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第4章
アドバイスという名の(3)
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「翔」
緊張した声で俺の名前を呼ぶ主は、振り向くと睨むように俺を見つめていた。
「カ、ケル」
自分の名を呼ばれたカケルは意外そうに眉を跳ね上げた。
「へー、俺の名前を覚えてるんだ。それだけ意識してたってことかな」
俺は答えず、慎重にカケルの様子を伺う。
前回と同じダッフルコートを身に纏っているが、真っ赤な細身のパンツを履いている。
雰囲気が随分と違く見える。
涼さんとは別のジャンルのお洒落さんだが、彼が涼さんの横にいても様になる。
涼さんの隣にはいつもカケルみたいなお洒落で、見た目も素敵な人がいたのかもしれない。島崎さんが言うように、俺は涼さんの『付き合ってきた人達とは違うタイプ』なのだろう。
それって、つまり俺は涼さんのタイプではないということになる。
涼さんは俺のことをタイプだって言ったけど、その言葉はリップサービスとしか思えない。
涼さんと付き合う前からわかっていたことを周りが証明してくれる。せっかく俺が目をつぶっていても、耳元で諭されているようなものだ。
「俺がここにいることが不思議なんだろう?」
「うん。俺のストーカ?」
カケルの勢いをいなすように、俺はのほほんとした雰囲気で答える。もちろん、それは演じてるだけで、胸中は穏やかではない。
「そんな訳ないじゃん」
「それじゃ、涼さんのストーカ?」
カケルは軽口を叩くことをやめて、というより余裕がなくなり、眉根を寄せて目を鋭くした。
その目が自分に向けられてるのに、俺は何でもない振りをし続ける。
「翔は無職だから時間あるだろう? こんなところで立ち話もなんだから、お茶でも飲みなが話さないか」
「どうして俺のことを知ってるの?」
一瞬、島崎さんの顔が頭に浮かぶ。
「前に店で会った時、島崎さんとお前の会話で就活してること、5日後にスーツが出来上がることが聞こえたからね。朝から店の前で張ってたわけよ。もちろん、お前の名前もそれで知ったんだ」
島崎さんが話したのかと疑ったが、違っていたのでホッとする。
「午前中に来なかったら諦めようと思ったけど、こうして会えた。だから、きちんと話したい」
そうまでして彼が俺と会おうとしたのは、涼さんのことで言いたいことがあるからだろう。
それを俺は聞くのが怖い。
怖いが聞きたくもある。
「盗み聞きをして待ち伏せしている人の誘いを俺が承諾すると思う?」
ジレンマを隠した俺は、あくまでも飄々とした受け答えをする。
「思うよ。だって俺の存在が気になってるだろう?」
確かにそうだ。
忘れようとしたけど、涼さんと付き合っていた彼の存在を俺の中から消せるわけがない。
「黙ってるところを見ると、当たりでしょう?」
その「してやったり顔」にムッとして反撃する。
「でも、カケルも俺のことが気になってる。だから、わざわざ俺の前に現れた。カケルの方が俺を意識してるのは一目瞭然。そんな君を無視して、苦しめるというやり方を俺が選ぶかもしれない」
「とんだS野郎だな」
カケルの口からは悪態が溢れる。彼の素な言葉のようで、 言葉の内容とは裏腹に受け入れやすい。
だから、俺は調子にのる。
「そう、涼さんと付き合って、自分にサディスティックな面があることを知ったよ」
これは本当のこと。自分が誰かに、今みたいな態度を取るなんて信じられない。
「涼さんと付き合って、か」
カケルは面白くなさそうに、言葉を口にする。
「そう、付き合ってからだね」
だから俺は敢えて『付き合って』を連呼して挑発をする。
わざわざカケルを挑発するのは、彼が涼さんと付き合っていたから。
単なる嫉妬という醜い気持ち。
「何でお前みたいな奴がが涼さんと付き合えるんだよ」
「不釣り合いと言いたい?」
「自分では釣り合うと思ってる?」
「思ってないよ。涼さんはカッコいいもの」
自嘲して唇を歪めたが、逆にすとんっと落ちるものがある。
「だったら隣にいるのおかしくない?」
「おかしいよ。だからこそ、お前みたいな奴の存在が気に入らないから攻撃的になるんだろうが」
「お前、そんな素直に手の内を明かしてどうする?」
カケルはまじまじと俺の顔を見つめる。
その表情が急に子供じみていて可愛いく見えた。
もしかしたら、俺と同年代と思ったが、もっと若いかもしれない。
「 涼さんと仲良いところとか、愛されてるところとかアピールして、俺に嫉妬させるのがセオリーだろう?」
「残念だけど、嫉妬させるエピソードを話すなら嘘をつくしかない」
「嘘でもいいんだよ。お前、バカだな」
カケルの言葉は酷いが、棘のような言い方がすっと消えた。そのせいで、俺の攻撃モードも自然と解除されていった。
「バカかもしれないから、ストーカーカケル君とお茶を飲むことにするよ」
「だから、ストーカーじゃねぇって」
