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事情聴取
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「君は…」
「ありがとうございます、すみません!ちょっと俺、戻らないと…」
体を起こして離れると、時計塔の上でまた男がこちらを狙っていた。
今投げられるのは何もない、石を投げてまた時間を稼ぐか。
石を振り上げようとしたが、黒髪の青年に手を掴まれて止められた。
銃の発砲音が聞こえて、周りの人達がパニックになってその場から逃げていた。
いつの間にか黒髪の青年が剣を抜いて、俺の前に立っていた。
もしかして、一瞬で判断して銃弾を斬りつけたのか。
青年はまっすぐ時計塔を見つめて、目を細めていた。
手のひらから火を出現させて、時計塔の窓に放った。
その瞬間、時計塔から短い悲鳴のようなものが聞こえた。
黒髪の青年が時計塔に向かうと、後に続くように他の騎士達が走っていった。
良かった、これであの黒ずくめの人は捕まるよな。
ホッと胸を撫で下ろしていたら、隣から「大丈夫?」という声が聞こえた。
高過ぎず低過ぎない声の方を見ると、糸目の青年が笑みを浮かべていた。
似たような容姿と雰囲気の青年は見覚えがあった。
他の騎士とは違い、普通の私服を着ているから騎士ではなさそうだ。
「大丈夫です、受け止めてもらったから怪我はありません」
「そう、ルイス様も上から落ちてくる人を受け止めるなんて無茶をする、風を操ればいいのに」
そう言った糸目の青年は呆れたようにため息を吐いていた。
ジッと見つめていたら、首を傾げた糸目の青年と目が合った。
今度は俺が笑って誤魔化した。
やっぱりあの黒髪の青年はルイス・アイズだ。
漫画でベアトリスと恋に落ちるメイン中のメインキャラクター。
そして、俺の横にいる糸目の青年はルイスの側にいる純血種の一族の当主、ライだ。
実際はベアトリスが純血種だから、ライは純血種ではない。
周りの大人達に純血種に仕立て上げられた可哀想な人だ。
彼もいろいろ抱え込んで複雑な家庭環境だった事は覚えている。
でも、まさか名無しの俺が重要キャラクター2人に会うとは思わなかった。
俺は漫画では姿も名前もないキャラクターだったけど、家を出たとはいえ一応悪役一族の三男なんだよな。
あまりここに長居するべきではない事は分かる。
立ち上がって、その場から離れようと思った。
「じゃあ俺はこれで…」
「え、でも…」
「君は、事情聴取があるからまだ返すわけにはいかない」
後ろから肩を掴まれて、ルイスの声が聞こえた。
あの場にいたのは俺だけだから、事情を聞くのは当たり前か。
ここで逃げたら仲間だと思われるだけだ、事情聴取くらいは応じないといけない。
後ろを振り返ってルイスに頷くと、ジッと俺の顔を見つめていた。
なにか俺の顔に付いているのかと顔を触ってみたが、何もない。
隣にいるライまで不思議そうにルイスを見ていた。
それは短い時間だったのか、ルイスはすぐに俺の横を通り過ぎて歩いていた。
近くに金髪の女性がいて、他の騎士と一緒に歩いていった。
彼女はアリス様と言われていたから、漫画に出てきたお姫様で間違いない。
見た目は少女漫画のヒロインのように可愛らしい容姿だが、ベアトリスのライバルキャラクターだ。
見た目からは想像出来ないほどの事をベアトリスにして陥れようとしていた。
肩書きはベアトリスが悪役一族の令嬢だが、真の悪役はお姫様だったと漫画を読んでいて驚いた。
ルイスの事が好きなんだよな、ベアトリスの受難はアクトリス家以外にもある。
俺は関わりないし、余計な事をしない方がいいのは分かっているが、兄として心配だ。
城の前に到着して、ルイスはライの方を見た。
「ライ、アリス様を任せた」
「アリス様は他の騎士に任せればいいのでは?」
「お前を信用しているからそう言っているんだ」
ルイスがそう言うと、ライはそれ以上なにかを言う事はなかった。
スキップしそうなほど嬉しそうにして、アリス様のところに向かった。
漫画でのルイスってそんなにライを信用していただろうか。
不思議に思い、ルイスの方を見上げて驚いた。
ルイスは信用しているとは思えないほど険しい顔をしていた。
あまり表情が変わらないのに、なにかあったのか?
