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「殿下、こちらが先ほどお見せした資料です。バローズ家と繋がりの深い貴族の名前が載っています」
アレクシスの執務室に集められた数人の近衛騎士が、次々と報告を行う。
それはマーガレットを取り巻く人脈や、王太子ライナスの周辺事情に関する詳細だった。
「ありがとうございます。これを元に、僕たちでさらに検証を進めます」
アレクシスは資料を手に取り、ざっと目を通す。
そこにはマーガレットと親密に交流している貴族や商人のリストが並び、いずれも派閥争いに関わる名前がいくつか含まれていた。
「王太子との婚約破棄後、セシリアの評判を落とすために動いている節がありますね。しかも、公爵家内の事情にも介入しようとしているのか」
「はい。バローズ家と、その周囲の一部がガーネット公爵家を陥れ、さらにはライナス殿下を利用する形で権力を得ようとしている可能性が高いかと」
騎士の言葉に、アレクシスは渋い表情を浮かべる。
マーガレットの真の狙いが王太子との結婚だとすれば、ライナスを惹きつけるためにセシリアを排除するのは合理的な行動だ。
だが、それだけではなく、彼らはガーネット家を危機に陥れて操ろうとしているかもしれない。
(セシリアが自分を“悪役”に仕立て上げてまで守りたいのは、家族と家門の存続か。彼女がそこまで追い詰められているのは、この陰謀のせいだろう)
アレクシスは深く息をつき、騎士たちを下がらせた。
ほどなくしてオスカーが部屋に入り、扉を閉める。
「調査は順調ですか?」
「ええ、だいぶ形になってきました。ただ、直接的な証拠を押さえるには、もう少し踏み込んだ動きが必要かもしれません」
「俺にできることがあれば、何でも言ってください」
オスカーの真剣なまなざしを受け、アレクシスはうなずく。
セシリアを守りたいという気持ちは、二人とも同じだ。
「実は、もう一人協力を得たい人物がいるんです。……ガーネット家の執事をしている者に心当たりがあります。かなり信頼のおける人で、セシリアのことを思っているようです」
「その方を通じて、公爵家の内情や動きを詳しく知るということですね」
アレクシスは腰を上げ、窓の外を見やる。
王宮の中庭を覆う夕暮れの光は、美しいがどこか物悲しくもある。
「セシリアは、きっと僕たちの行動を知れば拒絶するでしょう。彼女は自分一人で背負うことが当たり前だと思っているから」
「だからこそ、彼女には内緒で進めるんですね」
「そうなります。最終的に彼女を救うためには、彼女の“知らないところ”で準備を整えるしかない」
アレクシスの言葉に、オスカーは真剣な面持ちでうなずく。
セシリアのことを思えばこそ、今は隠密に動く必要がある。
「しかし、時間はそう多くないでしょう。マーガレットたちも、セシリアを追い詰める手を強めている様子です。ライナス殿下も、もしかしたら……」
「兄上はおそらく、周囲の声に流されているだけかと思います。ただ、プライドが高い分、一度思い込んだらなかなか覆りませんから、厄介です」
アレクシスは苦笑いを漏らしたあと、再び決意を滲ませるように拳を握りしめる。
「証拠を掴んで、セシリアが悪役ではなく、むしろ被害者であることを示し、彼女が守ろうとしているものを救い出す。必ずやり遂げましょう」
「はい。俺も全力を尽くします」
オスカーとアレクシスの視線が交わると、二人は無言のままうなずき合う。
セシリアが苦しみから解放される日は、もうそう遠くないかもしれない――そう信じて。
アレクシスの執務室に集められた数人の近衛騎士が、次々と報告を行う。
それはマーガレットを取り巻く人脈や、王太子ライナスの周辺事情に関する詳細だった。
「ありがとうございます。これを元に、僕たちでさらに検証を進めます」
アレクシスは資料を手に取り、ざっと目を通す。
そこにはマーガレットと親密に交流している貴族や商人のリストが並び、いずれも派閥争いに関わる名前がいくつか含まれていた。
「王太子との婚約破棄後、セシリアの評判を落とすために動いている節がありますね。しかも、公爵家内の事情にも介入しようとしているのか」
「はい。バローズ家と、その周囲の一部がガーネット公爵家を陥れ、さらにはライナス殿下を利用する形で権力を得ようとしている可能性が高いかと」
騎士の言葉に、アレクシスは渋い表情を浮かべる。
マーガレットの真の狙いが王太子との結婚だとすれば、ライナスを惹きつけるためにセシリアを排除するのは合理的な行動だ。
だが、それだけではなく、彼らはガーネット家を危機に陥れて操ろうとしているかもしれない。
(セシリアが自分を“悪役”に仕立て上げてまで守りたいのは、家族と家門の存続か。彼女がそこまで追い詰められているのは、この陰謀のせいだろう)
アレクシスは深く息をつき、騎士たちを下がらせた。
ほどなくしてオスカーが部屋に入り、扉を閉める。
「調査は順調ですか?」
「ええ、だいぶ形になってきました。ただ、直接的な証拠を押さえるには、もう少し踏み込んだ動きが必要かもしれません」
「俺にできることがあれば、何でも言ってください」
オスカーの真剣なまなざしを受け、アレクシスはうなずく。
セシリアを守りたいという気持ちは、二人とも同じだ。
「実は、もう一人協力を得たい人物がいるんです。……ガーネット家の執事をしている者に心当たりがあります。かなり信頼のおける人で、セシリアのことを思っているようです」
「その方を通じて、公爵家の内情や動きを詳しく知るということですね」
アレクシスは腰を上げ、窓の外を見やる。
王宮の中庭を覆う夕暮れの光は、美しいがどこか物悲しくもある。
「セシリアは、きっと僕たちの行動を知れば拒絶するでしょう。彼女は自分一人で背負うことが当たり前だと思っているから」
「だからこそ、彼女には内緒で進めるんですね」
「そうなります。最終的に彼女を救うためには、彼女の“知らないところ”で準備を整えるしかない」
アレクシスの言葉に、オスカーは真剣な面持ちでうなずく。
セシリアのことを思えばこそ、今は隠密に動く必要がある。
「しかし、時間はそう多くないでしょう。マーガレットたちも、セシリアを追い詰める手を強めている様子です。ライナス殿下も、もしかしたら……」
「兄上はおそらく、周囲の声に流されているだけかと思います。ただ、プライドが高い分、一度思い込んだらなかなか覆りませんから、厄介です」
アレクシスは苦笑いを漏らしたあと、再び決意を滲ませるように拳を握りしめる。
「証拠を掴んで、セシリアが悪役ではなく、むしろ被害者であることを示し、彼女が守ろうとしているものを救い出す。必ずやり遂げましょう」
「はい。俺も全力を尽くします」
オスカーとアレクシスの視線が交わると、二人は無言のままうなずき合う。
セシリアが苦しみから解放される日は、もうそう遠くないかもしれない――そう信じて。
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