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邪竜の襲撃
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「ここか。報告のあった場所は……」
「はい。ここから少し離れた村の住人からの報告では、夜に地震が起きてすぐ、この場所で火災が起きたそうです」
「たしかここは地元の人間に魔の森と呼ばれていた、魔物達の棲家だったな。辺り一面焦土になっているが、いったい何が起こったのだ……?」
エスバウラ国第一王子アルバートは、精鋭の兵士達を引き連れ、自国領内で起こった異変を調査していた。
「アルバート殿下!!生存者です!!人間の少女を一名発見致しました!!」
「なに!?生存者!?すぐに行く!!」
兵からの報告を受け、アルバートは生存者の元へ向かう。
するとそこにはつい先日、ラギアン王国のラグレア学園を視察した時に出会った少女がいた。
「わ、私……生きて……る……?」
「君はギルバートの……?いったいここで何があった?」
「わ、私、たしかに竜の吐いた炎に包まれたはず……」
少女はマメが潰れて、血まみれの両手で自分の肩を抱きながら、恐怖に打ち震えている。
「……竜?」
「わ、私……」
全身が煤と泥で汚れている少女が、よく見知った首飾りをしているのに気づいてアルバートは声を上げた。
「それは!?我が王家に代々伝わる聖女の守り!!何故君がそれを持っているんだ?」
「こ、これは……。ギ、ギルバート様にいただいたんです……」
「……そういうことか。君がギルバートに貰ったそれは、我が王家の祖先が光の聖女ノエルから授かった物だ。持ち主が死の危険を感じたその時、聖女ノエルが込めた守護の力が発動する。君はそれを身に着けていたから、九死に一生を得たと言うわけだ」
かつて光の聖女ノエルによって封印された、竜王を名乗る邪竜の封印を解く手伝いをさせられ、蘇った邪竜にすべてを焼き尽くす炎を浴びせられた恐怖を思い出し、少女はガタガタと震え嗚咽を漏らす。
恐怖に咽び泣く少女から、ここで何が起きたのかを何とか聞き出し、アルバートは兵士達に命令を下した。
「邪竜が蘇った!!襲撃に備えるよう直ちに同盟諸国に通達せよ!!」
☆
「よし。そこまで!!」
「ありがとうございました!!」
「姫も大分腕を上げましたね」
「師匠の教えのおかげです」
年末も近付き、昨日今年最後の授業を終えたノルン達は昼前から、ケイトさんの所に来ていました。
シルフィアーナ姫が今年最後の指導をしてもらい、ケイトさんに深々と頭を下げます。
「ルフィアお疲れ様。お昼ごはんにしよー」
ノルンがキツそうな表情のリィナさんとアイラさんを連れて声をかけます。
今日も二人を無理矢理、魔法で回復させながらのスパルタ特訓です。
「ああ。今行く。師匠。少ないですが月謝です」
「いや、別にいいよ。私が姫を育ててみたくなってやってるわけだし」
「そういう訳には行きません。本来なら仕事に行くはずだった師匠に無理を言って、私の指導をしてもらっているのですから」
そう言って姫は金貨の入った袋をケイトさんに渡します。
「いやいやいや。これは多すぎる!!」
「そんな事はありません!!師匠の教えに対する対価としては少ない位です!!」
袋の中のお金をちらっと見て、あまりの金額にケイトさんは姫に袋を返そうとしますが、姫は頑なに受け取ろうとしません。
そんな二人のやりとりを見て、ノルンが笑いながら助け船を出します。
「おねーちゃん。ここは素直にもらっておけばいいよ。ルフィアは頑固だからね。絶対に引かないよ」
ノルンのその言葉にケイトさんははあ、とため息をつくと笑いながら言いました。
「わかったよ。ありがたく頂戴しとく。…私は良い弟子に恵まれたな。姫。来年からはもっと厳しく行くよ。絶対に私よりも誰よりも姫を強くしてみせるからね」
「はい!!」
「ルフィア。リィちゃんとアイちゃんが待ってるよ。早くごはんにしよ。おねーちゃんもたまには一緒にどう?」
ノルンがケイトさんを誘うと、ケイトさんは首を振って自宅を親指で指差しながら言いました。
「今日はニコルと旦那が家にいるからさ。一緒のランチはまた今度にしとくよ」
「そっかあ。今日家にいるのおねーちゃんだけじゃなかったなら、ニコルくんと旦那さんの分もお弁当作ってくれば良かったね」
「気にしなくていいさ。家族の分の食事位、私が作るからさ」
「おねーちゃんももうすっかり、お嫁さんが板に付いちゃったね。いいなあ……」
昔から知っているお姉さんの幸せそうな暮らしをノルンは羨ましがります。
ケイトさんはノルンの頭を優しく、くしゃっと撫でて優しい顔で言いました。
「家族の事を気にせず、友達と遊べるのは今だけだよ。若い内にうんと楽しんでおきな。嫁に行ったら、どうしても家族優先になっちまうからね」
「……うん。そうだね」
ノルンがケイトさんにそう答えたその時、私達の頭上を大きな影が覆いました。
そして次の瞬間、ものすごい轟音と共に、巨大な黒い竜が目の前に舞い降りてきました。
黒い巨竜の巨体が起こした地響で、ノルン達は体勢を崩しそうになりますが何とか堪えます。
「見つけた!!見つけたぞ!!聖女ノエル!!今こそ、ここで貴様を八つ裂きにして塵一つ残さず焼き尽くしてくれるわ!!」