ルイスとライの関係って、漫画では付かず離れずのほどよい関係だったと思っていたけど実際は違うのか?
それは一瞬の事ですぐに表情を無に変えて、俺の方を見た。
「こちらに…」
「あ、はい」
ルイスの案内で城の横にある兵舎に向かった。
他の騎士の人達にジロジロ見られていて、居心地が悪い。
事情聴取を受ける身だから当然と言われたら当然だけど。
ルイスもかなり目立つから、俺は周りからどう見られているんだろう。
捕まっている人に見えるのかもしれないと思うと、頭が自然と下がる。
個室に案内されて、まるでドラマの取調室のような雰囲気がある場所だった。
椅子を引いて俺を先に座らせて、向かい側にルイスが座った。
俺の言う事をメモするために、テーブルに置かれた紙とペンを手にした。
「名前と年齢を教えてくれ」
「イルト・アクトリス、今日で20歳です」
ベアトリスの兄弟が事情聴取されてるなんて知ったら嫌だろうから、アクトリス家というのは隠したかった。
でも、今は隠すと余計に怪しまれるから素直に答えた。
まだアクトリス家が悪さをしているのを騎士団は知らないから、名前も貴族という事しか知らないはずだ。
一瞬ルイスの手が止まり、冷や汗が流れたが何事もなく事情聴取は続いた。
俺が時計塔から落ちた理由を聞かれて、包み隠さず話した。
後ろめたい事はしていないから、隠す事もしていない。
ルイスはメモをしている紙から顔を上げた。
俺をただまっすぐ見るルイスの瞳は、全て見透かされそうな気持ちになった。
「時計塔にいた男は、君を共犯者だと言っていた」
「は……共犯なんてしていない!」
「報酬の取り分で争っていたと…」
ありえない事を言われて、机に身を乗り出して否定した。
共犯どころか今さっき会ったばかりだし、あそこにいたのは偶然でしかない。
俺が声を荒げていても、ルイスは冷静だった。
どうすれば信じてくれるんだ?初対面の証拠なんてあるはずがない。
なんでそんな事を言うんだ、俺も道連れにするためか?
「ありがとうございます、すみません!ちょっと俺、戻らないと…」
体を起こして離れると、時計塔の上でまた男がこちらを狙っていた。
今投げられるのは何もない、石を投げてまた時間を稼ぐか。
石を振り上げようとしたが、黒髪の青年に手を掴まれて止められた。
銃の発砲音が聞こえて、周りの人達がパニックになってその場から逃げていた。
いつの間にか黒髪の青年が剣を抜いて、俺の前に立っていた。
もしかして、一瞬で判断して銃弾を斬りつけたのか。
青年はまっすぐ時計塔を見つめて、目を細めていた。
手のひらから火を出現させて、時計塔の窓に放った。
その瞬間、時計塔から短い悲鳴のようなものが聞こえた。
黒髪の青年が時計塔に向かうと、後に続くように他の騎士達が走っていった。
良かった、これであの黒ずくめの人は捕まるよな。
ホッと胸を撫で下ろしていたら、隣から「大丈夫?」という声が聞こえた。
高過ぎず低過ぎない声の方を見ると、糸目の青年が笑みを浮かべていた。
似たような容姿と雰囲気の青年は見覚えがあった。
他の騎士とは違い、普通の私服を着ているから騎士ではなさそうだ。
「大丈夫です、受け止めてもらったから怪我はありません」
「そう、ルイス様も上から落ちてくる人を受け止めるなんて無茶をする、風を操ればいいのに」
そう言った糸目の青年は呆れたようにため息を吐いていた。
ジッと見つめていたら、首を傾げた糸目の青年と目が合った。
今度は俺が笑って誤魔化した。
やっぱりあの黒髪の青年はルイス・アイズだ。
漫画でベアトリスと恋に落ちるメイン中のメインキャラクター。
そして、俺の横にいる糸目の青年はルイスの側にいる純血種の一族の当主、ライだ。
実際はベアトリスが純血種だから、ライは純血種ではない。
周りの大人達に純血種に仕立て上げられた可哀想な人だ。
彼もいろいろ抱え込んで複雑な家庭環境だった事は覚えている。
でも、まさか名無しの俺が重要キャラクター2人に会うとは思わなかった。
俺は漫画では姿も名前もないキャラクターだったけど、家を出たとはいえ一応悪役一族の三男なんだよな。
あまりここに長居するべきではない事は分かる。
立ち上がって、その場から離れようと思った。
「じゃあ俺はこれで…」
「え、でも…」
「君は、事情聴取があるからまだ返すわけにはいかない」
後ろから肩を掴まれて、ルイスの声が聞こえた。
あの場にいたのは俺だけだから、事情を聞くのは当たり前か。
ここで逃げたら仲間だと思われるだけだ、事情聴取くらいは応じないといけない。
後ろを振り返ってルイスに頷くと、ジッと俺の顔を見つめていた。
なにか俺の顔に付いているのかと顔を触ってみたが、何もない。
隣にいるライまで不思議そうにルイスを見ていた。
それは短い時間だったのか、ルイスはすぐに俺の横を通り過ぎて歩いていた。
近くに金髪の女性がいて、他の騎士と一緒に歩いていった。
彼女はアリス様と言われていたから、漫画に出てきたお姫様で間違いない。
見た目は少女漫画のヒロインのように可愛らしい容姿だが、ベアトリスのライバルキャラクターだ。
見た目からは想像出来ないほどの事をベアトリスにして陥れようとしていた。
肩書きはベアトリスが悪役一族の令嬢だが、真の悪役はお姫様だったと漫画を読んでいて驚いた。
ルイスの事が好きなんだよな、ベアトリスの受難はアクトリス家以外にもある。
俺は関わりないし、余計な事をしない方がいいのは分かっているが、兄として心配だ。
城の前に到着して、ルイスはライの方を見た。
「ライ、アリス様を任せた」
「アリス様は他の騎士に任せればいいのでは?」
「お前を信用しているからそう言っているんだ」
ルイスがそう言うと、ライはそれ以上なにかを言う事はなかった。
スキップしそうなほど嬉しそうにして、アリス様のところに向かった。
漫画でのルイスってそんなにライを信用していただろうか。
不思議に思い、ルイスの方を見上げて驚いた。
ルイスは信用しているとは思えないほど険しい顔をしていた。
あまり表情が変わらないのに、なにかあったのか?
ルイスとライの関係って、漫画では付かず離れずのほどよい関係だったと思っていたけど実際は違うのか?
それは一瞬の事ですぐに表情を無に変えて、俺の方を見た。
「こちらに…」
「あ、はい」
ルイスの案内で城の横にある兵舎に向かった。
他の騎士の人達にジロジロ見られていて、居心地が悪い。
事情聴取を受ける身だから当然と言われたら当然だけど。
ルイスもかなり目立つから、俺は周りからどう見られているんだろう。
捕まっている人に見えるのかもしれないと思うと、頭が自然と下がる。
個室に案内されて、まるでドラマの取調室のような雰囲気がある場所だった。
椅子を引いて俺を先に座らせて、向かい側にルイスが座った。
俺の言う事をメモするために、テーブルに置かれた紙とペンを手にした。
「名前と年齢を教えてくれ」
「イルト・アクトリス、今日で20歳です」
ベアトリスの兄弟が事情聴取されてるなんて知ったら嫌だろうから、アクトリス家というのは隠したかった。
でも、今は隠すと余計に怪しまれるから素直に答えた。
まだアクトリス家が悪さをしているのを騎士団は知らないから、名前も貴族という事しか知らないはずだ。
一瞬ルイスの手が止まり、冷や汗が流れたが何事もなく事情聴取は続いた。
俺が時計塔から落ちた理由を聞かれて、包み隠さず話した。
後ろめたい事はしていないから、隠す事もしていない。
ルイスはメモをしている紙から顔を上げた。
俺をただまっすぐ見るルイスの瞳は、全て見透かされそうな気持ちになった。
「時計塔にいた男は、君を共犯者だと言っていた」
「は……共犯なんてしていない!」
「報酬の取り分で争っていたと…」
ありえない事を言われて、机に身を乗り出して否定した。
共犯どころか今さっき会ったばかりだし、あそこにいたのは偶然でしかない。
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