婚約破棄ですって?!私の悪行…まさかバレてませんわよね?

神楽坂ゆい

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「フレデリック、あなた最近レイラとよく会ってるわね?」

わたくしが屋敷の庭で書類を確認していると、ふとサラがそんなことを口走る。フレデリックの姿は玄関先に見えるが、その隣には確かにレイラの姿があった。

「……ええ、ちょっと共通の用事がありまして。」

フレデリックは微妙に言葉を濁している。レイラを見ると、いつになく落ち着かない様子。彼女はわたくしに気づいて小さく手を振るが、どこかそわそわしている。

「ふふ、アデル様。あの二人、なんだかいい感じですよね。」

サラが楽しそうに耳打ちしてくる。わたくしは思わず苦笑を漏らす。確かにフレデリックとレイラは、最近妙に馬が合っているようだ。フレデリックは慎重派、レイラは奔放かつ面倒見がいいタイプ。意外な相性の良さがあるのかもしれない。

「アデル、ちょっと来て!」

玄関先からレイラが声を上げる。わたくしが駆け寄ると、フレデリックが満面の笑みで一枚の書類を広げてみせる。

「ご覧ください。例の黒幕と目される人物の名前と、資金の流れを示す証拠がついに手に入りました。この前の職人を狙った連中を追跡していたところ、噂通りの有力貴族が浮上したのです。」

「それは……すごい進展ね。さっそく王家に提出すれば、事態が大きく動くはず。」

わたくしは思わず目を見開く。レイラも胸を撫でおろすようにして微笑む。

「これであとは、宰相代理が王と相談してくれるみたい。ロラン殿下も黒幕排除に本腰を入れるって話よ。」

「ええ、本当に良かったわ。」

わたくしは胸をなで下ろしたあと、ふと二人の様子に目をやる。レイラとフレデリックが並んで立つ姿は、案外しっくり馴染んでいて微笑ましい。

「ところで、あなたたち、最近一緒にいることが多いみたいだけど……何かあるの?」

わたくしがからかうように尋ねると、レイラは顔を赤らめ、フレデリックは軽く目を伏せる。

「べ、別に何もないわ。あくまでも仕事の延長よ。フレデリックさんは優秀だから頼りになるだけ。」

「そうです。私はただ、レイラさんの意見が斬新で、捜査や情報収集のヒントになるので……。」

二人とも口調がぎこちなくなっているあたり、どうやら本当に“ただの仕事仲間”ではない様子。サラは後ろでクスクス笑いをこらえている。

「まぁ、無理に聞き出そうとはしないわ。でも、うまくいくといいわね。」

わたくしは意味深に言葉を濁し、書類に視線を戻す。フレデリックとレイラの関係がどのように発展していくかはわからないが、少なくとも悪い兆候はなさそうだ。

「さて、これで黒幕問題はもう一息ね。孤児院の子どもたちを脅かすデマも消えていくでしょうし、わたくしの悪女疑惑も晴れてきたし。」

「あとは、アデル様自身のこれからですね。ロラン殿下との再婚約も、どうなるか……。」

サラの言葉に、わたくしは少し複雑な笑みを浮かべる。何もかも順調に進んでいるようで、実はまだ答えを出せていない問題もある。そこに思いを馳せながら、レイラとフレデリックのやり取りを横目に見る。今はこの穏やかな空気を素直に喜びたい。長かった嵐が少しずつ収まっているのを、わたくしは肌で感じていた。
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