で、手を繋ごう

めいふうかん

文字の大きさ
50 / 54
第8章

一枚の(2)

しおりを挟む
三国志というゲームは、プレイしたい君主や武将を選択し、そのキャラでゲームを進めていく。

開拓や都市の発展、そして戦さをして、国を広め、中国全土統一を目指す。

ゲームは月単位で進み、領土の広さでできるコマンド数が増減する。

そして、三国志は恐ろしいゲームなのだ。
俺は腕時計にふと見て、そのことを思い出した。

「りょ、涼さん。もう10時ですよ」

「マ、マジか」

涼さんは壁にかかった時計を確認する。

「やっぱり、三国志は時間泥棒だわー」

「本当ですね。この年で、4時間近く集中してゲームができるなんて思ってもなかったです」

「でも、時間を知った途端に疲れたのを感じる。やっぱり、若い頃とは違うわ」

「それは、俺に勝ちたいが為、徹夜した疲れが出てきたんじゃないですか?」

わざと意地悪をいうと「まだ、それ言う? しかも、俺の方が戦況不利な状況なのに」と唇を尖らせる。


「一旦、休憩にしましょう」

「だね、目も疲れた」

ゲームの電源はそのまま、テレビだけを消す。

「しょーちゃん、アイス買ってたよね。食べる?」

「食べます。2つ買ったから、涼さん、1つ食べません?」

「もらっていいの?」

「もちろんです」

「んじゃ、食べる」

涼さんはソファから立ち上がり、大きな冷蔵庫に向かう。一人暮らしにしては大きな冷蔵庫だ。


「しょーちゃんはどっち食べるの?」

ローテーブルの上にカップのアイス2つと銀のスプーンが置かれる。フレーバーは、モカコーヒーとストロベリー。

「俺、どっちとも好きだから、涼さん選んでいいですよ」

「このフレーバーの組み合わせ、先輩と同じじゃん。高校の時、アイスクリーム買うと、必ずこのダブルにしてた」

そんな昔のこと、よく覚えてる。
やはり涼さんの中で兄さんのことは、先輩後輩だけじゃないのか。

考えない方がいいと思い、思考を停止させる。

「うちの家では、この組み合わせが定番なんですよ。父がストロベリー、母がモカコーヒーが好きで、この2つの大きなカップか冷凍庫に常にありました」

「へー、俺は特定のフレーバーってないな」

「それじゃ、今日はどちらの気分ですか?」

「お父さんのストロベリーかな」

「じゃ、俺は母のモカコーヒー、って、なんか嫌です、そのフレーズ」

笑いながら、それぞれのアイスに手を伸ばす。蓋を外して、アイスにスプーンを差し込む。

一口含むと、コーヒーの香りと甘味が広がる。
あー、これが口福ってやつね。

涼さんも一口食べて「美味しいな」と漏らす。
二人ソファに並んで、まったりとアイスタイムを楽しむ。


「ねぇ、しょーちゃん、今日なんだか髪が綺麗じゃない?」

「えっ、そうですか?」

「うん、なんか、いつもよりサラッとしてる。シャンプー、変えた?」

あ、それは、きっとカケルの高級そうなシャンプーとリンスのお陰。

「自分のシャンプーがなくなって、母さんの高そうなシャンプー使ったんですよ」

咄嗟に嘘をつく。
本当のことなんて言えない。

「へー、モカコーヒー母は、美意識高いね」

「そんなことないですよ。友達からのプレゼントです。臨時シャンプーです」

うちの母さん、全然美意識なんて高くない。
涼さんの母さん、スーパーで会ってるんだよな。
美意識高い見た目じゃないし。
バレてないだろうけど、下手な嘘ついたー。

「何、その臨時シャンプーって。初めて聞く言葉」

「俺も初めて口にしました」

涼さんは大声で笑ったけど、俺は内心どきどきしていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヒーロー組織のサポートメンバーになりました!

はちのす
BL
朝起きたら、街はゾンビだらけ!生き残りたい俺は、敵に立ち向かうヒーロー組織<ビジランテ>に出逢った。 ******** 癖の強いヒーロー達の"心と胃の拠り所"になるストーリー! ※ちょっとイチャつきます。

氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された

楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。 何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。 記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。 ---------- ※注) かっこいい攻はいません。 タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意! 貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。 ハッピーエンドです。 激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします! 全16話 完結済み/現在毎日更新予定 他サイトにも同作品を投稿しています。 様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。 初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

イケメンに惚れられた俺の話

モブです(病み期)
BL
歌うことが好きな俺三嶋裕人(みしまゆうと)は、匿名動画投稿サイトでユートとして活躍していた。 こんな俺を芸能事務所のお偉いさんがみつけてくれて俺はさらに活動の幅がひろがった。 そんなある日、最近人気の歌い手である大斗(だいと)とユニットを組んでみないかと社長に言われる。 どんなやつかと思い、会ってみると……

分厚いメガネ令息の非日常

餅粉
BL
「こいつは俺の女だ。手を出したらどうなるかわかるよな」 「シノ様……素敵!」 おかしい。おかしすぎる!恥ずかしくないのか?高位貴族が平民の女学生に俺の女ってしかもお前は婚約者いるだろうが!! その女学生の周りにはお慕いしているであろう貴族数名が立っていた。 「ジュリーが一番素敵だよ」 「そうだよ!ジュリーが一番可愛いし美人だし素敵だよ!!」 「……うん。ジュリーの方が…素敵」 ほんと何この状況、怖い!怖いすぎるぞ!あと妙にキモい 「先輩、私もおかしいと思います」 「だよな!」 これは真面目に学生生活を送ろうとする俺の日常のお話 ※長くなりそうでしたら長編へ変更します。

転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。

星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。 前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。 だが図書室の記録が冤罪を覆す。 そしてレイは知る。 聖女ディーンの本当の名はアキラ。 同じ日本から来た存在だった。 帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。 秘密を共有した二人は、友達になる。 人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。

運命よりも先に、愛してしまった

AzureHaru
BL
幼馴染で番同士の受けと攻め。2人は運命の番ではなかったが、相思相愛だった。そんな時、攻めに運命の番が現れる。それを知った受けは身籠もっていたが、運命の番同士の子供の方が優秀な者が生まれることも知っており、身を引く事を決め姿を消す。 しかし、攻めと運命の番の相手にはそれぞれに別の愛する人がいる事をしり、 2人は運命の番としてではなく、友人として付き合っていけたらと話し合ってわかれた。 その後、攻めは受けが勘違いしていなくなってしまったことを両親達から聞かされるのであった。

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

処理中です...