥倖……まさにの極・僥倖……」

 その何と言うかのいい感じを掻き消すかのように、幼女の腕の中でやさしく撫でられつつごろごろ音を発していただけの黒猫がまたしても金切る感じの高音で分け入りいってくるのだけれど。そういうのを説明しろってさっきから言ってるよ?

【説明しようッ!! 『資質』の種類は大別『5種』ッ!! くふふふ図らずも将棋駒の五角形と同じですにゃね……『スピラ』は精神の属性、『天・海・地・空・洋・陸』が六つ!! 『クオレ』は心の色彩、『赤・橙・青・緑・黄・桃・白・黒』が主になってるはずだけど細かいとこまでは不明ッ!! 『アニマ』魂の数字、『0・1・2・3・4・5・6・7・8・9』大盤振る舞い十種ッ!! 『モテヴ』は理性の依代、『S・L・N・C・E』おそらく五つッ!! そして最大級の特徴的、『エメズ』は情動の具象、『漢字ひと文字』推定一万種くらいッ!? その約二千四百万になるそれぞれの『資質』を見極めること、これまたひとつの醍醐味ですにゃのんよぉぉ……】

 とか思ってたらつらりと説明なのかよく分からないことをまたのたまい出した。うん……ひとつ言えることは無駄にバリエーションが多くてどうなるのかさっぱり予測不能だし、分かったとてそれがどの局面でどう発揮されるかも想定不能だし、どうとでも取れる風にお茶を濁して後付けで色々やれる余地を残してそうな感じが不可避だし、要は不要ッ!!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

インターネットで異世界無双!?

kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。  その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。  これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...