14 / 41
対策会議
しおりを挟む
宮殿に着くと、全体がざわついていた。
捕まえた後で警備隊に引き渡したが、それが今しがた宮殿に着いたのだろう。
確かにさっきの奴らは尋常ではなかった。そんな危ない薬が開発され、流通しているかもしれないとなれば、落ち着いていられない。
厩舎に馬を置いて、まずは現騎士団長、ジェイド・フューランに会いに行く。
前回は迷ったが、宮殿の騎士団の部屋だけは流石に覚えている。リュードは迷うことなく、一直線に部屋へと向かった。
急ぎ足で部屋に着くと、騎士団の部屋の前には護衛の騎士が2人。リュードの存在に気付いてヒソヒソ会話をし始めた。
そういえば、急いで出てきたので当て布をしていない。だが今は噂話などしてる場合ではないだろう。
リュードが更に歩みを早めると、1人が近づいてきた。
「第一番隊兼第二番隊隊長、リュード・ヴァンホーク隊長ですね?」
遠慮がちにリュードの顔の火傷痕と制服の階級を確認しながら、身元を問うた。
「ええ。私が第一番隊兼第二番隊隊長、リュード・ヴァンホークです。」
リュードがすぐさま返答を返すと、騎士たちはアイコンタクトを取って頷き合う。
「お待ちしておりました。お怪我はございませんか、リュード隊長。」
「私は少し斬られただけで、お気遣いいただくような怪我はしておりません。」
ここまで自力で来ているのに、何故怪我の確認を。リュードは少し不思議に思ったが、その疑問は次の質問で吹き飛んだ。
「良かったです。お疲れのところ申し訳ありません。少々走れますか?」
そういうことか。
「問題ありません。」
腐っても、この国の防衛隊隊長である。そんなにやわな体ではない。
「ありがとうございます。今、ジェイド団長は宮殿の会議室にいらっしゃいます。リュード隊長がいらっしゃったら、急いでご案内するように、と仰せつかっております。」
「分かりました、走りましょう。案内をお願いします。」
1人の騎士に案内されるまま、リュードは走った。執務室は全くの反対方向にあるようだ。
「着きました。ここです。」
案内してくれた騎士が部屋のドアを叩く。
「ジェイド団長。リュード隊長をお連れしました。」
「そうか、ありがとう。入ってくれ、リュード。」
「はい。」
短く答えてドアノブに手を掛ける。
「案内してくださって、ありがとうございました。」
「あ、あ、はい!では私はこれで失礼します!」
リュードが礼を述べると、案内してくれた騎士は少しびくつきながら元気よく応えて去っていった。
その背中を少し見送った後、ドアノブを回して部屋に入る。
「失礼します。ヴァルツ王国騎士団第一番隊兼第二番隊隊長、リュード・ヴァンホークです。」
宮殿の会議室ということは騎士団長以外の方もいるはずだ。長々しいが、リュードはきちんと正式名称を名乗った。
「ありがとう、リュード。負傷した騎士が1人いると聞いているが、大丈夫かい?」
卓から掛けられた声。
白髪混じりの長髪を後ろで一つに結んだ男がこちらを見て微笑んでいる。
この男こそ、ヴァルツ王国騎士団を纏めあげる騎士団の長。ヴァルツ王国騎士団団長、ジェイド・フューランである。
「足を捻挫した者が一人。命に別条はありませんし、何の問題も無く会話できる状態です。」
「そうか。大した損害はないようで良かった。疲れているところ悪いが、こちらに来て報告をしてもらおうか。」
「はい。」
ジェイドはぽんぽん、と隣の空いている席を叩いた。
どうやらそこがリュードの席らしい。
その隣にはアイガス、ルペルと並んでいる。
リュードは大人しくそこに座った。
騎士以外の者たちがリュードの顔を見て分かりやすく、ざわざわし始める。
リュードがハンカチででも隠そうかとポケットに手を伸ばした時、威厳のある声が響いた。
「静粛に。リュード君報告を頼めますか?」
卓の最も上座に座っている、モノクルを掛けた品の良さそうな紳士。
数回しか会ったことはないが、この国の現在の宰相、シュベルク・ヨハネその人で間違いない。
「はい。」
リュードは報告書にまとめてきたことを述べていった。
廃人のように虚な目で、涎を垂らし続けていたこと。肉体能力が身体能力が強化されていると考えられること。以上のことから何か危険な薬を服用しているのでは無いかということ。
「以上です。また、山賊の所持金がフルーウェ国の金貨数枚だったことを補足しておきます。」
所持金が隣国の金貨数枚ということに動揺が走る。
「ありがとう、リュード君。」
「さて、対策会議を始めましょう。」
宰相シュベルク・ヨハネの言葉で対策会議が始まった。
捕まえた後で警備隊に引き渡したが、それが今しがた宮殿に着いたのだろう。
確かにさっきの奴らは尋常ではなかった。そんな危ない薬が開発され、流通しているかもしれないとなれば、落ち着いていられない。
厩舎に馬を置いて、まずは現騎士団長、ジェイド・フューランに会いに行く。
