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魔導探偵事務所
疑問
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追っ手から逃げたユラは、魔導探偵事務所に戻ってきた。
事務所では所長のテンカがパソコンと睨めっこをしていた。
テンカは、ユラが帰ってきたことに気づくと曖昧な笑みを浮かべた。
「やあ。早かったね」
「…何故ですか?」
ユラは静かに問いかけた。
テンカは笑みを消し、鋭い目付きで彼女を見た。
「何故、とは?」
「…何故黙っていたんですか?」
「なんのことかな?あ、もしかしてヤクザとやりあった?」
テンカはごめんと手を合わせた。
だがユラは真っ直ぐテンカを見つめて言った。
「何故蓮華会とうちの事務所は繋がりがあるんですか」
その言葉を聞くと、テンカは深いため息を吐いた。
「…なんでそう思うんだい?」
「さっき蓮華会の組員に襲われました」
テンカはソファに座ると、腕を組んで天井を見上げた。
「そいつらに聞いたのかい?」
「いえ、仄めかすような事は言ってましたが」
「じゃあ何故?」
「情報が漏れるのが早すぎるんです。私は今日依頼について聞いて動き始めました。でも彼らは私の情報を既に掴んでいた。いくら情報網が広いからってそれは早すぎる」
テンカの様子を気にしながらユラは続けた。
「それに、誘拐されたモノカの素性、わざと隠しましたね」
「隠す?言う必要がなかっただけだよ」
「蓮華会の現組長という情報も、ですか?」
その言葉にテンカはううん、と唸った。
「分かった。モノカ嬢の素性を隠してたのは謝る。すまなかった。でもうちは蓮華会とは…」
「電話」
ユラは少し語気を強めて言った。
「さっき私が来た時、電話していましたよね。あれは誰とでしたか?」
「いやあ、いくらアオイくんでも依頼者のことは話せないよ」
「依頼じゃありませんよね。依頼ならバイトの私にも話して共有できますよね。違いますか?」
テンカはユラの顔を見つめ直した。
「何が言いたいのかな?」
「電話の相手、蓮華会の幹部の人じゃありませんか?」
テンカはやれやれと頭をかくと観念したように言った。
「君の推論は少々稚拙だが、そこまで解ったなんて恐れ入ったな」
「じゃあ…!」
「そうだよ。うちは蓮華会と繋がってる。うちが調査して得た情報を蓮華会に流してる。その代わりにうちはあちらさんに目こぼししてもらってる」
「そんな…!」
ユラの言葉に、テンカは苦々しく言う。
「うちみたいな小さな探偵事務所がやっていくにはこれくらいしないと駄目なんだよ」
「そう…ですか…」
「アオイ君は物分かりが良くて助かる。クロサキ君やミライ君も其れ位物分かりが良ければいいんだけど…」
クロサキ、ミライはユラと同じバイトである。
レイジ・クロサキは熱血漢で小難しいことは苦手な青年である。
ミユ・ミライは引っ込み思案で大人しい、ユラと同じ高校生である。
「今回の依頼、組長が攫われたって事で大変な事になったなと連絡してみたんだ。そうしたら、この件には手を出すな、依頼者について調べておけ、依頼者が事務所の動向を監視しているようだったら囮として誰かを公園に向かわせろ、あとはこちらが妨害する、依頼者には妨害があって依頼が進まないから中止にしてくれと言え、だとさ」
はあと息を吐いたテンカは、すまなそうにユラを見た。
「すまない、危険な目にあうと分かって調査に向かわせた。本当にすまないと思っている」
「いえ、そういうことなら仕方がありません」
ユラはソファに座るとタブレットを起動させた。
地図アプリを開き、ある住所を検索すると、テンカに画面を見せた。
「これは…モノカ嬢の家?」
「考えたんですが、モノカさんが囚われてるとしたらやっぱり自宅ではないでしょうか。攫われた時に一緒にいたお母さんが止めなかったのは、自分の手の届く場所に連れて行くから、所長に手を出すなって言ったのは、誘拐したのが自分達…蓮華会だから」
「それじゃあ誘拐事件というのは…」
「蓮華会による組長監禁事件ということになります」
テンカは少し驚いた顔をすると首を振った。
「まあそうだろうなとは思ってたけど…蓮華会の連中は一体何がしたいんだか…」
「モノカさんを監禁する理由…何でしょう…?」
二人は難しい顔をして唸った。
「それとうちに依頼してきた人は誰なんでしょう?」
「今ミライ君に調べてもらっているんだが、あっちもややこしいみたいでね…」
「そうですか…」
ユラは少しだけ考えると、決意したように言った。
「所長、私モノカさんの家に行きます」
「えっ!駄目だ!そんな危険なことさせられない!」
「危険は承知の上です。それにもう危険な目には遭いましたから」
「しかし…」
「お願いします。行かせてください」
ユラの真剣な眼差しに、テンカは諦めたように言った。
「…しょうがない。潜入を許可する。但し、通信で私が指示を出す。それに従うこと」
「はい!」
