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いざ、宮殿へ
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執務室に着くと、リュードが難しい顔で報告書を書いていた。上着を脱ぎ、ワイシャツ姿になっている。白いワイシャツに赤い血はよく目立つ。
エミリオは急いで駆け寄った。
「隊長、お怪我は大丈夫ですか。」
「ああ。毒刃でもないしな。私は大した怪我じゃない。足を捻った騎士の様子をあとで…。」
「ああ、それならもう見てきましたよ。同期の子たちも何人か付いてくれてるみたいですし、大分会話も出来ましたし。元気そうでした。逆に、怪我をさせてしまった隊長のこと心配してました!責任も感じているみたいでしたし!」
「そうか。元気そうなら良かった。」
書いている報告書から一切目を上げず、会話するリュード。
状況を思い出しながら急いで書いているからか、いつもよりも字が崩れている。
「しかし、私が怪我をしたことで心配をかけたのなら申し訳ないことをした。それに責任を感じる必要はないと伝えてほしい。出立する前にも一声掛けるべきだった。私にも非がある。隊の騎士を守るのも私の務めだ、問題無い。」
ダンッ!!!!
その言葉を聞いたエミリオが、持ってきていた消毒液やら包帯やらを力任せに置いた音だ。リュードの作業を遮るように、わざと報告書の上に置いた。
突然のことに一瞬固まるリュード。
しかし手当の道具を持ってきてくれたのだと理解して、すぐにエミリオに礼を言おうとした。
「ありが…」
「申し訳ないと思うなら!い・ま・す・ぐ!ここで手当てをしてください!」
報告書を書いているリュードの手首を掴んで止めながら、迫るエミリオ。
「どうせ、あれですよね!僕に報告書のチェックをさせている間に、手当てしようとか思ってたんでしょう?残念でした!報告書は僕が書くので、隊長は新しい制服を自分の部屋から持ってきてください!今すぐに!!!」
リュードの手からペンを奪い、座っている椅子を引き、執務室から追い出すエミリオ。
あまりの勢いにリュードはされるがままで、気付いたときには廊下に締め出されていた。
「…制服を取ってこないと入れてくれなさそうだな。」
リュードは大人しく、新しい制服を自室に取りに帰った。
「エミリオ、新しい制服を持ってきた。開けてくれ。」
「今、開けまーす!」
ドアが開くと、まだ少しだけご機嫌斜めなエミリオが。
「隊長が書いていた部分の清書は終わってます。そこに綺麗なタオルを準備してあるので、まず体を拭いてください。その間に、報告書に書きたいことを口頭で言ってください。僕が報告書に書き写すので。いいですよね?」
「あ、ああ。」
促されるまま、中に入り、ワイシャツを脱いで体を拭き始めるリュード。
「はい、他に報告書に書きたいことは?」
「薬自体もっていないようだったが、その効能は謎が多い。効能の一つとして肉体か身体能力を強化することが考えられる。」
「はい。」
「いずれにせよ、その薬は極めて危険である。」
「はい。」
「また、所持金は隣国のフルーウェ国の金貨数枚。」
「金貨??なんで?」
「だから気になる点として書いておいてくれ。」
「わかりました。他にはありますか?」
「いや、他はもう報告書に書いてある。ありがとう、エミリオ。」
「分かりました!じゃあ封しちゃいますね。」
「ああ。」
ササっと封をして報告書の作業を終了したエミリオ。すると今度は消毒液を手に取った。
嫌な予感がしたリュードは少しだけ身を引く。
「エミリオ?消毒液を取ってくれてありがとう。手を煩わせてすまない。」
受け取ろうと手を伸ばすリュード。
「え?僕が消毒するので、隊長はじっとしておいてください。」
「いや、自分で」
「じっとしておいてください?」
有無を言わせぬエミリオにリュードは従うしかなかった。
「はい、ちょっと染みますよ。」
「…。」
「薬塗りまーす。」
「…。」
「ガーゼで蓋しますね。」
「そんなに丁寧にやるほどの怪我では…。」
「はい?何か言いました?」
「いや、何も。」
エミリオは笑顔だが目が笑っていない。一度へそを曲げると長いのだ。
「それにしても、また傷が増えちゃいましたね。」
エミリオの言う通り、リュードの体は傷だらけだ。
「まあ、そうだな。」
リュードだって最初からここまで強かったわけではない。
「あ、そうだ。これルペル大隊長からの手紙です。色々ありすぎて忘れてました。すみません。」
「ルペルから?そうか。ありがとう。」
エミリオに手当されながら手紙の封を切って読む。
そこには先日の件で動きがあったから宮殿に来てほしい、との旨が書かれていた。
「先日の件ですか?」
リュードに包帯を巻きながらエミリオが問う。
「ああ。宮殿に来てほしいとのことだ。丁度いいのか悪いのか。」
「あはは。まあ隊長はどっちにしろ今日は宮殿に行かなきゃいけなかったってことですね。」
「そうだな。」
「隊長が制服取り入ってる間に、馬の準備はさせてあります。誰か連れてきますか?」
「ありがとう。だが私一人で行く。ここはお前に任せた、エミリオ。」
「はい!もちろんです。」
「さっきの山賊たちは、前に捕まえた親玉の最後の残党だと思う。だから、しばらくは安心だと思うが。何かあったらすぐに鳩を飛ばすか、早馬を出してくれ。」
「分かりました。」
「…そんなに丁寧に包帯を巻かなくても。」
「え?これくらい普通ですよ。」
嘘だ、普通ではない。エミリオはリュードへの嫌がらせとして、これ以上無いくらいに丁寧に包帯を巻いた。
そして。
「あ、すみません隊長!包帯背中で留めちゃいました!僕流の留め方しちゃいましたし…。帰ってきたら僕が責任を持って解きますね!本当にすみません!」
口から出まかせである。これは「無茶をしないでくださいね、包帯の崩れ方で分かりますよ。」
ということを言っているのだ。
「ああ、大丈夫だ。すまない、手間を掛けさせる。」
「いえいえ!いいんですよ。」
やっぱり目の笑っていないエミリオに制服まで着せられ、駐屯所ギリギリまで見送られてリュードは宮殿へと出発した。
敵に回したら一番怖いのは、ルペルじゃなくてエミリオかもしれない。とリュードは思い直したのだった。
エミリオは急いで駆け寄った。
「隊長、お怪我は大丈夫ですか。」
「ああ。毒刃でもないしな。私は大した怪我じゃない。足を捻った騎士の様子をあとで…。」
「ああ、それならもう見てきましたよ。同期の子たちも何人か付いてくれてるみたいですし、大分会話も出来ましたし。元気そうでした。逆に、怪我をさせてしまった隊長のこと心配してました!責任も感じているみたいでしたし!」
「そうか。元気そうなら良かった。」
書いている報告書から一切目を上げず、会話するリュード。
状況を思い出しながら急いで書いているからか、いつもよりも字が崩れている。
「しかし、私が怪我をしたことで心配をかけたのなら申し訳ないことをした。それに責任を感じる必要はないと伝えてほしい。出立する前にも一声掛けるべきだった。私にも非がある。隊の騎士を守るのも私の務めだ、問題無い。」
ダンッ!!!!
