26 / 54
第4章
アドバイスという名の(5)
しおりを挟む
そう考えながらも、そうではないと否定する気持ちも出てくる。
「カケルが上手くいっていると思っていただけで、涼さんの気持ちは違かったとか?」
「そう、なのかも」
カケルは歯切れ悪く言葉を返す。
きゅっと寄っていた眉と眉の間も広がってくる。
コロコロと表情を変えていく。
彼と初めて会った時よりも、ずっと素直なのかもしれないと感じる。
「心当たりがないんだ。だから、俺は涼さんと別れた後に、何が悪かったのかなって悩んだよ。こんなに悩まされるくらいなら、はっきりと悪いところをいって欲しい。次の誰かと付き合った時にも同じことしてしまうかもって不安になる」
カケルって、すごい。
もう恋が出来ない、と言い出すのではなく、次の恋のことを心配するんだから。
「だから、1年ぶりに再開した時、更にカッコよくなってる涼さんを見て、色々な気持ちが湧いたよ」
2人が再開した時のカケルの言葉を思い出す。
『涼さんはそのままでも素敵でしたが、もっと素敵になりました』
この台詞でカケルの涼さんに対する思いを俺は感じ取った。
「別の男といるのを見て、殴ってやりたくもなったよ。俺がどんな気持ちでこの1年を過ごしたのか! お前はさっさと別の男と付き合ってたのか!?ってね」
別の男とは俺のことを言っているのだろう。
「でも、涼さん、更にカッコよくなってて、本当に別れたことが悔しくて悔しくて仕方がない気持ちもあった」
やはりまだ涼さんに気持ちがあるってことだろう。
もし、俺が涼さんを解放したら、カケルとよりを戻すのかな?
考えたそばから、全身がひりつくほど緊張する。
「しかも、連れの男が俺の遠く及ばないかっこいい男なら諦めがつくけど、なんかぼーっとした冴えない男といるから尚更さ」
カケルは目をすっと細めて、軽く俺を睨め付ける。
冴えない男とは酷い言われようだが、カケルと比べられたら、その評価は甘んじて受けなければならない。
「翔は島崎さんのお店に来たのは初めてで、涼さんに連れて来てもらった?」
「そうだけど」
話が変わった気がするが、俺は素直に答える。
カケルはこれ見よがしに深いため息をついた。
「さっき話した涼さんと出会ったお店の客の多くが、島崎さんの店でスーツを作ってるんだ。涼さんが俺の前に付き合った彼氏も、島崎さんのお店で会って、付き合いが始まったみたい。島崎さんに行ったら怒るけど、あの店はそういう出会いもある店なんだ」
そんなお店に見えないし、島崎さんが聞いたら本当に怒りそうだ。
「もちろん、みんな出会いが欲しくて、島崎さんのお店に行くわけじゃない。スーツがいいから買いに行くんだ。出会いを求めるなら、もっと安くて、効率のいい店がある」
それはそうだ。出会いを求めて数万円も払うなら、涼さんとカケルが会ったお店に行った方がいい。
だけど、今後、島崎さんのお店で会う男性を同類かも、と考えてしまう。
「俺は涼さんに連れて行かれたわけじゃなくて、でも、涼さんは俺が島崎さんの店を使ってるのを知ってる。そんな店に翔を連れてくるなんて、更に酷い男だと思った」
可愛さ余って憎さ百倍、まさにそんな表情で顔を歪める。
カケルに会った時の彼の態度は褒められないけど、仕方がないと理解する。
立場が逆なら、俺だって俺に対して良い気持ちはしない。まして、未だに涼さんのことを良く思っていれば。
「悪かったよ」
俺は素直に謝り頭を下げる。
顔を上げると、カケルは驚いたように眉を跳ね上げていた。
「何それ、同情?」
「カケルのことを同情するほど、俺は上のステージにいるわけでない。むしろ、俺の方が下のステージにいるって気がするし」
涼さんと兄さん、そして俺のことをカケルは言えない、言いたくない。
真実を知ればカケルは涼さんを取り戻しにくるかもしれない。
卑怯なのはわかってるけど、涼さんを手放したくない。だから、本当のことは話したくない。
「変な奴」
また怒ると思っていたカケルは、拍子抜けするほど呑気な声で言う。
「謝るより、今度は翔と涼さんとの仲を聞かせてよ」
「俺と涼さんは」
狡いけど、俺は言葉を選んで話し始めた。
「カケルが上手くいっていると思っていただけで、涼さんの気持ちは違かったとか?」
「そう、なのかも」
カケルは歯切れ悪く言葉を返す。
きゅっと寄っていた眉と眉の間も広がってくる。
コロコロと表情を変えていく。
彼と初めて会った時よりも、ずっと素直なのかもしれないと感じる。
「心当たりがないんだ。だから、俺は涼さんと別れた後に、何が悪かったのかなって悩んだよ。こんなに悩まされるくらいなら、はっきりと悪いところをいって欲しい。次の誰かと付き合った時にも同じことしてしまうかもって不安になる」
カケルって、すごい。
もう恋が出来ない、と言い出すのではなく、次の恋のことを心配するんだから。
「だから、1年ぶりに再開した時、更にカッコよくなってる涼さんを見て、色々な気持ちが湧いたよ」
2人が再開した時のカケルの言葉を思い出す。
『涼さんはそのままでも素敵でしたが、もっと素敵になりました』
この台詞でカケルの涼さんに対する思いを俺は感じ取った。
「別の男といるのを見て、殴ってやりたくもなったよ。俺がどんな気持ちでこの1年を過ごしたのか! お前はさっさと別の男と付き合ってたのか!?ってね」
別の男とは俺のことを言っているのだろう。
「でも、涼さん、更にカッコよくなってて、本当に別れたことが悔しくて悔しくて仕方がない気持ちもあった」
やはりまだ涼さんに気持ちがあるってことだろう。
もし、俺が涼さんを解放したら、カケルとよりを戻すのかな?
