4 / 41
添えられた手紙
しおりを挟む
「あ、たいちょー!」
リュードが訓練場から北側の庭へ戻ろうと歩いていると前方からエミリオが元気よく駆けてきた。食後に追いかけてきたのだろう。
「おかえりなさい!ルペル大隊長への用事は済みましたか?」
「ああ。」
「良かった!じゃあ、僕らの駐屯所に帰り…って制服はどうしたんですか?!」
「庭に置いてきた。」
「ええ!お庭!?またなんで?」
「色々あってな。」
「色々?」
「色々。」
「色々って、あちょっと、置いていかないでくださいよー!」
置いて行かれそうになったエミリオは先を歩くリュードの後を慌てて追った。
垣根の迷路を何度も曲がり事件のあった場所へ制服を回収しに行く。
最初は事情を話す気のなかったリュードだが、この件に関してエミリオには迷惑をかけるかもしれないと道中で事情を説明していた。
「へえ、そんなことがあったんですね。」
「ああ。この件で駐屯所を留守にすることがあるかもしれない。その時は留守を頼めるか?」
「もちろんです!隊長がいない間は僕が必ず守ってみせます!」
「ありがとう、エミリオ。あと、この件は広めないでくれ。」
「…どうしてです?」
「このようなことで女性の名前が有名になるのは避けた方が良いのではないかと思ってな。」
「なるほど。分かりました!でも別に騎士団会議で名前を公表したりしないですよね?」
「念には念を、だ。」
「了解です!」
そんな会話をしているといつの間にやら目的の場所に付いていた。
「あ、ありましたよ!隊長!」
エミリオが指を指す先にはぴっちりと綺麗に畳まれた白色の制服がベンチに置いてあった。
「畳み直してくださったのか。」
「うわあ、めっちゃ綺麗。」
ベンチの側まで来ると制服の胸ポケットに何やら紙が入っていることに気が付いた。
「隊長、胸になんか入ってます。」
「…?本当だ。紙?」
リュードが取り出してみるとメッセージカードサイズの紙が入っていた。
『有難うございました。』
紙にはとても美しい字でそう書かれていた。
「めっちゃマメな方ですねー。あ、名前!どっかに書いてないですか?」
エミリオにそう言われて裏返してみても名前は見つからない。
「ないな。」
「せっかく名前が分かると思ったのに!ルペル大隊長から連絡が来るの待つしかないんですね。」
「ああ。」
リュードはその紙が折れないように胸ポケットにしまい直しながら短く答え、制服を着直した。
「エミリオ、帰ろう。」
「はい!隊長!」
いまだに名前が分からずしょんぼりと肩を落とすエミリオにリュードがそう声を掛けると、エミリオからは勢いの良い返事が返ってきた。
リュードが訓練場から北側の庭へ戻ろうと歩いていると前方からエミリオが元気よく駆けてきた。食後に追いかけてきたのだろう。
「おかえりなさい!ルペル大隊長への用事は済みましたか?」
「ああ。」
「良かった!じゃあ、僕らの駐屯所に帰り…って制服はどうしたんですか?!」
「庭に置いてきた。」
「ええ!お庭!?またなんで?」
「色々あってな。」
「色々?」
「色々。」
「色々って、あちょっと、置いていかないでくださいよー!」
置いて行かれそうになったエミリオは先を歩くリュードの後を慌てて追った。
垣根の迷路を何度も曲がり事件のあった場所へ制服を回収しに行く。
最初は事情を話す気のなかったリュードだが、この件に関してエミリオには迷惑をかけるかもしれないと道中で事情を説明していた。
「へえ、そんなことがあったんですね。」
「ああ。この件で駐屯所を留守にすることがあるかもしれない。その時は留守を頼めるか?」
「もちろんです!隊長がいない間は僕が必ず守ってみせます!」
「ありがとう、エミリオ。あと、この件は広めないでくれ。」
「…どうしてです?」
「このようなことで女性の名前が有名になるのは避けた方が良いのではないかと思ってな。」
「なるほど。分かりました!でも別に騎士団会議で名前を公表したりしないですよね?」
「念には念を、だ。」
「了解です!」
そんな会話をしているといつの間にやら目的の場所に付いていた。
「あ、ありましたよ!隊長!」
エミリオが指を指す先にはぴっちりと綺麗に畳まれた白色の制服がベンチに置いてあった。
「畳み直してくださったのか。」
「うわあ、めっちゃ綺麗。」
ベンチの側まで来ると制服の胸ポケットに何やら紙が入っていることに気が付いた。
「隊長、胸になんか入ってます。」
「…?本当だ。紙?」
リュードが取り出してみるとメッセージカードサイズの紙が入っていた。
『有難うございました。』
紙にはとても美しい字でそう書かれていた。
「めっちゃマメな方ですねー。あ、名前!どっかに書いてないですか?」
エミリオにそう言われて裏返してみても名前は見つからない。
「ないな。」
「せっかく名前が分かると思ったのに!ルペル大隊長から連絡が来るの待つしかないんですね。」
「ああ。」
リュードはその紙が折れないように胸ポケットにしまい直しながら短く答え、制服を着直した。
「エミリオ、帰ろう。」
「はい!隊長!」
いまだに名前が分からずしょんぼりと肩を落とすエミリオにリュードがそう声を掛けると、エミリオからは勢いの良い返事が返ってきた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
二度目の初恋は、穏やかな伯爵と
柴田はつみ
恋愛
交通事故に遭い、気がつけば18歳のアランと出会う前の自分に戻っていた伯爵令嬢リーシャン。
冷酷で傲慢な伯爵アランとの不和な結婚生活を経験した彼女は、今度こそ彼とは関わらないと固く誓う。しかし運命のいたずらか、リーシャンは再びアランと出会ってしまう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる