で、手を繋ごう

めいふうかん

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第8章

一枚の(6)

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涼さんは本をめくりながら「あー、あの話か」と声を弾ませた。

「正直、この話は俺的にはあんまりだから、オススメじゃないんだよなー」

少し困ったように眉根を寄せた顔を俺に向けた。

「別の本にした方がいいかも」

でも、今更、鞄に入れた本を返すわけにはいかない。写真を返すわけにはいかない。

「いや、タイトルに惹かれたので取り敢えず読みたいです」

「そう?」

なぜか涼さんは申し訳なさそうな顔で答える。

俺はどんな表情をしてるのだろう。あえて、口端を上げてみる。

「無職なので時間はたくさんあるんで、チャレンジしてみます」

頭の中と口から出る言葉は全く違う。自分がこんなに器用な人間とは思わなかった。

「途中で読むのやめてもいいからね。そしたら、また別の持っていって」

「そんなに気を使わないでください」

言ってから自分の言葉が、強くなっていたことに気付いた。涼さんの顔が少しだけ強張るが、すぐに消える。

「俺、先入観なしに本を読みたい派なんでよ。それに涼さん、まるで自分が書いた本みたいに恐縮してますよ」

俺は揶揄うように笑ってみせる。涼さんの顔も一緒に柔らぐ。

「本当、俺、自分の作品みたいに話してたわ。でも、先輩もそネタバレみたいなの、すっごく怒ったりしてたわ。さすが兄弟。似てるね」


「そう、かな?」

少しでも似てるところがあれば、俺のこと受け入れてやすいですか?

そんなことが頭に浮かんでしまう。嫌だ、嫌だ。

「涼さん、やっぱり俺にもハイボール作ってもらっていいですか?」

急な話の展開に、一瞬だけ涼さんは止まってしまうが、すぐに目尻に皺を寄せる。

「何? 翔ちゃんも酔拳使う気になった?」

「はい。飲まないと負ける気がして」

「わかった。それじゃ、濃いめに作るよ」

「いやいや、俺を酔わせて勝とうって気ですか?」

「それも戦略ですな」

「正々堂々といきましょうよ」

せめて、ゲームぐらいは。
そんな言葉を俺は飲み込んで、ずっと笑っていた。
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