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「奥様の容態は随分安定してまいりました。季節が変われば、外の空気も吸えるようになるでしょう」
医師の言葉に、セシリアは安堵の表情を浮かべる。
母ローザの病状は少しずつだが確実に良くなっていた。
悪役としてのストレスからも解放され、家の空気そのものが明るくなったのが大きいのかもしれない。
「お母様、無理をなさらずにね。また一緒にお庭を散歩できる日を楽しみにしています」
「セシリア……あなたが自由に生きられるようになって、本当に良かった。私が病気でなければ、もっと早く気づいてあげられたのに……ごめんなさいね」
ベッドで休むローザは、その瞳に涙を浮かべているが、微笑みは穏やかだ。
セシリアはそっと母の手を握り、首を振る。
「気にしないで、お母様。これからは家門のためだけじゃなく、私も自分の幸せを考えてみるわ」
「そうしてちょうだい。……あなたには、きっと素敵な未来が待っているもの」
部屋を後にすると、廊下で父テオドールと鉢合わせる。
彼は今までのような厳格な表情ではなく、少しだけ柔らかな目をしている。
「セシリア、母ローザの容態が安定して何よりだ。それと……近頃は王宮からの使者も絶えないようだな。アレクシス殿下のことか」
「え、あ……それは、まあ……」
どこか気恥ずかしく言葉に詰まるセシリア。
だがテオドールは苦笑しながら続ける。
「安心しろ。余はこれまでお前に負担を強いてきた分、もう口を出すつもりはない。アレクシス殿下は人柄もよく、王宮内でも評判がいい」
「お父様……そう言っていただけるなら、私も嬉しいです。彼は本当に誠実で……」
セシリアが言葉を紡ぐたび、胸が温かくなる。
今やガーネット家には暗い影はない。
父も娘の幸せを心から願い、母は回復へ向かい、家臣たちもみな笑顔を取り戻している。
「公爵家としては、これからライナス殿下との関係も修復に努めるが、あまり気を遣うな。お前が“悪役令嬢”を演じなくても、ガーネット家は立派にやっていける」
「はい、わかりました」
セシリアは深くうなずく。
政治の世界はまだまだ波乱もあるかもしれないが、自分が背負っていた重圧はもうない。
家族とともに、新しい方向へ進めるという確信があった。
廊下を出ると、オスカーが待っていた。
騎士服姿がよく似合うその姿は、王太子の護衛騎士ではなく、第三王子側に仕える新たな騎士としてのものだ。
「セシリア、そろそろ行くのか?」
「ええ、アレクシス殿下にお会いしてくるわ。……オスカー、あなたには本当に感謝しているわ。私が悪役でいる間、ずっと気にかけてくれた」
オスカーは少し照れたように肩をすくめる。
「俺はただ、幼馴染を放っておけなかっただけさ。おまえが自由になれて、俺も嬉しい」
そう言って微笑むオスカーの表情は晴れやかだ。
幼馴染としての立場を捨ててまで、セシリアを守ろうと決めた道に後悔はないのだろう。
「ありがとう、オスカー。……私、幸せになるために努力するから」
「ああ、おまえらしく生きろ。それが一番だ」
セシリアはオスカーに手を振り、公爵家を出る。
次に会うのは、王宮の中庭で待っているというアレクシスだ。
公爵家に重く垂れ込めていた雲は、もうどこにもない。
新しい風が、セシリアの背中を押してくれるようだった。
医師の言葉に、セシリアは安堵の表情を浮かべる。
母ローザの病状は少しずつだが確実に良くなっていた。
悪役としてのストレスからも解放され、家の空気そのものが明るくなったのが大きいのかもしれない。
「お母様、無理をなさらずにね。また一緒にお庭を散歩できる日を楽しみにしています」
「セシリア……あなたが自由に生きられるようになって、本当に良かった。私が病気でなければ、もっと早く気づいてあげられたのに……ごめんなさいね」
ベッドで休むローザは、その瞳に涙を浮かべているが、微笑みは穏やかだ。
セシリアはそっと母の手を握り、首を振る。
「気にしないで、お母様。これからは家門のためだけじゃなく、私も自分の幸せを考えてみるわ」
「そうしてちょうだい。……あなたには、きっと素敵な未来が待っているもの」
部屋を後にすると、廊下で父テオドールと鉢合わせる。
彼は今までのような厳格な表情ではなく、少しだけ柔らかな目をしている。
「セシリア、母ローザの容態が安定して何よりだ。それと……近頃は王宮からの使者も絶えないようだな。アレクシス殿下のことか」
「え、あ……それは、まあ……」
どこか気恥ずかしく言葉に詰まるセシリア。
だがテオドールは苦笑しながら続ける。
「安心しろ。余はこれまでお前に負担を強いてきた分、もう口を出すつもりはない。アレクシス殿下は人柄もよく、王宮内でも評判がいい」
「お父様……そう言っていただけるなら、私も嬉しいです。彼は本当に誠実で……」
セシリアが言葉を紡ぐたび、胸が温かくなる。
今やガーネット家には暗い影はない。
父も娘の幸せを心から願い、母は回復へ向かい、家臣たちもみな笑顔を取り戻している。
「公爵家としては、これからライナス殿下との関係も修復に努めるが、あまり気を遣うな。お前が“悪役令嬢”を演じなくても、ガーネット家は立派にやっていける」
「はい、わかりました」
セシリアは深くうなずく。
政治の世界はまだまだ波乱もあるかもしれないが、自分が背負っていた重圧はもうない。
家族とともに、新しい方向へ進めるという確信があった。
廊下を出ると、オスカーが待っていた。
騎士服姿がよく似合うその姿は、王太子の護衛騎士ではなく、第三王子側に仕える新たな騎士としてのものだ。
「セシリア、そろそろ行くのか?」
「ええ、アレクシス殿下にお会いしてくるわ。……オスカー、あなたには本当に感謝しているわ。私が悪役でいる間、ずっと気にかけてくれた」
オスカーは少し照れたように肩をすくめる。
「俺はただ、幼馴染を放っておけなかっただけさ。おまえが自由になれて、俺も嬉しい」
そう言って微笑むオスカーの表情は晴れやかだ。
幼馴染としての立場を捨ててまで、セシリアを守ろうと決めた道に後悔はないのだろう。
「ありがとう、オスカー。……私、幸せになるために努力するから」
「ああ、おまえらしく生きろ。それが一番だ」
セシリアはオスカーに手を振り、公爵家を出る。
次に会うのは、王宮の中庭で待っているというアレクシスだ。
公爵家に重く垂れ込めていた雲は、もうどこにもない。
新しい風が、セシリアの背中を押してくれるようだった。
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