悪役令嬢の長所はスタイルだけってあんまりですのよ!

神楽坂ゆい

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「……レナータ様!」

 

 昼休み、学園の中庭を歩いていたレナータのもとに、透き通る声が響いた。
 見れば、ふわりとした明るい髪を持つ公爵令嬢アメリア・ローゼンベルグが小走りでやって来る。いつも穏やかで柔らかな微笑みを浮かべる、いわゆる“ヒロイン”的存在の少女だ。

「アメリア様、こんにちは。どうかしました?」

 

 レナータは、噂によれば自分がいびっていると言われている相手と、こんな形で対峙することに少々戸惑いを覚える。

「いえ、その……お話しできたらと思って。いつもは遠くから見てばかりだったので」

 

 アメリアは、はにかむように微笑む。
 あまりに純粋無垢なその表情に、レナータは胸がチクリと痛む。自分がこの子を苛めているなんて、どこで誤解されたのだろうか。

「アメリア様と私の噂、聞いたことがあるでしょう? 私があなたに嫌がらせをしているって」

 

 レナータはあえてストレートに言ってみた。するとアメリアは驚いたように目を瞬かせ、それから首を横に振る。

「私、そんなこと一度も感じたことがなくて……。だから変だなって思ってたんです。もし私が困っていたら、レナータ様は黙っていない気がして」

 

 意外な返答に、レナータもマリアナも目を丸くする。
 アメリアが言うには、レナータはきっと正義感が強く、困っている人を見捨てられないタイプに見えるというのだ。

「そう……私のこと、そんなふうに見えていたの?」

 

 レナータは思わず苦笑する。実際には“悪役令嬢”のレッテルを貼られていて、そういう評価を得たことなどないからだ。

「私、レナータ様のことをもっと知りたいんです。……だって、ずっと話してみたかったから」

 

 アメリアの真っ直ぐな言葉は、どこまでも澄んだ瞳から零れ落ちる。レナータはその純粋さに息を呑んだ。

「それじゃ、少しだけお付き合いいただけるかしら。お茶を飲みながらお話しましょう」

 

 レナータはそう提案し、アメリアは嬉しそうに笑顔を見せる。
 まるで噂が存在しないかのように、二人は初めて互いを知るための一歩を踏み出した。

「お嬢様、よろしいのですか?」

 

 小声で心配するマリアナに、レナータは小さくうなずく。

「大丈夫よ。私もアメリア様がどんな子か知りたかったところだもの。……もしかしたら、私が変わるきっかけになるかもしれないし」

 

 そう言って微笑むレナータは、どこかほっとしたような表情をしていた。
 “悪役令嬢”と“ヒロイン”が直接対話することで、何かが変わり始める――レナータはそんな予感を覚えつつ、アメリアと並んで歩き始めたのだった。
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