で、手を繋ごう

めいふうかん

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第4章

アドバイスという名の(5)

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そう考えながらも、そうではないと否定する気持ちも出てくる。

「カケルが上手くいっていると思っていただけで、涼さんの気持ちは違かったとか?」


「そう、なのかも」

カケルは歯切れ悪く言葉を返す。
きゅっと寄っていた眉と眉の間も広がってくる。

コロコロと表情を変えていく。

彼と初めて会った時よりも、ずっと素直なのかもしれないと感じる。


「心当たりがないんだ。だから、俺は涼さんと別れた後に、何が悪かったのかなって悩んだよ。こんなに悩まされるくらいなら、はっきりと悪いところをいって欲しい。次の誰かと付き合った時にも同じことしてしまうかもって不安になる」

カケルって、すごい。
もう恋が出来ない、と言い出すのではなく、次の恋のことを心配するんだから。

「だから、1年ぶりに再開した時、更にカッコよくなってる涼さんを見て、色々な気持ちが湧いたよ」


2人が再開した時のカケルの言葉を思い出す。

『涼さんはそのままでも素敵でしたが、もっと素敵になりました』

この台詞でカケルの涼さんに対する思いを俺は感じ取った。

「別の男といるのを見て、殴ってやりたくもなったよ。俺がどんな気持ちでこの1年を過ごしたのか! お前はさっさと別の男と付き合ってたのか!?ってね」

別の男とは俺のことを言っているのだろう。

「でも、涼さん、更にカッコよくなってて、本当に別れたことが悔しくて悔しくて仕方がない気持ちもあった」

やはりまだ涼さんに気持ちがあるってことだろう。

もし、俺が涼さんを解放したら、カケルとよりを戻すのかな?

考えたそばから、全身がひりつくほど緊張する。

「しかも、連れの男が俺の遠く及ばないかっこいい男なら諦めがつくけど、なんかぼーっとした冴えない男といるから尚更さ」

カケルは目をすっと細めて、軽く俺を睨め付ける。

冴えない男とは酷い言われようだが、カケルと比べられたら、その評価は甘んじて受けなければならない。

「翔は島崎さんのお店に来たのは初めてで、涼さんに連れて来てもらった?」

「そうだけど」

話が変わった気がするが、俺は素直に答える。
カケルはこれ見よがしに深いため息をついた。

「さっき話した涼さんと出会ったお店の客の多くが、島崎さんの店でスーツを作ってるんだ。涼さんが俺の前に付き合った彼氏も、島崎さんのお店で会って、付き合いが始まったみたい。島崎さんに行ったら怒るけど、あの店はそういう出会いもある店なんだ」

そんなお店に見えないし、島崎さんが聞いたら本当に怒りそうだ。

「もちろん、みんな出会いが欲しくて、島崎さんのお店に行くわけじゃない。スーツがいいから買いに行くんだ。出会いを求めるなら、もっと安くて、効率のいい店がある」

それはそうだ。出会いを求めて数万円も払うなら、涼さんとカケルが会ったお店に行った方がいい。
だけど、今後、島崎さんのお店で会う男性を同類かも、と考えてしまう。


「俺は涼さんに連れて行かれたわけじゃなくて、でも、涼さんは俺が島崎さんの店を使ってるのを知ってる。そんな店に翔を連れてくるなんて、更に酷い男だと思った」

可愛さ余って憎さ百倍、まさにそんな表情で顔を歪める。

カケルに会った時の彼の態度は褒められないけど、仕方がないと理解する。
立場が逆なら、俺だって俺に対して良い気持ちはしない。まして、未だに涼さんのことを良く思っていれば。

「悪かったよ」

俺は素直に謝り頭を下げる。

顔を上げると、カケルは驚いたように眉を跳ね上げていた。

「何それ、同情?」

「カケルのことを同情するほど、俺は上のステージにいるわけでない。むしろ、俺の方が下のステージにいるって気がするし」

涼さんと兄さん、そして俺のことをカケルは言えない、言いたくない。

真実を知ればカケルは涼さんを取り戻しにくるかもしれない。

卑怯なのはわかってるけど、涼さんを手放したくない。だから、本当のことは話したくない。

「変な奴」

また怒ると思っていたカケルは、拍子抜けするほど呑気な声で言う。

「謝るより、今度は翔と涼さんとの仲を聞かせてよ」

「俺と涼さんは」

狡いけど、俺は言葉を選んで話し始めた。
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