で、手を繋ごう

めいふうかん

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第4章

アドバイスという名の(9)

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俺がパンケーキの4分の3ほど食べ終えた頃、カケルの視線を感じた。

ちらちらと俺の方を見て、また何か言いたげである。

「何か言いたいことがあるの?」

このまま気付かない振りは気持ちが悪いので、俺は思い切って聞いた。

「パンケーキ、一口食べたい」

急に甘えたように上目遣いで俺を見る。
変化球過ぎる回答に俺は吹き出してしまう。

「なんだよ、そのアホみたいな発言」

俺は突き放すように言って、予備のナイフとフォークが入った箱に手を伸ばす。
未使用の物を使い、口をつけていない部分を切り分ける。そして、切り分けた部分にタップリとメープルをかけて、フォークでぶっ刺した。

「ほらっ」

そう言うと「サンキュ」と顔を綻ばせて、フォークに手を伸ばす。

そして、大きな口を開けてパクリとパンケーキを口に入れた。豪快な一口だ。

「あっふぁたくない」

口に頬ばりながら、不機嫌に顔を顰める。

たぶん、温かくないといいたいのだろう。

人に分けてもらってるのに、不満を言う奴がいるかよ。

呆れながら、残りのパンケーキを食べ始める。

「冷たくても、やはり美味しいわ、ここのパンケーキ。俺も注文しちゃおうかな」

「看板メニューの1つだから」

「涼さんも好きだよね、ここのパンケーキ」

俺はナイフを動かす手を止めた。

「そうなの?」

聞き返す俺の顔をカケルはじっと見つめる。

「古い付き合いでも、涼さんのことはあまり知らないんだね」

「そうかも。カケルの方が知ってることが多いよ、きっと」

「ホント、そういうところは素直だね」

「そうかな?」

と俺は曖昧に返事をするだけたった。
俺は素直でもないし、可愛げもない。

「俺が知ってる涼さんのこと、教えてあげようか」

『別にいいよ』

そう答えるべきだとわかっていた。
だが、口からその言葉は出ない。

「他にもアドバイスできる。例えば」

カケルは言葉を区切る。
思わず『例えば何?』と身を乗り出して食いつきそうになるのを堪えた。

反対にカケルがテーブルに身を乗り出して、長く、女性のように節が目立たない人差し指が俺の方に伸びる。

「この眉尻、ほんの少し」

そういって、左眉をカケルの指がすっと走る。

「ここを抜くか剃って整えたらカッコよくなる。今より、ずっと」

カケルの指が眉を離れても、そこにだけ神経が集中する。
俺は気になって、自分でそこを触った。

「そうそこ」

カケルはにっこりと微笑んで頷く。
悔しいが、こいつの微笑みは人を惹きつける。

眉毛なんて月一で髪を切りに行った時、理容師さんに切ってもらうだけで、きちんと整えたことない。

「俺なら、翔のこともう少しカッコよくできるよ」

いいんだよ、俺は今のままで。

そんな風に言えるわけがない。
カケルみたいな見た目の男が涼さんの元恋人だとわかったら、尚更だ。

「カケルはどんな見返りが欲しいの? 俺に涼さんと会うセッティングをして欲しいなら断るよ」

ギブアンドテイク。
ギブだけなんてこと、あるわけない。

俺が与えるものが「涼さん」なら、それは絶対に嫌だ。

「また、こうして会って話をきいて欲しい」

カケルが投げる球は、変化球ばかりだ。
俺にはまともに打ち返せない。

「俺に話を聞かせてどうするの? 何の答えも持ってないって、今日だけでもわからなかった?」

「翔は答えを持ってるよ。それに自分では気付かないだけさ。俺にはきちんと答えが見えた」

「なんだよ、そのなぞなぞみたいなのは」

「俺、なぞなぞ得意」

カケルは無意味に得意げに鼻の穴を広げる。

さて、どうしよう。
またカケルに会うのは嫌なわけではない。

だが、カケルに会ってることを涼さんに知られたくはない。

でも、でも、涼さんに知られることなく会うことはできる。

涼さんのことをもっと知ることが出来て、おまけに少しでも俺の見た目が改善したら、これから先もずっと涼さんと一緒にいられるかもしれない。

それなら・・・。

「とりあえず、連絡先を交換しよう。連絡が来た時、俺が会いたいと思っていたら会いに行く。それじゃ、ダメかな?」

「それでいいよ」

俺はスマートフォンを手にしながら、連絡が来たら今みたいにズルズルと会いに行くだろうと予言できた。
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