前回は迷ったが、宮殿の騎士団の部屋だけは流石に覚えている。リュードは迷うことなく、一直線に部屋へと向かった。
急ぎ足で部屋に着くと、騎士団の部屋の前には護衛の騎士が2人。リュードの存在に気付いてヒソヒソ会話をし始めた。
そういえば、急いで出てきたので当て布をしていない。だが今は噂話などしてる場合ではないだろう。
リュードが更に歩みを早めると、1人が近づいてきた。
「第一番隊兼第二番隊隊長、リュード・ヴァンホーク隊長ですね?」
遠慮がちにリュードの顔の火傷痕と制服の階級を確認しながら、身元を問うた。
「ええ。私が第一番隊兼第二番隊隊長、リュード・ヴァンホークです。」
リュードがすぐさま返答を返すと、騎士たちはアイコンタクトを取って頷き合う。
「お待ちしておりました。お怪我はございませんか、リュード隊長。」
「私は少し斬られただけで、お気遣いいただくような怪我はしておりません。」
ここまで自力で来ているのに、何故怪我の確認を。リュードは少し不思議に思ったが、その疑問は次の質問で吹き飛んだ。
「良かったです。お疲れのところ申し訳ありません。少々走れますか?」
そういうことか。
「問題ありません。」
腐っても、この国の防衛隊隊長である。そんなにやわな体ではない。
「ありがとうございます。今、ジェイド団長は宮殿の会議室にいらっしゃいます。リュード隊長がいらっしゃったら、急いでご案内するように、と仰せつかっております。」
「分かりました、走りましょう。案内をお願いします。」
1人の騎士に案内されるまま、リュードは走った。執務室は全くの反対方向にあるようだ。
「着きました。ここです。」
案内してくれた騎士が部屋のドアを叩く。
「ジェイド団長。リュード隊長をお連れしました。」
「そうか、ありがとう。入ってくれ、リュード。」
「はい。」
短く答えてドアノブに手を掛ける。
「案内してくださって、ありがとうございました。」
「あ、あ、はい!では私はこれで失礼します!」
リュードが礼を述べると、案内してくれた騎士は少しびくつきながら元気よく応えて去っていった。
その背中を少し見送った後、ドアノブを回して部屋に入る。
「失礼します。ヴァルツ王国騎士団第一番隊兼第二番隊隊長、リュード・ヴァンホークです。」
宮殿の会議室ということは騎士団長以外の方もいるはずだ。長々しいが、リュードはきちんと正式名称を名乗った。
「ありがとう、リュード。負傷した騎士が1人いると聞いているが、大丈夫かい?」
卓から掛けられた声。
白髪混じりの長髪を後ろで一つに結んだ男がこちらを見て微笑んでいる。
この男こそ、ヴァルツ王国騎士団を纏めあげる騎士団の長。ヴァルツ王国騎士団団長、ジェイド・フューランである。
「足を捻挫した者が一人。命に別条はありませんし、何の問題も無く会話できる状態です。」
「そうか。大した損害はないようで良かった。疲れているところ悪いが、こちらに来て報告をしてもらおうか。」
「はい。」
ジェイドはぽんぽん、と隣の空いている席を叩いた。
どうやらそこがリュードの席らしい。
その隣にはアイガス、ルペルと並んでいる。
リュードは大人しくそこに座った。
騎士以外の者たちがリュードの顔を見て分かりやすく、ざわざわし始める。
リュードがハンカチででも隠そうかとポケットに手を伸ばした時、威厳のある声が響いた。
「静粛に。リュード君報告を頼めますか?」
卓の最も上座に座っている、モノクルを掛けた品の良さそうな紳士。
数回しか会ったことはないが、この国の現在の宰相、シュベルク・ヨハネその人で間違いない。
「はい。」
リュードは報告書にまとめてきたことを述べていった。
廃人のように虚な目で、涎を垂らし続けていたこと。肉体能力が身体能力が強化されていると考えられること。以上のことから何か危険な薬を服用しているのでは無いかということ。
「以上です。また、山賊の所持金がフルーウェ国の金貨数枚だったことを補足しておきます。」
所持金が隣国の金貨数枚ということに動揺が走る。
「ありがとう、リュード君。」
「さて、対策会議を始めましょう。」
宰相シュベルク・ヨハネの言葉で対策会議が始まった。
0
あなたにおすすめの小説
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
二度目の初恋は、穏やかな伯爵と
柴田はつみ
恋愛
交通事故に遭い、気がつけば18歳のアランと出会う前の自分に戻っていた伯爵令嬢リーシャン。
冷酷で傲慢な伯爵アランとの不和な結婚生活を経験した彼女は、今度こそ彼とは関わらないと固く誓う。しかし運命のいたずらか、リーシャンは再びアランと出会ってしまう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる