血染めの龍騎士と悪役名無し三男の少女漫画的転生物語

鮎焼き

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償い合い

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「俺サボってないです!すぐに戻ります!」

「そんなに慌てると余計に怪しいけど、今日は自分の部屋の掃除なんだから休暇みたいなものだよ」

カノンさんにやれやれといった感じでため息を吐かれた。
そうだった、部屋の掃除なのを忘れていた。

バケツをカノンさんから受け取り、バケツに水を汲んだ。

カノンさんは兵士の管理人であり、騎士でもあるから今は騎士の服を着ている。
普段はラフな格好をしているから、騎士の服を着て雰囲気も変わって見えた。

小柄で幼い顔をしているが、大人びて見える。
年齢だと、俺より全然大人ではあるんだけど。

カノンさんはグッと腕を伸ばして背伸びをした。

「ルイス様とそこまで関わりはないけど、あんなルイス様初めてみたなぁ」

「あんな?」

「あの人、ライ様と一緒にいても関心はなかったのに君の事は庇ってたんだよ」

俺が気絶したあの時、俺がルイスに危害を加えたように見える。
神の使者に龍人であるルイスになにかしたら、最悪死刑になる事もある。

ルイス自身に力があるから自分でどうにか出来るだろうが、気絶したのは俺がなにかしたと思われるのが自然だ。

でも、俺より先にルイスが起きて報告と同時に騎士達に説明していたそうだ。

「騎士には俺が説明しといたから心配しなくて大丈夫だから」と言った通り、俺のところに事情聴取には誰も来なかった。

ルイスの言葉ならと他の騎士は納得したそうだ。

「ルイス様にお話出来ませんか?」

「お忙しい方だからね、友人だと思ってたけど違うの?」

「俺はそう思ってるんですが…」

ルイスは今仕事で忙しそうだったけど、休憩時間もないのかな。

家に押しかけるのも迷惑になるよな。

兵舎にルイスが来る理由を聞いてもカノンさんは「滅多に来ないよ!」と笑っていた。
そうだよな、騎士団に用はあっても兵舎で暮らしていないから会うのも難しい。

俺のお見舞いに来たのもかなり珍しい行動だったみたいだ。

カノンさんは仕事に向かい、俺はバケツを持って運んだ。
少し歩くと、バケツを置いて休憩しながら進む。

ずっと医務室で貧血だったから、倒れる事はないが調子は戻っていない。
今日は時間が沢山ある、ゆっくり休みながら行こう。

ルイスにどう会いに行けばいいんだろう、やっぱり街を見回っている時に声を掛けるしかないか。

休みをもらった今くらいしか会いに行けない。
ある程度掃除が終わってから会いに行こう。

ちまちまバケツを移動させていると時間が掛かるな。

抱き上げて走れば、手ではなく腕に力が込めれば早く部屋に戻れるかもしれない。

バケツを持ち上げると、最初は重くて顔を歪ませたが立ち上がるといけそうな気がした。

「よし、これならいっ……!?」

重さがあまり感じられずにすっかり油断していた。

足のバランスが崩れて、後ろに体が反って受け身も出来ない。
また頭から水を被るのか、せっかく真ん中まで来たのに…

このままちまちま進んでいれば良かったなんて思っても今さらそう思っても遅い。

硬い地面の衝撃を和らげるために、目蓋をギュッと閉じた。

思ったより痛みがなく、水の冷たい感覚もない。
それにこのにおい、知っている安心感がある。

強張っていた体の力が抜けて、目蓋を開けた。

「きゅー…ちゃん?」

「病み上がりなんだから、無理するな」

バケツを片手で持ち上げて、もう片方の手で俺の体を支えていた。
俺の目の前にルイスがいて、心配そうにこちらを見ていた。

体を起こして、お礼を言ってバケツを受け取ろうと手を伸ばした。

しかし、ルイスは「俺が運ぶ」と言って先に歩いていった。
今、休憩なのかな…でもここまでしてもらうのは申し訳ない。

俺が何を言ってもルイスは「大丈夫だ」としか言わず、バケツを手放さない。
正直、ルイスと話したかったし…今の体力がない俺にとってはありがたい。

どこにバケツを運ぶか分からないだろうから、お言葉に甘えて部屋の場所を教えた。

「俺のためにいろいろ動いてくれてありがとう」

「当然の事をしただけだ、本人である俺が話した方が理解も早い」

「…そう、だよね」

「俺にはこれしか出来ない、償えたとは思ってないが」

「俺も償いたいのは同じだ!」

「…イルトが償う事は」

また同じ会話になってしまい、お互い引かないから解決しない。
だから、俺はお互いが納得する方法を思いついた。

俺とルイスが一緒に償えばいいんだって思う。
俺は償う必要がないと思うが、言い合っても先に進まない。

だったら、お互い気が済むまですればいいと考えた。

ルイスにそう言うと、少し考えて「分かった」と頷いてくれた。
兵舎に到着したら、騎士達が驚いて目を丸くしながらこちらを見ていた。

バケツを持たすのはやっぱりまずかったかな。
ルイスは全く気にした様子は無さそうだけど。

「き…ルイス様、もう大丈夫だから俺が…」

「償わせてくれるんだろ?」

「う…うん」

「誰にも何も言わせないから安心して」

荷物を持たされているのに、ご機嫌な様子で俺の部屋の中に入った。

滅多に兵舎に来ないとカノンが言っていたから、知らないのは当然だ。
呆然としながら部屋の光景を見つめていた。

少し歩くだけでガラスの音がするから、靴を脱ぐ事すら出来ない。
この世界のゴミ袋は布で出来ているから、ガラスを入れても簡単には破れない。
掃除道具と一緒に布袋が置かれていて、それを手にする。

今日中に綺麗には出来ないし、明日から仕事が再開される事を考えると数日後ではないと部屋には呼べないな。

ルイスは気にしなくても、やっぱりお客さんを呼べるくらい綺麗にしないと。

まず今日の目標は寝床の確保だ、休む場所がないとまた倒れてしまったらいろんな人に迷惑が掛かる。
あの家を出るって自分で決めたんだ、一人前になるためには自分の管理も大切だ。

「俺も手伝う」

「このくらい大丈夫だから、きゅーちゃんは休憩中でしょ?だから休んでて」

「分かった、なにかあったら街の見回りをしてるから呼んでくれ」

「分かった…あ、そうだ…きゅーちゃんって夕飯どうしてるの?」

ルイスが部屋を出て行こうとしたから、気になっている事があり呼び止めた。
重要な事ではないけど、もしルイスさえ良ければ今日一緒の夕飯とかどうかなと思った。

でも兵舎に滅多に来ないなら家で食べるのかもしれない。
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