で、手を繋ごう

めいふうかん

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第8章

一枚の (1)

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「何ですか、この可愛い楊枝に刺さった食べ物たちは」

俺はお皿をまじまじと見つめた。

涼さんのマンション。大きなテレビのあるリビングで、俺は四角い大皿を見下ろしていた。

生ハムやサーモンをくるっと巻いて、それを色鮮やかな楊枝で1つ1つ刺して、抜けないように小さなキュウリで止めている。他にもプチトマトにモッツァレアチーズ、ブロッコリーとベーコン、キッシュがあった。

「ピンチョスだよ」

ピンチョス。その名前は耳にしたことがあった。

「涼さん、作ったんですか?」

「まさか。俺、こんなちまちました作業は無理。よく行くのスペインバルで作ってもらった」

ピンチョス。
よく行くスペインパル。

「涼さん、いちいちワードがかっこいいわ。ピンチョスなんて、俺にそんなもてなしの発想はない」

俺は力説するが、涼さんはきょとんとする。だから、俺は説明を追加する。


「ピンチョスなんて単語、自発的には出ません。もし、涼さんにピンチョスを作って欲しいって言われたら、ちくわの穴にキュウリかプロセスの中チーズ入れたやつに楊枝さすぐらいですよ」


「美味しいからいいじゃん。しょーちゃんの前だからかっこつけたいんだけど、俺も似たようなものだって。吉牛好きだし、一人なら面倒でカップ麺を食べるし」


「カップ麺、青ものとか入れて食べたりしません? しかも、カップの麺なのに、わざわざどんぶりに移したりして」

そんな人をネットの記事で見たことがあり、俺とは住む世界が違う人だと思った記憶がある。

「カップ麺なんて何もしたくない時に食べるのに、そんなこと面倒なことしないって」

「でも、俺とは何か違うカップ麺な気がする! きっとお洒落要素がありそう」

「ないってば」

涼さんは顔をくしゃっとさせて笑う。
相変わらず、素敵な笑顔だが、顔色が少し悪く感じた。


「・・涼さん、何か疲れてません?」


「あ、疲れてるというか、昨日、あまり寝てないんだ」


「そうなんですか? だったら、今日は延期しても良かったのに」


「いやいや。実は」

珍しく涼さんは歯切れ悪く話し出す。俺はじっと黙って言葉を待つ。

「三国志のゲーム、最新のバージョンでやろうと思って買ったんだけど、まだ封を開けてなかったんだ。チュートリアルだけでも試しにって思ったら」

なぜか、そこで視線を逸らして、モニョモニョとなる。

「気付いたら朝だった」

「・・・若者かっ」

俺は思わず突っ込んでいた。

「若者じゃないから、こうして疲れが出てるんじゃないか」

涼さんは照れ臭そうに頭をかいて、そっぽを向く。その仕草が可愛い。

「もしかして、そのチュートリアル始めたのって、俺との戦いに負けたくなくて、こっそり練習したとか?」

「うっ」

適当に言ってからかったのに、涼さんは物の見事に言葉に詰まった。

「そんなんじゃなくて、やり方を教えた方がいいかなって」

「どうかなー、この手のゲームって最初が肝心ですからね。一歩先を行ってるのって、かなり有利ですよ」

「そんの意図はないって」

慌てる涼さんが可愛くて、俺の中にあるSっ気がむくむくと湧き上がるのだった。
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