破天荒聖女ノルン・フォルシオンが征く!!

マギレ公

文字の大きさ
82 / 101

奇跡

しおりを挟む
 「あっ」

 しまった!!油断した!!
 貴重な食材に逃げられないよう、防御陣プロテクションはんどでしっかり押さえつけてたはずだったのに……。
 しっぽもたくさん回収出来たしそろそろ締めようとしたら、黒竜お肉が死に物狂いで暴れた上、だらだら流してた脂汗のせいで防御陣プロテクションはんどからぬるりと抜け出しちゃった……。
 ぼくから逃げようと天高く舞い上がる黒竜お肉
 だけど、散々ぼくが下ごしらえをしてたせいか、途中で力尽きたらしくぼく目掛けて落ちてきた。
 ちょっとやばいかも!!
 防御陣プロテクションで受けるか、ここから飛び退かないと黒竜お肉に潰されちゃう!!
 食材なんかに潰されて死ぬとか笑えないよ!!

 「地殻変動魔法ガイアクラッシュ!!」

 想定外の事態に固まってしまってたぼくの周囲の地面が、力ある言葉と共に盛り上がり、岩石の棘山と化して落ちてくる黒竜お肉の背中に突き刺さった。
 黒竜お肉の硬い鱗に傷を付ける事は出来なかったけど、どうやら食材に押し潰されるのだけは免れたよ……。
 声がした方へ振り向くとそこにはリィちゃんが魔導銃まどうガンを構えて立ってた。
 リィちゃん、いつの間に中級攻撃魔法を覚えたんだろう?
 ぼくがリィちゃんに気を取られていたら、黒竜お肉の巨体を支えきれず、バキバキィッと音を立てながら岩石の棘が割れ出す。

 「アイラさん!!」
 「お任せを!!付与エンチャント!!氷結魔法ブリザード!!」

 リィちゃんの言葉に応えて、リィちゃんの背後からアイちゃんが飛び出してきた。
 岩石の棘に魔杖まじょうから発生させたしなやかかつ頑丈な防御陣プロテクション製の鞭を叩きつけて氷結魔法を付与した事で、ひび割れ崩れ落ちそうな岩石の棘山が凍りつき、強度が増した。
 そのおかげで黒竜お肉が落ちてくるまで少しばかりの猶予が生まれた。
 リライザがぼくに向かって叫ぶ。

 「ノルン!!今のうちに離脱しましょう!!」
 「リィちゃん、アイちゃん……?どうして……?」
 「ノルン!!」

 避難させたはずの二人の姿を見てぼくが呆気にとられていると、ルフィアが走ってきてぼくを抱き寄せて抱え上げこの場を離脱した。
 黒竜お肉の巨体を支えきれず、凍った岩石が崩れ落ち黒竜お肉は地面に落下して大きな地響を立てながら、そのまま粉々に砕けた岩石の山に埋もれる。

 「なんで……?なんで、三人ともここに戻ってきたの?」

 ぼくを抱きかかえたルフィアに地面に下ろしてもらいながら、ケイトおねーちゃん達と一緒に避難したはずなのにどうしてここに戻ってきたのか尋ねると、ルフィアは真剣な表情でぼくの目を見て答えた。

 「ノルンだけにすべて任せて逃げたくなかった。ここで逃げるような臆病者にノルンの友を名乗る資格はないからな」
 「ルフィア……」
 「お姉様!!わたしも姫と同じ気持ちです!!ここでお姉様にすべて押し付けて逃げるようなわたしは嫌です!!」
 「リィちゃん……」
 「わたくしもです。お姉様を見捨てて逃げるなど出来ません。そのような卑怯者がお姉様の妹を名乗るなど許されませんもの」
 「アイちゃん……」

 リィちゃんとアイちゃんも駆け寄ってきて、二人共真剣な表情でぼくの目を見てはっきりとそう告げた。

 「私達はまだまだ未熟だが、ノルンの力になりたい。これからもノルンと共にいたい。だから、私達もノルンと共に戦わせてほしい」
 「……これは訓練じゃないんだよ?」
 「わかっている」
 「一歩間違えたら死んじゃうかもしれないんだよ?」
 「それはお姉様も同じじゃないですか」
 「それにお姉様が一緒にいてくださるのなら、どんなに痛くてつらい思いをしても平気ですわ」

 ぼくの言葉に三人はなんの躊躇もなく、そう答えた。
 ぼくは三人のその言葉に俯き、顔を上げ三人にふっと微笑む。

 「もう……。三人共、無茶がすぎるよ……」

 ルフィア達に怪我をさせたくなくて、せっかく避難させたのに……。

 「その位しないと、ノルンの友は務まらないだろう?」
 「例え無茶でも、絶対引きません!!」
 「そうですとも。どんな無茶でも皆で押し通せば良いのです」
 「……そうだね」

 三人の気持ちがすごく嬉しくて、顔がほころぶ……。
 三人も同じ気持ちなのか、清々しい笑顔を見せてくれる。
 ぼく達四人が笑いあってたその時だった。
 自身に降り積もった岩石を吹き飛ばしながら、黒竜お肉がその巨体をそびえ立たせ咆哮を上げた。