カケルがぶつぶつと文句を言うが、俺はどのお店に入ろうか頭の中で悩んでいた。
緊張した声で俺の名前を呼ぶ主は、振り向くと睨むように俺を見つめていた。
「カ、ケル」
自分の名を呼ばれたカケルは意外そうに眉を跳ね上げた。
「へー、俺の名前を覚えてるんだ。それだけ意識してたってことかな」
俺は答えず、慎重にカケルの様子を伺う。
前回と同じダッフルコートを身に纏っているが、真っ赤な細身のパンツを履いている。
雰囲気が随分と違く見える。
涼さんとは別のジャンルのお洒落さんだが、彼が涼さんの横にいても様になる。
涼さんの隣にはいつもカケルみたいなお洒落で、見た目も素敵な人がいたのかもしれない。島崎さんが言うように、俺は涼さんの『付き合ってきた人達とは違うタイプ』なのだろう。
それって、つまり俺は涼さんのタイプではないということになる。
涼さんは俺のことをタイプだって言ったけど、その言葉はリップサービスとしか思えない。
涼さんと付き合う前からわかっていたことを周りが証明してくれる。せっかく俺が目をつぶっていても、耳元で諭されているようなものだ。
「俺がここにいることが不思議なんだろう?」
「うん。俺のストーカ?」
カケルの勢いをいなすように、俺はのほほんとした雰囲気で答える。もちろん、それは演じてるだけで、胸中は穏やかではない。
「そんな訳ないじゃん」
「それじゃ、涼さんのストーカ?」
カケルは軽口を叩くことをやめて、というより余裕がなくなり、眉根を寄せて目を鋭くした。
その目が自分に向けられてるのに、俺は何でもない振りをし続ける。
「翔は無職だから時間あるだろう? こんなところで立ち話もなんだから、お茶でも飲みなが話さないか」
「どうして俺のことを知ってるの?」
一瞬、島崎さんの顔が頭に浮かぶ。
「前に店で会った時、島崎さんとお前の会話で就活してること、5日後にスーツが出来上がることが聞こえたからね。朝から店の前で張ってたわけよ。もちろん、お前の名前もそれで知ったんだ」
島崎さんが話したのかと疑ったが、違っていたのでホッとする。
「午前中に来なかったら諦めようと思ったけど、こうして会えた。だから、きちんと話したい」
そうまでして彼が俺と会おうとしたのは、涼さんのことで言いたいことがあるからだろう。
それを俺は聞くのが怖い。
怖いが聞きたくもある。
「盗み聞きをして待ち伏せしている人の誘いを俺が承諾すると思う?」
ジレンマを隠した俺は、あくまでも飄々とした受け答えをする。
「思うよ。だって俺の存在が気になってるだろう?」
確かにそうだ。
忘れようとしたけど、涼さんと付き合っていた彼の存在を俺の中から消せるわけがない。
「黙ってるところを見ると、当たりでしょう?」
その「してやったり顔」にムッとして反撃する。
「でも、カケルも俺のことが気になってる。だから、わざわざ俺の前に現れた。カケルの方が俺を意識してるのは一目瞭然。そんな君を無視して、苦しめるというやり方を俺が選ぶかもしれない」
「とんだS野郎だな」
カケルの口からは悪態が溢れる。彼の素な言葉のようで、 言葉の内容とは裏腹に受け入れやすい。
だから、俺は調子にのる。
「そう、涼さんと付き合って、自分にサディスティックな面があることを知ったよ」
これは本当のこと。自分が誰かに、今みたいな態度を取るなんて信じられない。
「涼さんと付き合って、か」
カケルは面白くなさそうに、言葉を口にする。
「そう、付き合ってからだね」
だから俺は敢えて『付き合って』を連呼して挑発をする。
わざわざカケルを挑発するのは、彼が涼さんと付き合っていたから。
単なる嫉妬という醜い気持ち。
「何でお前みたいな奴がが涼さんと付き合えるんだよ」
「不釣り合いと言いたい?」
「自分では釣り合うと思ってる?」
「思ってないよ。涼さんはカッコいいもの」
自嘲して唇を歪めたが、逆にすとんっと落ちるものがある。
「だったら隣にいるのおかしくない?」
「おかしいよ。だからこそ、お前みたいな奴の存在が気に入らないから攻撃的になるんだろうが」
「お前、そんな素直に手の内を明かしてどうする?」
カケルはまじまじと俺の顔を見つめる。
その表情が急に子供じみていて可愛いく見えた。
もしかしたら、俺と同年代と思ったが、もっと若いかもしれない。
「 涼さんと仲良いところとか、愛されてるところとかアピールして、俺に嫉妬させるのがセオリーだろう?」
「残念だけど、嫉妬させるエピソードを話すなら嘘をつくしかない」
「嘘でもいいんだよ。お前、バカだな」
カケルの言葉は酷いが、棘のような言い方がすっと消えた。そのせいで、俺の攻撃モードも自然と解除されていった。
「バカかもしれないから、ストーカーカケル君とお茶を飲むことにするよ」
「だから、ストーカーじゃねぇって」
カケルがぶつぶつと文句を言うが、俺はどのお店に入ろうか頭の中で悩んでいた。
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