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「マーガレット、これはどういうことだ」
豪華な王宮の応接室。
壁際に飾られた花瓶や絵画が、その場の重苦しい空気とは対照的に見える。
王太子ライナスは鋭い目つきでマーガレットを睨みつけ、怒りを抑えきれない様子だ。
「ライナス殿下、信じてください。これは誤解なんです。私はセシリアを陥れるつもりなんて……」
マーガレットは必死に弁明するが、部屋に集まった貴族たちの視線は冷ややかだった。
アレクシスやオスカー、そして近衛騎士が持ち込んだ改ざん書類と証言は、あまりにも明確だったのだ。
「誤解? では、この数字の不一致や筆跡の偽装は何なんだ。おまえの家の使用人が書類を運んでいたことも証言がある。これをどう説明する」
ライナスはテーブルに投げ出された書類を指差す。
バローズ家関与の動かぬ証拠がそこにあった。
「そ、それは……私にもわからないのです。使用人が勝手に……」
「勝手に? それならなおのこと、おまえの管理能力が疑われるな」
ライナスの怒声が室内に響き渡る。
市場で噂されていた“セシリアの不正”が完全に捏造であったと証明される今、マーガレットの信頼は地に落ちつつある。
「ライナス殿下、私を見捨てないでください。私は殿下のお役に立ちたい一心で……」
涙を浮かべて懇願するマーガレット。
だが、ライナスの表情に同情の色はなかった。
むしろ自分がマーガレットに踊らされてきた事実が浮き彫りになり、苦々しさに苛まれている。
「余はおまえを信じて、セシリアとの婚約破棄を公に宣言した。あれで余の評判はどうなった? 結果的に、セシリアが“悪役”を演じていたおかげで大事には至らなかったが、もし本当に彼女が悪役だったなら……」
思い返せば、あの時点でセシリアを断罪したのは、マーガレットや周囲の声を鵜呑みにしたからだ。
ライナスは自分のプライドを傷つけられた想いと、セシリアへの負い目とが入り混じり、怒りをぶつけるしかなかった。
「バローズ家を信頼したのは間違いだった。おまえはしばらく自宅に謹慎しろ。これ以上、王宮に顔を出すことは許さない」
「そ、そんな……! ライナス殿下、それだけは――」
マーガレットが必死にすがりつこうとするが、側近の貴族たちが彼女を引き剥がす。
もう誰も彼女を擁護する者はいない。
「出て行け。これ以上余を失望させるな」
ライナスが冷たく命じると、マーガレットは泣き叫ぶようにして部屋を後にした。
裏で操っていた貴族たちも、事態の急変に追随できず、黙り込むしかない。
やがて室内に静寂が戻り、アレクシスが口を開く。
「兄上、これでセシリアの潔白は証明されました。……あとは、あなたご自身がどう対処するかです」
ライナスは忌々しげにアレクシスを睨む。
だが、それも一瞬のこと。
すぐに視線を落とし、大きくため息をついた。
「わかっている。セシリアには……謝罪しなければならんと思っている」
そう答えながらも、ライナスの声にはまだわずかな震えがあった。
王太子としての威厳は失墜し、誤った判断を下した責任が重くのしかかる。
(余はどうすればいい。いまさら彼女に頭を下げるなど……)
プライドと後悔。
その板挟みで、ライナスの心は限界を迎えつつあった。
豪華な王宮の応接室。
壁際に飾られた花瓶や絵画が、その場の重苦しい空気とは対照的に見える。
王太子ライナスは鋭い目つきでマーガレットを睨みつけ、怒りを抑えきれない様子だ。
「ライナス殿下、信じてください。これは誤解なんです。私はセシリアを陥れるつもりなんて……」
マーガレットは必死に弁明するが、部屋に集まった貴族たちの視線は冷ややかだった。
アレクシスやオスカー、そして近衛騎士が持ち込んだ改ざん書類と証言は、あまりにも明確だったのだ。
「誤解? では、この数字の不一致や筆跡の偽装は何なんだ。おまえの家の使用人が書類を運んでいたことも証言がある。これをどう説明する」
ライナスはテーブルに投げ出された書類を指差す。
バローズ家関与の動かぬ証拠がそこにあった。
「そ、それは……私にもわからないのです。使用人が勝手に……」
「勝手に? それならなおのこと、おまえの管理能力が疑われるな」
ライナスの怒声が室内に響き渡る。
市場で噂されていた“セシリアの不正”が完全に捏造であったと証明される今、マーガレットの信頼は地に落ちつつある。
「ライナス殿下、私を見捨てないでください。私は殿下のお役に立ちたい一心で……」
涙を浮かべて懇願するマーガレット。
だが、ライナスの表情に同情の色はなかった。
むしろ自分がマーガレットに踊らされてきた事実が浮き彫りになり、苦々しさに苛まれている。
「余はおまえを信じて、セシリアとの婚約破棄を公に宣言した。あれで余の評判はどうなった? 結果的に、セシリアが“悪役”を演じていたおかげで大事には至らなかったが、もし本当に彼女が悪役だったなら……」
思い返せば、あの時点でセシリアを断罪したのは、マーガレットや周囲の声を鵜呑みにしたからだ。
ライナスは自分のプライドを傷つけられた想いと、セシリアへの負い目とが入り混じり、怒りをぶつけるしかなかった。
「バローズ家を信頼したのは間違いだった。おまえはしばらく自宅に謹慎しろ。これ以上、王宮に顔を出すことは許さない」
「そ、そんな……! ライナス殿下、それだけは――」
マーガレットが必死にすがりつこうとするが、側近の貴族たちが彼女を引き剥がす。
もう誰も彼女を擁護する者はいない。
「出て行け。これ以上余を失望させるな」
ライナスが冷たく命じると、マーガレットは泣き叫ぶようにして部屋を後にした。
裏で操っていた貴族たちも、事態の急変に追随できず、黙り込むしかない。
やがて室内に静寂が戻り、アレクシスが口を開く。
「兄上、これでセシリアの潔白は証明されました。……あとは、あなたご自身がどう対処するかです」
ライナスは忌々しげにアレクシスを睨む。
だが、それも一瞬のこと。
すぐに視線を落とし、大きくため息をついた。
「わかっている。セシリアには……謝罪しなければならんと思っている」
そう答えながらも、ライナスの声にはまだわずかな震えがあった。
王太子としての威厳は失墜し、誤った判断を下した責任が重くのしかかる。
(余はどうすればいい。いまさら彼女に頭を下げるなど……)
プライドと後悔。
その板挟みで、ライナスの心は限界を迎えつつあった。
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