 「グオオオオオオオオッ!!」

 怒りの雄叫びを上げ、黒竜お肉がしっぽを振り回して暴れる。

 「リィナ、アイラ!!行くぞ!!」
 「はい!!」
 「かしこまりましたわ!!」

 ぼくが作ってあげた武器を手に三人はぼくを背後に庇うように前に立つ。

 「……っ」

 ーー夢で見たシルフィ達の背中と、ルフィア達の背中が重なって見えた。

 「ガアアアアアッ!!」

 黒竜お肉がその口内に炎を集め吐き出してくる。

 「行きます!!中級氷結魔法ミドル・ブリザード!!増幅発射ブーストショット!!連射!!」

 ぼくが防御陣プロテクションを発動するよりも早く、リィちゃんが魔導銃まどうガンで発動した中級攻撃魔法の威力を増幅して、黒竜お肉の顔めがけて連射した。
 高位氷結魔法ハイ・ブリザード並の威力に増幅された中級氷結魔法ミドル・ブリザードが連続発射され炎のブレスを相殺していく。
 黒竜お肉のブレスとリィちゃんの攻撃魔法が両者一歩も引かずお互いせめぎ合う。

 「付与エンチャント!!」

 アイちゃんが炎のブレスとぶつかり合う氷結魔法目がけて鞭を振るい、氷結魔法を自身の鞭に付与して走る。

 「はああああっ!!氷結鞭ブリザード・ウィップ!!」

 高位攻撃魔法並に増幅された氷結魔法を付与した鞭が、黒竜お肉の口元に巻き付き凍りつかせていく。

 「ムゴオオオオッ!!」

 両目の先から氷漬けにされ、黒竜お肉はブレスを封じ込められる。

 「姫様!!今ですわ!!」

 アイちゃんの叫びに応え、ルフィアが光刃剣を手に走る。

 「つるぎよ!!」

 最高位防御陣製エクス・プロテクションの刃が生成され、ルフィアが黒竜お肉が苦し紛れに振り回したしっぽを斬り飛ばした。

 「はあああああああっ!!」

 しっぽを切断された黒竜お肉が苦悶の叫びを上げるよりも早く、懐に飛び込んだルフィアが跳躍して黒竜お肉の首を根元から斬り落とした。
 斬り落とされた黒竜お肉の首が宙を舞い、地面に叩きつけられる。
 首を失った胴体が後ろに倒れながら大量の血を吹き出す。

 「こんな、馬鹿な……」

 落下の衝撃で顔半分を覆っていた氷が砕け、黒竜お肉は最後に一言、人の言葉に良く似た鳴き声を上げて息絶えた。

 「すごい……。三人共初めての実戦なのに、ドラゴンに勝っちゃったよ、リライザ……」
 「私も驚きました……。ノルンが消耗させていたとはいえ、人の言葉を話す高位の竜を倒すなんて……」

 ぼくとリライザが三人の成長に驚いていると、ルフィア達がぼくの方に振り返り笑う。

 「ノルン。勝ったぞ」
 「お姉様。わたしやれました」
 「これもお姉様との訓練のおかげですわ」

 自信が付いたのかどこか誇らしげに笑う三人。

 『ノエル。勝ったぞ』
 『お姉ちゃん。わたしでもやれたよ』
 『わたくし達が力を合わせれば勝てぬ物などありませんわ』

 不意に夢で見たノエルの幼なじみ達の姿がルフィア達と重なって見えた。

 「……うん。すごかったよ。三人共。初めての実戦なのに息ぴったりで驚いたよ」

 ぼくが三人の戦いぶりを誉めると、三人は照れくさそうに笑う。

 「はい。訓練の時もそうでしたけど、何故かお二人と息を合わせて戦うの上手くいくんです。お姉様」
 「リィナさんも?わたくしもです。お互いに出会ってからそんなに経ってませんのに……。何故かお二人との連携がしっくりくるんですよね……」
 「二人もか?実は私もそうなんだ……。連携の訓練にも先日混ぜてもらったばかりなのに、三人で戦うのが何だかすごくしっくりくる気がする……。まるでずっと以前から、こうして一緒に戦ってきたような……」
 「あ。それ、わたしも思いました。なんででしょうね?」
 「不思議ですわよね。今回が初めての実戦のはずなのに。お姉様を背後に庇って三人で魔物に立ち向かう。なぜだか以前にもこんなシチュエーションがあったような気がするんですの……。わたくし如きがこんな事を言うのはお姉様に対して無礼だと思いますけど……」

 「シルフィ、リィン、アイル……」

 ぼくがノエルが失った三人の幼なじみの名を呟くと、ルフィア達はぼくの方へ振り向き不思議そうに呟く。

 「何故だろう……。その名に聞き覚えがあるような気がする……」
 「……わたしもです。なんでだろ?」
 「もしかして、お姉様が新しい愛称を考えてくださったのですか?今の呼ばれ方、なぜだかすごくしっくり来ますわ……」
 「……っ。うぅ……」

 三人の反応を見て、ぼくは涙を流してしまう。

 「ノルン!?突然泣き出したりしてどうしたんだ!?」
 「お姉様!?もしかしてどこかお怪我を!?」
 「あああ!?大変ですわ!!どこです!?どこが痛むんですかお姉様!!」

 突然泣き出したぼくに三人が駆け寄ってきて、慌てふためく。

 「何でも……ひっく、ないの……。ただ、みんなに会えて、友達になれて、ぐすっ、良かった……」

 ルフィア。
 リィちゃん。
 アイちゃん。

 三人と出会えて、また、友達になれた。
 きっと、これはぼくに訪れた奇跡……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

追放された聖女は旅をする

織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。 その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。 国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

処理中です...