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「アデル様、このたびは申し訳ございませんでした。私どもは張り紙の内容を、すっかり鵜呑みにしてしまい……。」
「いいのです。あなたがたも被害者といえば被害者でしょうから。」
記者会見が終わったあと、大広間の一角で何人かの貴族夫人たちがわたくしに詫びを入れている。わたくしを悪女と信じきって、中傷していた人々だ。
「アデル様の孤児院支援や、普段は隠れて善行を積んでいたお話を聞いて、驚くばかりですわ。もっと早く知っていれば、あんな言い方は……。」
「私も驚きました。伯爵令嬢アデルがこんなに優しい方だったなんて。」
わたくしは苦笑しながら対応する。まだ複雑な気持ちだ。今まで散々悪女呼ばわりしてきた人々が、手のひらを返すように「実はいい人だった」と態度を変えてきている。もちろん、誤解が解けるのはありがたいが、それでも過去に受けた数々の辛辣な言葉が脳裏をよぎる。
「レイラ、あなたはどう思う?」
わたくしは少し離れた場所で状況を見守っているレイラに問いかける。彼女は肩をすくめて困ったように笑う。
「仕方ないわ。世間なんてそんなもの。あんたが実はいい人だと知ったら、今度はそこを称賛し始める。でも、結局は自分たちの興味と都合で動いてるだけ。」
「わかっているわ。でも、どこか他人事のように見てしまって……それでも悪女を捨てて本当によかったのか、少し戸惑う。」
レイラはわたくしの肩にそっと手を置く。
「そんなふうに思うのは当然よ。長い間、悪女を演じてきたんだから。だけど、あんたは孤児院の子どもたちを守りたいって言って、ここまで踏み切った。自分の大切なもののために決断したんだから、胸を張りなさい。」
「そうね……ありがとう。」
わたくしはレイラの言葉に少しだけ心が軽くなる。振り返ればサラやフレデリックが、会見後の対応に奔走している。わたくし一人では到底実現できなかったことだろう。
「さて、アデル様。あなたが本当は悪女ではないということが広まりつつありますが、これからどうされますか?」
フレデリックが近づいてきて、小声で尋ねてくる。彼の瞳にはどこか期待めいた光が宿っている。
「そうね……まだ黒幕が完全に露見したわけではないわ。あの職人の証言も大事だけど、それだけでは足りない面もある。王家の捜査が進めば、いずれはっきりするでしょう。わたくしはそれを見届けたいと思う。」
「かしこまりました。そちらの動きが具体化したら改めて報告します。アデル様はご自身の名誉回復に集中していただいて構いませんよ。」
「名誉回復……ずいぶんと大げさね。」
わたくしは肩をすくめるが、フレデリックの言うこともわからなくはない。今や「善人アデル」というイメージが一気に浮上し始め、王家や貴族の間でわたくしを見る目が変わってきている。ここでしっかり存在を示しておかなければ、また陰で何を言われるかわからない。
「それから、殿下のことはどうしますか?」
フレデリックが探るように尋ねてくる。わたくしは一瞬視線を落とす。婚約破棄が撤回されるにしても、わたくしの気持ちはそんなに単純ではない。彼がわたくしを“守るために”嘘をつき、結果的に苦しめた過去が消えるわけではないから。
「まだ決められないわ。殿下に言いたいことが山ほどある。ゆっくりと、これから話し合っていくつもり。」
「わかりました。」
フレデリックは微笑んで退く。わたくしが悪女の仮面を外した今、彼の優しさがまぶしく感じられて少しだけ胸がざわつく。それでも、わたくしは自分が選んだ道を進まなければならない。孤児院の子どもたちが安心して暮らせる国にしたい――そして、自分自身もこれ以上嘘をつかずに生きていきたい。そう心に誓うのだった。
「いいのです。あなたがたも被害者といえば被害者でしょうから。」
記者会見が終わったあと、大広間の一角で何人かの貴族夫人たちがわたくしに詫びを入れている。わたくしを悪女と信じきって、中傷していた人々だ。
「アデル様の孤児院支援や、普段は隠れて善行を積んでいたお話を聞いて、驚くばかりですわ。もっと早く知っていれば、あんな言い方は……。」
「私も驚きました。伯爵令嬢アデルがこんなに優しい方だったなんて。」
わたくしは苦笑しながら対応する。まだ複雑な気持ちだ。今まで散々悪女呼ばわりしてきた人々が、手のひらを返すように「実はいい人だった」と態度を変えてきている。もちろん、誤解が解けるのはありがたいが、それでも過去に受けた数々の辛辣な言葉が脳裏をよぎる。
「レイラ、あなたはどう思う?」
わたくしは少し離れた場所で状況を見守っているレイラに問いかける。彼女は肩をすくめて困ったように笑う。
「仕方ないわ。世間なんてそんなもの。あんたが実はいい人だと知ったら、今度はそこを称賛し始める。でも、結局は自分たちの興味と都合で動いてるだけ。」
「わかっているわ。でも、どこか他人事のように見てしまって……それでも悪女を捨てて本当によかったのか、少し戸惑う。」
レイラはわたくしの肩にそっと手を置く。
「そんなふうに思うのは当然よ。長い間、悪女を演じてきたんだから。だけど、あんたは孤児院の子どもたちを守りたいって言って、ここまで踏み切った。自分の大切なもののために決断したんだから、胸を張りなさい。」
「そうね……ありがとう。」
わたくしはレイラの言葉に少しだけ心が軽くなる。振り返ればサラやフレデリックが、会見後の対応に奔走している。わたくし一人では到底実現できなかったことだろう。
「さて、アデル様。あなたが本当は悪女ではないということが広まりつつありますが、これからどうされますか?」
フレデリックが近づいてきて、小声で尋ねてくる。彼の瞳にはどこか期待めいた光が宿っている。
「そうね……まだ黒幕が完全に露見したわけではないわ。あの職人の証言も大事だけど、それだけでは足りない面もある。王家の捜査が進めば、いずれはっきりするでしょう。わたくしはそれを見届けたいと思う。」
「かしこまりました。そちらの動きが具体化したら改めて報告します。アデル様はご自身の名誉回復に集中していただいて構いませんよ。」
「名誉回復……ずいぶんと大げさね。」
わたくしは肩をすくめるが、フレデリックの言うこともわからなくはない。今や「善人アデル」というイメージが一気に浮上し始め、王家や貴族の間でわたくしを見る目が変わってきている。ここでしっかり存在を示しておかなければ、また陰で何を言われるかわからない。
「それから、殿下のことはどうしますか?」
フレデリックが探るように尋ねてくる。わたくしは一瞬視線を落とす。婚約破棄が撤回されるにしても、わたくしの気持ちはそんなに単純ではない。彼がわたくしを“守るために”嘘をつき、結果的に苦しめた過去が消えるわけではないから。
「まだ決められないわ。殿下に言いたいことが山ほどある。ゆっくりと、これから話し合っていくつもり。」
「わかりました。」
フレデリックは微笑んで退く。わたくしが悪女の仮面を外した今、彼の優しさがまぶしく感じられて少しだけ胸がざわつく。それでも、わたくしは自分が選んだ道を進まなければならない。孤児院の子どもたちが安心して暮らせる国にしたい――そして、自分自身もこれ以上嘘をつかずに生きていきたい。そう心に誓うのだった。
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