婚約破棄ですって?!私の悪行…まさかバレてませんわよね?

神楽坂ゆい

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「アデル、殿下があなたを探してるらしいわ。」

 

レイラからの急な知らせに、わたくしは思わず身を固くする。探している、という表現が意味するのは、殿下がわたくしに直接会おうとしていることだ。

 

「理由は何かしら。わたくし、また余計な噂を立てられるのはごめんだわ。」

 

「わからない。でも、どうやら殿下が『今度こそしっかり話がしたい』って言ってるみたい。あの新婚約者候補の件も本人が否定したことで、余計に混乱が広がってるんじゃないかな。」

 

レイラはわたくしの表情を伺いながら言葉を続ける。わたくしは胸がドキドキと高鳴るのを抑えきれない。あれほどすれ違っていた殿下が、今になってわたくしを求めているのはなぜだろうか。

 

「会ってくれる気はあるの?」

 

「……正直、怖い。何を言われるのかわからないし、また婚約破棄を一方的に突きつけられるかもしれない。」

 

わたくしは思わず弱音を吐く。レイラはわたくしの手を握り、柔らかな声で諭すように言う。

 

「もし本当にそれだけなら、こんなに探したりしないでしょ。殿下も何か抱えているように見えるわ。あんたもそれを感じてるんじゃない?」

 

確かに、わたくしはロラン殿下の視線に何度か迷いを感じ取った。まるで言いたいことがあるのに言えないような、そんな苦しげな表情。それが気になって仕方がないのも事実だ。

 

「……わかったわ。会って話す。これ以上逃げ続けても何も変わらない。」

 

決意というほど大袈裟でもないけれど、わたくしの中で腹をくくる思いが芽生える。レイラは安堵の笑みを浮かべながら、待ち合わせ場所と時間をわたくしに伝える。

 

そして当日。王宮の離れにある小さなサロンで、わたくしはロラン殿下を待っていた。豪華な室内にもかかわらず、気分は落ち着かない。手のひらに汗が滲み、胸が高鳴りっぱなしだ。

 

「アデル……来てくれたんだな。」

 

殿下が扉を開けて入ってきた瞬間、二人きりの空気が張り詰める。わたくしは立ち上がり、会釈をする。これまでは無視されたり避けられたりしてきたから、こうして改まって会うだけでも緊張する。

 

「殿下こそ、わたくしに何の用ですか。婚約破棄はもう正式に進められているはずでしょう?」

 

「そのことなんだが……まだ正式に破棄の書類は交わされていない。俺が手続きを遅らせている。」

 

「え……?」

 

思わぬ言葉に驚きで言葉を失う。てっきりすでに手続きは完了していると思っていた。

 

「アデル、話がある。どうか聞いてほしいんだ。お前に伝えなければならないことがある。それを聞いてから、改めて婚約の話を決めても遅くはない。」

 

「……わたくしに伝えなければならないこと?」

 

殿下の表情は真剣そのもの。わたくしは緊張で固まったまま、彼の口から出る言葉を待つしかない。何か重大な秘密が隠されている――そんな予感に、胸が高鳴っていた。
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