高嶺の花と紅蓮の子

西園寺司

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怪我の理由

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それから数十分後。
なにやら玄関の方が騒がしくなったと思えば、慌てた様子で部下が執務室に駆け込んできた。


「エミリオさん!リュード隊長達が帰ってきました!」

「よかった!今すぐ行くよ!」


エミリオは焦る気持ちを抑えながら玄関へと急いだ。


「隊長!みんな!おかえりなさい!怪我をした方はいますか?」


砂埃で汚れた騎士達。
皆落ち着いているし、目立った怪我をしたものはいないようだ。


「足を捻った者がいるが、もう医務室に運んでもらっている。それ以外のものは各自部屋で休息、体調に変化があったらすぐに報告すること。以上、解散!」

「「「「はい!!」」」」


指示を出し終わったリュードに駆け寄るエミリオ。


「すまない。遅くなった。」


そう言うリュードの肩には斬り傷が。制服を貫通し、斬られたのであろう肌が見えている。


「隊長、お怪我を?」


エミリオはリュードの耳に顔を寄せて聞くと、リュードはけろっとした様子で答えた。


「ん?ああ。少し。」

「少し??」


そこまで出血していないが、確実に傷痕が残ってしまう怪我にしか見えない。
そんな怪我の何が少しだ。またこの人は自分の手当てを後回しにして…。どうせ足を捻った騎士をここまで運んできたんだろう。確かにこれくらいの怪我だったらすぐに手当てしなくても支障はないのだろうが。エミリオだってそのことを分かってはいるが心配である。


「報告書をまとめ急ぎ宮殿へ行かねばならない。エミリオ、手伝ってくれないか?」


ずっと肩の傷を見ていたエミリオにリュードが声をかける。


「あ!は、はい!分かりました。じゃあ隊長は先に執務室行っててください。」

「ああ。ありがとう。」


リュードに先に執務室に行くように促したエミリオは手当の道具を取りに医務室へと走った。

医務室に着くと、そこには足を捻ったという騎士がベッドに横たわっていた。
同期らしい騎士達に囲まれて、具合を確認されている。
エミリオがそれを横目に棚から包帯や消毒液などを荒々しく引っ掴んでいると、怪我をした騎士が気がついたようだ。


「あ、あのエミリオさん。」

「ん?なに?」


リュードの怪我に丁度いいサイズのガーゼが見つからない。エミリオはそれを探しながら背を向けたまま応えた。


「リュード隊長は大丈夫でしたでしょうか?」


リュード隊長、という言葉にくるりと振り返る。


「え?隊長が大丈夫だったかってどういうこと?」

「あ、あの、実は。リュード隊長が僕を助けてくださったんですが、その時に僕を庇って…。その、怪我を負わせてしまって。」

「ちょっと待って、隊長がその怪我をしたのって肩だったりする?」

「は、はい。」

「あーーーー。なるほど、そういうことかー。」


リュードが怪我をした理由に合点が入ったエミリオ。


「す、すみません。」

「別に謝ることじゃないよ!隊長もきっと気にしてないだろうしね。それより、君が無事で良かった!」

「い、いや!その…。日頃隊長が忠告してくださることを、僕がきちんと聞いていればこんな事にはならなかったんです。」

「え?」

「隊長に日頃から言われてたんです。君は足が速いから敵を深追いしすぎるな。って。先陣を切るときも、敵を追いかけるときも、きちんと仲間が後ろにいるか確認した方がいい。って。そうやって言ってくださっていたんです。でも僕は、それを忘れて一人で敵を追いかけてしまって。気づいたら山の深いところで一人でした。」

「だから捻挫しちゃったのか。」

「はい、地面に浮き出ていた木の根に足を取られてしまい…。敵はいつの間にか増えて、一人だったのが三人になってました。それで、もうダメだと思った時にリュード隊長が来てくださって。ここまで僕を運んでくださったのもリュード隊長です。隊長がいなかったら僕は今頃死んでました…。」


その時のことを思い出しているのだろうか。今にも泣き出しそうな顔をしている。
慌て励まそうと、身振りを交えてリュードが大丈夫そうなことを伝えようとするエミリオ。


「そんなに出血してなかったし、大丈夫だと思うよ!それに、隊長のことは僕がちゃんと手当するから安心して?」

「エ、エミリオさん…。」

「じゃあ、君はしっかり休んでね。僕は隊長のとこに行かなくちゃいけないからバイバーイ!」


リュードの怪我に丁度いいサイズのガーゼが見つかったので、エミリオは急いで医務室を出る。


「は、はい!すぐに治してみせます!」

「あはは!焦らずに、ゆっくり治せば大丈夫だよー!」


エミリオは廊下を走りながら大きな声で応えた。
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