黒い巨竜は人の言葉でそう宣言すると、ノルンに向かって炎の息を吐いてきました。
「はい。ここから少し離れた村の住人からの報告では、夜に地震が起きてすぐ、この場所で火災が起きたそうです」
「たしかここは地元の人間に魔の森と呼ばれていた、魔物達の棲家だったな。辺り一面焦土になっているが、いったい何が起こったのだ……?」
エスバウラ国第一王子アルバートは、精鋭の兵士達を引き連れ、自国領内で起こった異変を調査していた。
「アルバート殿下!!生存者です!!人間の少女を一名発見致しました!!」
「なに!?生存者!?すぐに行く!!」
兵からの報告を受け、アルバートは生存者の元へ向かう。
するとそこにはつい先日、ラギアン王国のラグレア学園を視察した時に出会った少女がいた。
「わ、私……生きて……る……?」
「君はギルバートの……?いったいここで何があった?」
「わ、私、たしかに竜の吐いた炎に包まれたはず……」
少女はマメが潰れて、血まみれの両手で自分の肩を抱きながら、恐怖に打ち震えている。
「……竜?」
「わ、私……」
全身が煤と泥で汚れている少女が、よく見知った首飾りをしているのに気づいてアルバートは声を上げた。
「それは!?我が王家に代々伝わる聖女の守り!!何故君がそれを持っているんだ?」
「こ、これは……。ギ、ギルバート様にいただいたんです……」
「……そういうことか。君がギルバートに貰ったそれは、我が王家の祖先が光の聖女ノエルから授かった物だ。持ち主が死の危険を感じたその時、聖女ノエルが込めた守護の力が発動する。君はそれを身に着けていたから、九死に一生を得たと言うわけだ」
かつて光の聖女ノエルによって封印された、竜王を名乗る邪竜の封印を解く手伝いをさせられ、蘇った邪竜にすべてを焼き尽くす炎を浴びせられた恐怖を思い出し、少女はガタガタと震え嗚咽を漏らす。
恐怖に咽び泣く少女から、ここで何が起きたのかを何とか聞き出し、アルバートは兵士達に命令を下した。
「邪竜が蘇った!!襲撃に備えるよう直ちに同盟諸国に通達せよ!!」
☆
「よし。そこまで!!」
「ありがとうございました!!」
「姫も大分腕を上げましたね」
「師匠の教えのおかげです」
年末も近付き、昨日今年最後の授業を終えたノルン達は昼前から、ケイトさんの所に来ていました。
シルフィアーナ姫が今年最後の指導をしてもらい、ケイトさんに深々と頭を下げます。
「ルフィアお疲れ様。お昼ごはんにしよー」
ノルンがキツそうな表情のリィナさんとアイラさんを連れて声をかけます。
今日も二人を無理矢理、魔法で回復させながらのスパルタ特訓です。
「ああ。今行く。師匠。少ないですが月謝です」
「いや、別にいいよ。私が姫を育ててみたくなってやってるわけだし」
「そういう訳には行きません。本来なら仕事に行くはずだった師匠に無理を言って、私の指導をしてもらっているのですから」
そう言って姫は金貨の入った袋をケイトさんに渡します。
「いやいやいや。これは多すぎる!!」
「そんな事はありません!!師匠の教えに対する対価としては少ない位です!!」
袋の中のお金をちらっと見て、あまりの金額にケイトさんは姫に袋を返そうとしますが、姫は頑なに受け取ろうとしません。
そんな二人のやりとりを見て、ノルンが笑いながら助け船を出します。
「おねーちゃん。ここは素直にもらっておけばいいよ。ルフィアは頑固だからね。絶対に引かないよ」
ノルンのその言葉にケイトさんははあ、とため息をつくと笑いながら言いました。
「わかったよ。ありがたく頂戴しとく。…私は良い弟子に恵まれたな。姫。来年からはもっと厳しく行くよ。絶対に私よりも誰よりも姫を強くしてみせるからね」
「はい!!」
「ルフィア。リィちゃんとアイちゃんが待ってるよ。早くごはんにしよ。おねーちゃんもたまには一緒にどう?」
ノルンがケイトさんを誘うと、ケイトさんは首を振って自宅を親指で指差しながら言いました。
「今日はニコルと旦那が家にいるからさ。一緒のランチはまた今度にしとくよ」
「そっかあ。今日家にいるのおねーちゃんだけじゃなかったなら、ニコルくんと旦那さんの分もお弁当作ってくれば良かったね」
「気にしなくていいさ。家族の分の食事位、私が作るからさ」
「おねーちゃんももうすっかり、お嫁さんが板に付いちゃったね。いいなあ……」
昔から知っているお姉さんの幸せそうな暮らしをノルンは羨ましがります。
ケイトさんはノルンの頭を優しく、くしゃっと撫でて優しい顔で言いました。
「家族の事を気にせず、友達と遊べるのは今だけだよ。若い内にうんと楽しんでおきな。嫁に行ったら、どうしても家族優先になっちまうからね」
「……うん。そうだね」
ノルンがケイトさんにそう答えたその時、私達の頭上を大きな影が覆いました。
そして次の瞬間、ものすごい轟音と共に、巨大な黒い竜が目の前に舞い降りてきました。
黒い巨竜の巨体が起こした地響で、ノルン達は体勢を崩しそうになりますが何とか堪えます。
「見つけた!!見つけたぞ!!聖女ノエル!!今こそ、ここで貴様を八つ裂きにして塵一つ残さず焼き尽くしてくれるわ!!」
黒い巨竜は人の言葉でそう宣言すると、ノルンに向かって炎の息を吐いてきました。
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