考えたそばから、全身がひりつくほど緊張する。
「しかも、連れの男が俺の遠く及ばないかっこいい男なら諦めがつくけど、なんかぼーっとした冴えない男といるから尚更さ」
カケルは目をすっと細めて、軽く俺を睨め付ける。
冴えない男とは酷い言われようだが、カケルと比べられたら、その評価は甘んじて受けなければならない。
「翔は島崎さんのお店に来たのは初めてで、涼さんに連れて来てもらった?」
「そうだけど」
話が変わった気がするが、俺は素直に答える。
カケルはこれ見よがしに深いため息をついた。
「さっき話した涼さんと出会ったお店の客の多くが、島崎さんの店でスーツを作ってるんだ。涼さんが俺の前に付き合った彼氏も、島崎さんのお店で会って、付き合いが始まったみたい。島崎さんに行ったら怒るけど、あの店はそういう出会いもある店なんだ」
そんなお店に見えないし、島崎さんが聞いたら本当に怒りそうだ。
「もちろん、みんな出会いが欲しくて、島崎さんのお店に行くわけじゃない。スーツがいいから買いに行くんだ。出会いを求めるなら、もっと安くて、効率のいい店がある」
それはそうだ。出会いを求めて数万円も払うなら、涼さんとカケルが会ったお店に行った方がいい。
だけど、今後、島崎さんのお店で会う男性を同類かも、と考えてしまう。
「俺は涼さんに連れて行かれたわけじゃなくて、でも、涼さんは俺が島崎さんの店を使ってるのを知ってる。そんな店に翔を連れてくるなんて、更に酷い男だと思った」
可愛さ余って憎さ百倍、まさにそんな表情で顔を歪める。
カケルに会った時の彼の態度は褒められないけど、仕方がないと理解する。
立場が逆なら、俺だって俺に対して良い気持ちはしない。まして、未だに涼さんのことを良く思っていれば。
「悪かったよ」
俺は素直に謝り頭を下げる。
顔を上げると、カケルは驚いたように眉を跳ね上げていた。
「何それ、同情?」
「カケルのことを同情するほど、俺は上のステージにいるわけでない。むしろ、俺の方が下のステージにいるって気がするし」
涼さんと兄さん、そして俺のことをカケルは言えない、言いたくない。
真実を知ればカケルは涼さんを取り戻しにくるかもしれない。
卑怯なのはわかってるけど、涼さんを手放したくない。だから、本当のことは話したくない。
「変な奴」
また怒ると思っていたカケルは、拍子抜けするほど呑気な声で言う。
「謝るより、今度は翔と涼さんとの仲を聞かせてよ」
「俺と涼さんは」
狡いけど、俺は言葉を選んで話し始めた。
0
あなたにおすすめの小説
ヒーロー組織のサポートメンバーになりました!
はちのす
BL
朝起きたら、街はゾンビだらけ!生き残りたい俺は、敵に立ち向かうヒーロー組織<ビジランテ>に出逢った。
********
癖の強いヒーロー達の"心と胃の拠り所"になるストーリー!
※ちょっとイチャつきます。
氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された
楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。
何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。
記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。
----------
※注)
かっこいい攻はいません。
タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意!
貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。
ハッピーエンドです。
激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします!
全16話 完結済み/現在毎日更新予定
他サイトにも同作品を投稿しています。
様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。
初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*本編完結しました
イケメンに惚れられた俺の話
モブです(病み期)
BL
歌うことが好きな俺三嶋裕人(みしまゆうと)は、匿名動画投稿サイトでユートとして活躍していた。
こんな俺を芸能事務所のお偉いさんがみつけてくれて俺はさらに活動の幅がひろがった。
そんなある日、最近人気の歌い手である大斗(だいと)とユニットを組んでみないかと社長に言われる。
どんなやつかと思い、会ってみると……
分厚いメガネ令息の非日常
餅粉
BL
「こいつは俺の女だ。手を出したらどうなるかわかるよな」
「シノ様……素敵!」
おかしい。おかしすぎる!恥ずかしくないのか?高位貴族が平民の女学生に俺の女ってしかもお前は婚約者いるだろうが!!
その女学生の周りにはお慕いしているであろう貴族数名が立っていた。
「ジュリーが一番素敵だよ」
「そうだよ!ジュリーが一番可愛いし美人だし素敵だよ!!」
「……うん。ジュリーの方が…素敵」
ほんと何この状況、怖い!怖いすぎるぞ!あと妙にキモい
「先輩、私もおかしいと思います」
「だよな!」
これは真面目に学生生活を送ろうとする俺の日常のお話
※長くなりそうでしたら長編へ変更します。
転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。
星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。
前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。
だが図書室の記録が冤罪を覆す。
そしてレイは知る。
聖女ディーンの本当の名はアキラ。
同じ日本から来た存在だった。
帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。
秘密を共有した二人は、友達になる。
人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。
運命よりも先に、愛してしまった
AzureHaru
BL
幼馴染で番同士の受けと攻め。2人は運命の番ではなかったが、相思相愛だった。そんな時、攻めに運命の番が現れる。それを知った受けは身籠もっていたが、運命の番同士の子供の方が優秀な者が生まれることも知っており、身を引く事を決め姿を消す。
しかし、攻めと運命の番の相手にはそれぞれに別の愛する人がいる事をしり、
2人は運命の番としてではなく、友人として付き合っていけたらと話し合ってわかれた。
その後、攻めは受けが勘違いしていなくなってしまったことを両親達から聞かされるのであった。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる