視えすぎる公務員と不感症作家の怪異事件録 〜「次も頼むな」って、僕は嫌ですからね!〜

河野彰

文字の大きさ
8 / 9
第二章:人魚の肉

(4)そして腹の中に

しおりを挟む
「で、あれからどうだ」

 そう切り出したのは電話口での藤崎だった。

「昨日は、すみませんでした……」

 新也は兎にも角にも謝った。
 先日の、人魚の店での醜態のことである。
 新也は記憶にないのだが、席の途中で倒れてしまったらしい。なにか、肉を口に含んだのは覚えている。意識のなくなった新也は藤崎の方へ倒れ込み、どうも寝てしまったようで、寝息を立てていた。そんな新也を、藤崎は料理を途中にタクシーで家まで送ってくれたと言うのだ。
 酒のせいだろうと店主も言い、藤崎は何度も詫びを口にする新也を許してくれた。

「それで、せんぱ……藤崎さん」
「なんだ」
「その、体調とか……悪いところはないですか?」

 心配はそこだ。
 意識のなくなる寸前まで、やんややんやと囃し立てる店の連中……見えない何かの声を新也は聞いていた。あれらが何者にせよ、人魚を口にした2人を笑っていたことには違いない。

「悪いところはないけど……あれか。気にしてんのか、人魚を」

 電話の向こうでニヤリと笑う藤崎が見えるようだった。
 新也はむっとして言い返す。


「心配して悪いですかね。先輩には何も感じられないようだからあれですけど、あの店は絶対おかしいですよ」

 新也はムキになって言い返した。が、よく考えれば藤崎をすごく心配していると言うようで恥ずかしかった。咳払いをしてごまかす。

「兎に角ですね、体調は悪くないんですね?」

 早口で新也は訊ねた。

「悪くないどころか絶好調だね」

 へっと藤崎が笑う。

「なら良かったです……けど」
「大丈夫だろ。人魚の肉ってあれだろ。不老不死になるっていう」
「ですよね……」
「なら、良いじゃないか。病気になるもんでなし」

 また行こうと、気軽に藤崎は新也に言う。
 絶対行きませんからね、と反論しかけた新也と藤崎の半年後の健康診断の結果が、オールAだということは2人はまだ知る由もなかった。

【end】
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

洒落にならない怖い話【短編集】

鍵谷端哉
ホラー
その「ゾワッ」は、あなたのすぐ隣にある。 意味が分かると凍りつく話から、理不尽に追い詰められる怪異まで。 隙間時間に読める短編ながら、読後の静寂が怖くなる。 洒落にならない実話風・創作ホラー短編集。

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?

意味がわかると怖い話

井見虎和
ホラー
意味がわかると怖い話 答えは下の方にあります。 あくまで私が考えた答えで、別の考え方があれば感想でどうぞ。

きさらぎ駅

水野華奈
ホラー
親友から電話があった。 きさらぎ駅という場所にいるらしい… 日常の中の小さな恐怖が今始まる。 触れてしまったが最後。 二度と戻れない。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...