その言葉を聞いたエミリオが、持ってきていた消毒液やら包帯やらを力任せに置いた音だ。リュードの作業を遮るように、わざと報告書の上に置いた。
突然のことに一瞬固まるリュード。
しかし手当の道具を持ってきてくれたのだと理解して、すぐにエミリオに礼を言おうとした。
「ありが…」
「申し訳ないと思うなら!い・ま・す・ぐ!ここで手当てをしてください!」
報告書を書いているリュードの手首を掴んで止めながら、迫るエミリオ。
「どうせ、あれですよね!僕に報告書のチェックをさせている間に、手当てしようとか思ってたんでしょう?残念でした!報告書は僕が書くので、隊長は新しい制服を自分の部屋から持ってきてください!今すぐに!!!」
リュードの手からペンを奪い、座っている椅子を引き、執務室から追い出すエミリオ。
あまりの勢いにリュードはされるがままで、気付いたときには廊下に締め出されていた。
「…制服を取ってこないと入れてくれなさそうだな。」
リュードは大人しく、新しい制服を自室に取りに帰った。
「エミリオ、新しい制服を持ってきた。開けてくれ。」
「今、開けまーす!」
ドアが開くと、まだ少しだけご機嫌斜めなエミリオが。
「隊長が書いていた部分の清書は終わってます。そこに綺麗なタオルを準備してあるので、まず体を拭いてください。その間に、報告書に書きたいことを口頭で言ってください。僕が報告書に書き写すので。いいですよね?」
「あ、ああ。」
促されるまま、中に入り、ワイシャツを脱いで体を拭き始めるリュード。
「はい、他に報告書に書きたいことは?」
「薬自体もっていないようだったが、その効能は謎が多い。効能の一つとして肉体か身体能力を強化することが考えられる。」
「はい。」
「いずれにせよ、その薬は極めて危険である。」
「はい。」
「また、所持金は隣国のフルーウェ国の金貨数枚。」
「金貨??なんで?」
「だから気になる点として書いておいてくれ。」
「わかりました。他にはありますか?」
「いや、他はもう報告書に書いてある。ありがとう、エミリオ。」
「分かりました!じゃあ封しちゃいますね。」
「ああ。」
ササっと封をして報告書の作業を終了したエミリオ。すると今度は消毒液を手に取った。
嫌な予感がしたリュードは少しだけ身を引く。
「エミリオ?消毒液を取ってくれてありがとう。手を煩わせてすまない。」
受け取ろうと手を伸ばすリュード。
「え?僕が消毒するので、隊長はじっとしておいてください。」
「いや、自分で」
「じっとしておいてください?」
有無を言わせぬエミリオにリュードは従うしかなかった。
「はい、ちょっと染みますよ。」
「…。」
「薬塗りまーす。」
「…。」
「ガーゼで蓋しますね。」
「そんなに丁寧にやるほどの怪我では…。」
「はい?何か言いました?」
「いや、何も。」
エミリオは笑顔だが目が笑っていない。一度へそを曲げると長いのだ。
「それにしても、また傷が増えちゃいましたね。」
エミリオの言う通り、リュードの体は傷だらけだ。
「まあ、そうだな。」
リュードだって最初からここまで強かったわけではない。
「あ、そうだ。これルペル大隊長からの手紙です。色々ありすぎて忘れてました。すみません。」
「ルペルから?そうか。ありがとう。」
エミリオに手当されながら手紙の封を切って読む。
そこには先日の件で動きがあったから宮殿に来てほしい、との旨が書かれていた。
「先日の件ですか?」
リュードに包帯を巻きながらエミリオが問う。
「ああ。宮殿に来てほしいとのことだ。丁度いいのか悪いのか。」
「あはは。まあ隊長はどっちにしろ今日は宮殿に行かなきゃいけなかったってことですね。」
「そうだな。」
「隊長が制服取り入ってる間に、馬の準備はさせてあります。誰か連れてきますか?」
「ありがとう。だが私一人で行く。ここはお前に任せた、エミリオ。」
「はい!もちろんです。」
「さっきの山賊たちは、前に捕まえた親玉の最後の残党だと思う。だから、しばらくは安心だと思うが。何かあったらすぐに鳩を飛ばすか、早馬を出してくれ。」
「分かりました。」
「…そんなに丁寧に包帯を巻かなくても。」
「え?これくらい普通ですよ。」
嘘だ、普通ではない。エミリオはリュードへの嫌がらせとして、これ以上無いくらいに丁寧に包帯を巻いた。
そして。
「あ、すみません隊長!包帯背中で留めちゃいました!僕流の留め方しちゃいましたし…。帰ってきたら僕が責任を持って解きますね!本当にすみません!」
口から出まかせである。これは「無茶をしないでくださいね、包帯の崩れ方で分かりますよ。」
ということを言っているのだ。
「ああ、大丈夫だ。すまない、手間を掛けさせる。」
「いえいえ!いいんですよ。」
やっぱり目の笑っていないエミリオに制服まで着せられ、駐屯所ギリギリまで見送られてリュードは宮殿へと出発した。
敵に回したら一番怖いのは、ルペルじゃなくてエミリオかもしれない。とリュードは思い直したのだった。
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