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ビューティーコンテストを目前に控え、学園はお祭り騒ぎのような熱気に包まれていた。参加者はもちろん、観客として見に来る生徒や貴族たちも多数。さらに王太子ジルベールが審査員として出席するという情報が広まったことで、盛り上がりは頂点に達しつつある。
「いよいよ……当日が近づいてきたわね」
レナータは部屋でメイドのマリアナと最終調整を行っていた。ドレスの裾を確認し、ヘアメイクの試作をしてみる。少しの乱れも許されない、最後の追い込みだ。
「お嬢様、仕上がりはとても美しいと思います。絶対に自信を持ってステージに立ってください」
マリアナの励ましに、レナータは微笑んでうなずく。だがその直後、使用人の一人が部屋をノックし、慌てた口調で告げる。
「お嬢様、大変です。王家の使者が来られまして、殿下の婚約に関する正式な話し合いを、近日中に開くとのことです」
「正式な話し合い……? それって、まさか婚約破棄の方向に話が進んでいるとか?」
レナータの胸は嫌な予感でざわつく。盗難疑惑や悪役令嬢の噂が根強いなか、王家が動き出しても不思議はない。
「まだ詳しいことはわかりませんが、王太子殿下自身というより、周囲の貴族や宮廷が動いているようです。破棄を求める声が高まっているらしく……」
レナータは唇を噛んだ。ビューティーコンテストで自分の価値を示そうとしていたが、そもそもその舞台に立つ前に婚約そのものが危機に瀕しているのではないか。
「私は……どうすればいいの。コンテストで勝ちを狙えば、余計に反感を買うのかもしれないわ。王家がこの騒ぎを嫌がっているなら、私が無理を通す意味があるの?」
思わず弱音が漏れる。マリアナはそんなレナータの肩を力強くつかんだ。
「いいえ、ここで引き下がってはだめです。もし殿下の周囲が勝手に動いているのなら、なおさらお嬢様自身の姿を見せなければ。何が真実か、はっきりさせるためにも」
レナータはマリアナの瞳を見つめ返す。恐怖や不安が押し寄せてくるが、それでも“諦めたくない”という気持ちが燃え上がるのを感じた。
「そうね……私が逃げたら、結局また“悪役令嬢”扱いのまま。嫌われて婚約破棄されるなら、せめて正々堂々と自分を証明してからでも遅くないわ」
そして翌日、ジルベールから直接レナータのもとへ連絡が入る。できれば一度、二人で話をしたいと。レナータはコンテスト準備の合間に時間を作り、学園の一室で待った。
「レナータ……。王家の会合のこと、もう知っているんだな」
ドアを開けて現れたジルベールは、どこか焦燥のにじむ表情をしていた。レナータは肩を震わせながらも、王太子をまっすぐに見つめる。
「ええ、聞いたわ。周囲が婚約の破棄を進めているって。本当なの?」
彼の答えによっては、すべてが決裂してしまうかもしれない――そう思うと、レナータは胸が締め付けられる。しかしジルベールは深く息をついてから、はっきりと答えた。
「今はまだ“破棄を検討”という段階にすぎない。だが、もしおまえが逃げたりすれば、それが決定打になるだろう」
「だったら……私はどうすればいいの。コンテストに出る意味はあるの?」
レナータの問いに、ジルベールは一瞬視線を揺らした。しかし次の瞬間、決意に満ちた声で告げる。
「おまえは逃げるな。自分の信じる道を貫け。俺は、王太子としての立場をかけても、おまえを正しく評価するつもりだ」
その言葉は、レナータの心を強く震わせた。同時に、破滅フラグが現実のものとなりかけている状況が、否応なく二人を追い込む。それでも、彼女はもう止まるわけにはいかなかった。
「いよいよ……当日が近づいてきたわね」
レナータは部屋でメイドのマリアナと最終調整を行っていた。ドレスの裾を確認し、ヘアメイクの試作をしてみる。少しの乱れも許されない、最後の追い込みだ。
「お嬢様、仕上がりはとても美しいと思います。絶対に自信を持ってステージに立ってください」
マリアナの励ましに、レナータは微笑んでうなずく。だがその直後、使用人の一人が部屋をノックし、慌てた口調で告げる。
「お嬢様、大変です。王家の使者が来られまして、殿下の婚約に関する正式な話し合いを、近日中に開くとのことです」
「正式な話し合い……? それって、まさか婚約破棄の方向に話が進んでいるとか?」
レナータの胸は嫌な予感でざわつく。盗難疑惑や悪役令嬢の噂が根強いなか、王家が動き出しても不思議はない。
「まだ詳しいことはわかりませんが、王太子殿下自身というより、周囲の貴族や宮廷が動いているようです。破棄を求める声が高まっているらしく……」
レナータは唇を噛んだ。ビューティーコンテストで自分の価値を示そうとしていたが、そもそもその舞台に立つ前に婚約そのものが危機に瀕しているのではないか。
「私は……どうすればいいの。コンテストで勝ちを狙えば、余計に反感を買うのかもしれないわ。王家がこの騒ぎを嫌がっているなら、私が無理を通す意味があるの?」
思わず弱音が漏れる。マリアナはそんなレナータの肩を力強くつかんだ。
「いいえ、ここで引き下がってはだめです。もし殿下の周囲が勝手に動いているのなら、なおさらお嬢様自身の姿を見せなければ。何が真実か、はっきりさせるためにも」
レナータはマリアナの瞳を見つめ返す。恐怖や不安が押し寄せてくるが、それでも“諦めたくない”という気持ちが燃え上がるのを感じた。
「そうね……私が逃げたら、結局また“悪役令嬢”扱いのまま。嫌われて婚約破棄されるなら、せめて正々堂々と自分を証明してからでも遅くないわ」
そして翌日、ジルベールから直接レナータのもとへ連絡が入る。できれば一度、二人で話をしたいと。レナータはコンテスト準備の合間に時間を作り、学園の一室で待った。
「レナータ……。王家の会合のこと、もう知っているんだな」
ドアを開けて現れたジルベールは、どこか焦燥のにじむ表情をしていた。レナータは肩を震わせながらも、王太子をまっすぐに見つめる。
「ええ、聞いたわ。周囲が婚約の破棄を進めているって。本当なの?」
彼の答えによっては、すべてが決裂してしまうかもしれない――そう思うと、レナータは胸が締め付けられる。しかしジルベールは深く息をついてから、はっきりと答えた。
「今はまだ“破棄を検討”という段階にすぎない。だが、もしおまえが逃げたりすれば、それが決定打になるだろう」
「だったら……私はどうすればいいの。コンテストに出る意味はあるの?」
レナータの問いに、ジルベールは一瞬視線を揺らした。しかし次の瞬間、決意に満ちた声で告げる。
「おまえは逃げるな。自分の信じる道を貫け。俺は、王太子としての立場をかけても、おまえを正しく評価するつもりだ」
その言葉は、レナータの心を強く震わせた。同時に、破滅フラグが現実のものとなりかけている状況が、否応なく二人を追い込む。それでも、彼女はもう止まるわけにはいかなかった。
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