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  「エルバルト様は最近機嫌がよろしいですわね」

  「ん?そうかな」

  「ええ、とても楽しそうにしていらっしゃいますわ」

  「まぁ、そうかな」

  エルバルトは短い相槌で適当に躱す、その様子をリドウィンが意味ありげに見ているが、聞いてみても何も言わない
  学園の様子は相変わらずで、リチャードとルルアがイチャイチャとくっつき、ロイス、マーノ、サイラスがそれを取り囲んでちやほやとして、周りの者達は当然のように見守りルルアの味方をする

   エルバルト、リドウィン、ルイにも食指を伸ばそうと纏わりついてくる事にはうんざりとしているが、やんわりと上手くいなすようにしていた
  ライディンの王家とサイラー公爵家の放った影達からも次々と情報が入ってきていた

  その間にも時々エルバルトは休憩時間に裏庭に行き、隠れるようにベンチで読書をしているリーザロッテとの会話を楽しみにしていた

  「………………」

  ある日の昼、裏庭で模擬剣を振るい鍛錬していたルイの耳に、聞き覚えのある声が入ってきた
  声のする方に気配を消して近づいてこっそり覗くと、隅のベンチで楽しそうに笑い会話しているエルバルトとリーザロッテがいた
  あまりにも楽しそうなエルバルトに驚いたが、最近の機嫌の良さはこれかもしれないと納得して、そっとその場を離れて、リドウィン達の元に走った

  「まぁあ、エルバルト様が」

  「最近楽しそうにしていたのは、それだったのですわね」

  ルイの話しにセレスティアやアイリスが次々に驚きの声を上げる
  その中にいながら黙って笑みを浮かべているリドウィンにルイが肩に手を回して

  「お前、何か知ってたんだろう」

  「さあ、どうかな?」

  「まぁ、リドウィン様誤魔化す気ですか?」

  「アイリス、誤魔化すなんて人聞きが悪いだろう」

  「だって、リドウィン様程の方が何も知らないなんておかしいのですもの」

  気がつけばリドウィンとアイリスの仲の良い甘い言い合いに変わっている
  セレスティアとルイは手で顔を扇ぎながら

  「でも、それが知られると煩い人達がいますわよね」

  「いるなぁ」

  「別に疚しい事をしているわけではありませんしね」

  「留学生の王子が、その国の公爵令嬢と自国の文化や国風を語り合っていても、何らおかしな事ではないしな」

  「ところが、ここにはそれを騒ぎ立てる人がいますからね」

  何かある度にリーザロッテのせいにして騒ぐルルアとルルアを擁護してリーザロッテを責め立てるリチャード達
  なるべくリーザロッテの不利に働かないように、セレスティアやアイリスが裏庭にいるようにする事を話し合った

  「よくよく考えたら、リンドル公爵令嬢って、エルバルトの理想に近いんだよな」

  「聡明であんなに四面楚歌に立たされていても凛としていられる強さがある、それに加えて容姿も。理想でしょうね」

  
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