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「ライナス殿下。ご機嫌いかがでしょうか」
華やかな庭園の一角で、マーガレット・バローズが王太子ライナスに声をかける。
彼女は柔らかな笑みを浮かべながらも、その瞳には上昇志向と野心の色がちらついていた。
「マーガレットか。……最近、何やらセシリアのことで騒がしいようだな」
ライナスは薄く笑い、庭園の噴水を見つめている。
彼は以前と違い、取り巻きも少し距離を置いているように見える。
「はい。セシリア様、あれほど傲慢でしたから。当然といえば当然ですね。あの悪役令嬢のせいで、殿下までやり玉に挙げられるのですもの」
「むしろ、あれだけの態度をとられては、俺も面目を失った。……あの日の舞踏会の場では、俺が悪者のように扱われたが」
ライナスは眉をひそめ、やや不快げに吐き捨てる。
セシリアとの婚約破棄を宣言したあの夜、周囲からは「どうしてこの場で」と好奇の目で見られ、逆に彼自身が評判を落としかけたのだ。
「殿下は決して間違ってなどいません。セシリア様の本性を見抜いていらしたからこそ、早めに手を切られたのでしょう?」
マーガレットの言葉に、ライナスはわずかに頷く。
そうだ、あの時はセシリアの悪評に押される形で決断したのだ。
「しかし、今度は第三王子アレクシスが彼女の味方をするかのような行動を見せている。まったく理解しがたい」
ライナスの言葉を受け、マーガレットは唇の端を吊り上げるように笑う。
「アレクシス殿下は優しすぎるのです。それに、セシリア様の周囲にも、あの騎士のオスカーという男がいつも張り付いていますし」
「オスカーか。……あいつめ、最近では余の目の届かぬところで動いているらしいな」
王太子としての自尊心が強いライナスは、自分よりもアレクシスやオスカーが目立ち始めることに苛立ちを覚える。
それに、セシリアの存在が加わり、余計に腹立たしいのだ。
「ライナス殿下はもっと堂々とされればよろしいのでは? どうか私をご信頼くださいませ。セシリア様の問題は、私がきっと解決に導いて差し上げます」
「どういうことだ?」
ライナスが興味を示したのを見て、マーガレットは一層にこやかな笑みを浮かべる。
彼女の目は計算高く光り、ライナスを説得する言葉を並べ立てる。
「殿下とセシリア様の婚約破棄が正しい選択だったと証明するには、あの令嬢がとことん“悪役”として振る舞う姿を世に知らしめるのが手っ取り早いかと」
「なるほど。具体的にはどうする?」
「それはお任せください。私の人脈を通じて、セシリア様の悪事をさらに暴き出し、それを公にするのです。すると、殿下の見る目が正しかったことが国中に伝わりますわ」
マーガレットの甘言に、ライナスは気を良くする。
自分の決断を擁護してくれる人物は今、そう多くない。
彼のプライドをくすぐるこの誘いに、疑念を抱く余裕はなかった。
「わかった。では、お前に一任しよう。王太子たる余の名誉が傷つかないよう、しっかりと頼むぞ」
「はい、殿下。喜んでお引き受けいたします」
うやうやしく礼をしてみせるマーガレット。
その背中にライナスは大きくうなずき、やがて顔を背けて庭園の奥へと歩き去った。
(さあ、これでライナス殿下も動かしやすくなる。セシリアを完全に破滅させれば、私は王太子妃としての立場を得られるかもしれない)
マーガレットは心の中で勝利を確信する。
セシリアを貶める手段はいくらでもある。
王太子を利用して権力を手にする計画は、いよいよ佳境に差し掛かっていた。
華やかな庭園の一角で、マーガレット・バローズが王太子ライナスに声をかける。
彼女は柔らかな笑みを浮かべながらも、その瞳には上昇志向と野心の色がちらついていた。
「マーガレットか。……最近、何やらセシリアのことで騒がしいようだな」
ライナスは薄く笑い、庭園の噴水を見つめている。
彼は以前と違い、取り巻きも少し距離を置いているように見える。
「はい。セシリア様、あれほど傲慢でしたから。当然といえば当然ですね。あの悪役令嬢のせいで、殿下までやり玉に挙げられるのですもの」
「むしろ、あれだけの態度をとられては、俺も面目を失った。……あの日の舞踏会の場では、俺が悪者のように扱われたが」
ライナスは眉をひそめ、やや不快げに吐き捨てる。
セシリアとの婚約破棄を宣言したあの夜、周囲からは「どうしてこの場で」と好奇の目で見られ、逆に彼自身が評判を落としかけたのだ。
「殿下は決して間違ってなどいません。セシリア様の本性を見抜いていらしたからこそ、早めに手を切られたのでしょう?」
マーガレットの言葉に、ライナスはわずかに頷く。
そうだ、あの時はセシリアの悪評に押される形で決断したのだ。
「しかし、今度は第三王子アレクシスが彼女の味方をするかのような行動を見せている。まったく理解しがたい」
ライナスの言葉を受け、マーガレットは唇の端を吊り上げるように笑う。
「アレクシス殿下は優しすぎるのです。それに、セシリア様の周囲にも、あの騎士のオスカーという男がいつも張り付いていますし」
「オスカーか。……あいつめ、最近では余の目の届かぬところで動いているらしいな」
王太子としての自尊心が強いライナスは、自分よりもアレクシスやオスカーが目立ち始めることに苛立ちを覚える。
それに、セシリアの存在が加わり、余計に腹立たしいのだ。
「ライナス殿下はもっと堂々とされればよろしいのでは? どうか私をご信頼くださいませ。セシリア様の問題は、私がきっと解決に導いて差し上げます」
「どういうことだ?」
ライナスが興味を示したのを見て、マーガレットは一層にこやかな笑みを浮かべる。
彼女の目は計算高く光り、ライナスを説得する言葉を並べ立てる。
「殿下とセシリア様の婚約破棄が正しい選択だったと証明するには、あの令嬢がとことん“悪役”として振る舞う姿を世に知らしめるのが手っ取り早いかと」
「なるほど。具体的にはどうする?」
「それはお任せください。私の人脈を通じて、セシリア様の悪事をさらに暴き出し、それを公にするのです。すると、殿下の見る目が正しかったことが国中に伝わりますわ」
マーガレットの甘言に、ライナスは気を良くする。
自分の決断を擁護してくれる人物は今、そう多くない。
彼のプライドをくすぐるこの誘いに、疑念を抱く余裕はなかった。
「わかった。では、お前に一任しよう。王太子たる余の名誉が傷つかないよう、しっかりと頼むぞ」
「はい、殿下。喜んでお引き受けいたします」
うやうやしく礼をしてみせるマーガレット。
その背中にライナスは大きくうなずき、やがて顔を背けて庭園の奥へと歩き去った。
(さあ、これでライナス殿下も動かしやすくなる。セシリアを完全に破滅させれば、私は王太子妃としての立場を得られるかもしれない)
マーガレットは心の中で勝利を確信する。
セシリアを貶める手段はいくらでもある。
王太子を利用して権力を手にする計画は、いよいよ佳境に差し掛かっていた。
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