こうしてユラは蓮華会の懐、レイジョウ家に潜入する事になった。
事務所では所長のテンカがパソコンと睨めっこをしていた。
テンカは、ユラが帰ってきたことに気づくと曖昧な笑みを浮かべた。
「やあ。早かったね」
「…何故ですか?」
ユラは静かに問いかけた。
テンカは笑みを消し、鋭い目付きで彼女を見た。
「何故、とは?」
「…何故黙っていたんですか?」
「なんのことかな?あ、もしかしてヤクザとやりあった?」
テンカはごめんと手を合わせた。
だがユラは真っ直ぐテンカを見つめて言った。
「何故蓮華会とうちの事務所は繋がりがあるんですか」
その言葉を聞くと、テンカは深いため息を吐いた。
「…なんでそう思うんだい?」
「さっき蓮華会の組員に襲われました」
テンカはソファに座ると、腕を組んで天井を見上げた。
「そいつらに聞いたのかい?」
「いえ、仄めかすような事は言ってましたが」
「じゃあ何故?」
「情報が漏れるのが早すぎるんです。私は今日依頼について聞いて動き始めました。でも彼らは私の情報を既に掴んでいた。いくら情報網が広いからってそれは早すぎる」
テンカの様子を気にしながらユラは続けた。
「それに、誘拐されたモノカの素性、わざと隠しましたね」
「隠す?言う必要がなかっただけだよ」
「蓮華会の現組長という情報も、ですか?」
その言葉にテンカはううん、と唸った。
「分かった。モノカ嬢の素性を隠してたのは謝る。すまなかった。でもうちは蓮華会とは…」
「電話」
ユラは少し語気を強めて言った。
「さっき私が来た時、電話していましたよね。あれは誰とでしたか?」
「いやあ、いくらアオイくんでも依頼者のことは話せないよ」
「依頼じゃありませんよね。依頼ならバイトの私にも話して共有できますよね。違いますか?」
テンカはユラの顔を見つめ直した。
「何が言いたいのかな?」
「電話の相手、蓮華会の幹部の人じゃありませんか?」
テンカはやれやれと頭をかくと観念したように言った。
「君の推論は少々稚拙だが、そこまで解ったなんて恐れ入ったな」
「じゃあ…!」
「そうだよ。うちは蓮華会と繋がってる。うちが調査して得た情報を蓮華会に流してる。その代わりにうちはあちらさんに目こぼししてもらってる」
「そんな…!」
ユラの言葉に、テンカは苦々しく言う。
「うちみたいな小さな探偵事務所がやっていくにはこれくらいしないと駄目なんだよ」
「そう…ですか…」
「アオイ君は物分かりが良くて助かる。クロサキ君やミライ君も其れ位物分かりが良ければいいんだけど…」
クロサキ、ミライはユラと同じバイトである。
レイジ・クロサキは熱血漢で小難しいことは苦手な青年である。
ミユ・ミライは引っ込み思案で大人しい、ユラと同じ高校生である。
「今回の依頼、組長が攫われたって事で大変な事になったなと連絡してみたんだ。そうしたら、この件には手を出すな、依頼者について調べておけ、依頼者が事務所の動向を監視しているようだったら囮として誰かを公園に向かわせろ、あとはこちらが妨害する、依頼者には妨害があって依頼が進まないから中止にしてくれと言え、だとさ」
はあと息を吐いたテンカは、すまなそうにユラを見た。
「すまない、危険な目にあうと分かって調査に向かわせた。本当にすまないと思っている」
「いえ、そういうことなら仕方がありません」
ユラはソファに座るとタブレットを起動させた。
地図アプリを開き、ある住所を検索すると、テンカに画面を見せた。
「これは…モノカ嬢の家?」
「考えたんですが、モノカさんが囚われてるとしたらやっぱり自宅ではないでしょうか。攫われた時に一緒にいたお母さんが止めなかったのは、自分の手の届く場所に連れて行くから、所長に手を出すなって言ったのは、誘拐したのが自分達…蓮華会だから」
「それじゃあ誘拐事件というのは…」
「蓮華会による組長監禁事件ということになります」
テンカは少し驚いた顔をすると首を振った。
「まあそうだろうなとは思ってたけど…蓮華会の連中は一体何がしたいんだか…」
「モノカさんを監禁する理由…何でしょう…?」
二人は難しい顔をして唸った。
「それとうちに依頼してきた人は誰なんでしょう?」
「今ミライ君に調べてもらっているんだが、あっちもややこしいみたいでね…」
「そうですか…」
ユラは少しだけ考えると、決意したように言った。
「所長、私モノカさんの家に行きます」
「えっ!駄目だ!そんな危険なことさせられない!」
「危険は承知の上です。それにもう危険な目には遭いましたから」
「しかし…」
「お願いします。行かせてください」
ユラの真剣な眼差しに、テンカは諦めたように言った。
「…しょうがない。潜入を許可する。但し、通信で私が指示を出す。それに従うこと」
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こうしてユラは蓮華会の懐、レイジョウ家に潜入する事になった。
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