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手紙の書き方
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「た、隊長!顔を上げてください!手紙の書き方とか貴族の礼儀作法とか僕で良ければなんでも教えますから!だからもう顔上げてくださいよ!」
慌てふためいたエミリオが震える声でそう懇願すると、リュードはゆっくり顔を上げた。
「ありがとう、エミリオ。本当に助かる。」
「そんな大げさな!そこまで感謝されることじゃないですよ。」
「そうか?」
リュードにとってはそこまで感謝することである。エミリオは自分が低級貴族の出身だと自虐風によく言うが、エミリオのその知識に少なからず救われたこともあるのだ。
それに恐らく、失礼のないように手紙を書こうなぞとしたらリュードは恐ろしく時間がかかるだろう。
「礼儀作法を知ってるのは僕がたまたま貴族出身なだけですし、手紙は誰でも書けますしね!これくらいのことで隊長のお役に立てるなら喜んで協力しますよ!」
「ありがとう。」
リュードに頼られるのが嬉しかったのか、エミリオは眩しいくらいの笑顔でそう言った。リュードも間髪入れずに礼を述べたのだが、エミリオは自身の失言に気が付いたらしい。
みるみる真っ青な顔になってしまった。
「あ、えっと、誰でも書けるっていうのは、その、教育を受けた子ならっていうあれで!えーと…。」
慌ててフォローをするエミリオ。しかし上手くフォローする言葉が出てこないようだ。
リュード自身は良くも悪くもその「誰でも」の中に自分が入っていないことはよくあることなので、もう慣れてしまっていた。
自身がどう、というよりも今はエミリオに責任を感じさせてしまっていることが申し訳ない。
「気にしないでくれ。大丈夫だ。」
「す、すみません。」
しゅん、と肩を落とすエミリオ。リュードのことは自分が一番分かっていたはずなのにという思いもあるのだろう。どうしてエミリオがここまで慕ってくれている、いや懐いてくれているのか未だにリュードはよく分からないが。
—教育を受けた子なら誰でも書ける。
この言葉が意味するのは、リュードは教育を受けたことがないということ。「誰でも」と最初にエミリオが言ったのは、普通だったら教育を受けられるし、家庭でも手紙を書く機会があるからだ。親のいない子供達でも孤児院で教育が受けられるようになっている。
なぜ教育を受けられなかったのか、あるいは受けさせてもらえなかったのか、そこまではエミリオも知らない。出会ったときには既にリュードの顔に火傷はあったし、リュードはリュードだった。そういえばその時に、自分は読み書きが苦手なのだと消え入りそうな声で言われたのを覚えている。
「…リオ、エミリオ?」
リュードからの呼びかけにエミリオははっと我に返る。
「あ、はい!すみません隊長、なんでしょう?」
「いや、その葡萄酒。よろしく頼んだ。」
リュードはエミリオの持つ葡萄酒を指して、穏やかな声でそう言った。
「は、はい!皆喜ぶと思います!じゃあ、僕はこれを食堂に運んできますね!」
エミリオは葡萄酒を抱え食堂へと走り出した。あの優しそうな声が自分を気遣ったものだと分からないほどエミリオも馬鹿じゃない。気遣われたいのは自分だろうに。「なぜあの人はいつも人のことばかりなんだ。」と食堂への道すがら、エミリオはずっとそればかりを考えていた。
慌てふためいたエミリオが震える声でそう懇願すると、リュードはゆっくり顔を上げた。
「ありがとう、エミリオ。本当に助かる。」
「そんな大げさな!そこまで感謝されることじゃないですよ。」
「そうか?」
リュードにとってはそこまで感謝することである。エミリオは自分が低級貴族の出身だと自虐風によく言うが、エミリオのその知識に少なからず救われたこともあるのだ。
それに恐らく、失礼のないように手紙を書こうなぞとしたらリュードは恐ろしく時間がかかるだろう。
「礼儀作法を知ってるのは僕がたまたま貴族出身なだけですし、手紙は誰でも書けますしね!これくらいのことで隊長のお役に立てるなら喜んで協力しますよ!」
「ありがとう。」
リュードに頼られるのが嬉しかったのか、エミリオは眩しいくらいの笑顔でそう言った。リュードも間髪入れずに礼を述べたのだが、エミリオは自身の失言に気が付いたらしい。
みるみる真っ青な顔になってしまった。
「あ、えっと、誰でも書けるっていうのは、その、教育を受けた子ならっていうあれで!えーと…。」
慌ててフォローをするエミリオ。しかし上手くフォローする言葉が出てこないようだ。
リュード自身は良くも悪くもその「誰でも」の中に自分が入っていないことはよくあることなので、もう慣れてしまっていた。
自身がどう、というよりも今はエミリオに責任を感じさせてしまっていることが申し訳ない。
「気にしないでくれ。大丈夫だ。」
「す、すみません。」
しゅん、と肩を落とすエミリオ。リュードのことは自分が一番分かっていたはずなのにという思いもあるのだろう。どうしてエミリオがここまで慕ってくれている、いや懐いてくれているのか未だにリュードはよく分からないが。
—教育を受けた子なら誰でも書ける。
この言葉が意味するのは、リュードは教育を受けたことがないということ。「誰でも」と最初にエミリオが言ったのは、普通だったら教育を受けられるし、家庭でも手紙を書く機会があるからだ。親のいない子供達でも孤児院で教育が受けられるようになっている。
なぜ教育を受けられなかったのか、あるいは受けさせてもらえなかったのか、そこまではエミリオも知らない。出会ったときには既にリュードの顔に火傷はあったし、リュードはリュードだった。そういえばその時に、自分は読み書きが苦手なのだと消え入りそうな声で言われたのを覚えている。
「…リオ、エミリオ?」
リュードからの呼びかけにエミリオははっと我に返る。
「あ、はい!すみません隊長、なんでしょう?」
「いや、その葡萄酒。よろしく頼んだ。」
リュードはエミリオの持つ葡萄酒を指して、穏やかな声でそう言った。
「は、はい!皆喜ぶと思います!じゃあ、僕はこれを食堂に運んできますね!」
エミリオは葡萄酒を抱え食堂へと走り出した。あの優しそうな声が自分を気遣ったものだと分からないほどエミリオも馬鹿じゃない。気遣われたいのは自分だろうに。「なぜあの人はいつも人のことばかりなんだ。」と食堂への道すがら、エミリオはずっとそればかりを考えていた。
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