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  リンドル公爵家は外交を担っている家である
  他国で起こっている出来事も情報として知っているだろう
  だからこそ今リーザロッテの置かれている状況が理解出来ている
  エルバルトとリドウィンが公爵家に直接出向いたのはその為だ

  「リンドル公爵、これから起こる大方の予想はついているな?」

  「外交で訪れた国もありましたし、他の国からの情報も入ってきておりますので」

  「では話が早い。おそらく明日には状況がもっと悪くなるだろう」

  「かの男爵令嬢が聖女であると言いはじめました。今日、王太子殿下と共に教会に認定を求めに行っております。おそらくすんなりと認定されている事と思います」

  「なんと、聖女だなどと……我が国には聖女は伝説でしか」

  「だが、かの令嬢が自分は聖女だと言い出したのは他国でも同様だ。そして、かの令嬢の邪魔者である王太子や高位貴族の令息の婚約者達は、聖女を虐めた悪女とされる。……その後の事も、分かっていると思う」

  そう、婚約者達は聖女を虐め害した罪人として処刑されたり、娼婦に落とされたりしているのだ
  アルベルトも知っていたのだろう、蒼白になり肩を震わせている
  このままではリーザロッテも同様の目に合うことになるからだ

  「もう、逃れられないのですか」

  「今までは学園の中だけであったが、聖女と認定されれば、その影響はまず王都中に広がる。勿論シストラ王国の王族にも」

  「……そうでしょうね。他国の例でも国王が婚約者達の処分を容赦なく下したと聞いています」

  そしてその婚約者の令嬢達の家族も影響を受け、自分達の娘を虐げ、処刑に反対する事もなく娘を罪人に貶めているのだ
  アルベルトとフィリオは唇を噛み苦しげに顔を歪ませていた

  「これを、肌身離さずに身に付けていてください」

  魔石が付いたブレスレットを差し出した

  「家族に影響が出ればリーザロッテ嬢は苦しむだろう。これを身に付けて、出来る事ならば暫く領地に使用人達も含めて引き払ってもらいたい」

  「それで、リーザロッテを救えるのですか」

  「私達が、リーザロッテ嬢を守る。ただ、もうこの国は救えないだろう。あの男爵令嬢が現れて、王太子殿下達に影響を及ぼした時点で遅かった」

  アルベルトとフィリオは俯いている
  国を見捨てる事になることに葛藤しているのだろう
  でももうどちらかしか選べないのだ

  「リーザロッテ嬢を犠牲にして自分達も国と共に滅ぶか、リーザロッテ嬢を救って国を捨てるか」

  元々、この国を救う為に来たのではなく、アレに侵された国を観察して研究の為の留学である
  それに、もしアレの影響を解いたとしても、数ヶ月に渡りリーザロッテを虐げてきた事に変わりはないのだ

  「私は、娘と家族、そして仕えてくれる使用人達や領民を守りたいのです」

  アルベルトがそう答えたのを聞けば、エルバルトは結論を告げた

  「この国は、廃れ滅びる。私達は、リーザロッテ嬢を必ず守る。公爵家と領地は然るべく取り計らうよう働き掛ける」

  「ミンス男爵令嬢が現れた時に、この国の行く末は決まったのでしょう。私達ではリーザロッテを守れないでしょう。エルバルト第二王子殿下、リーザロッテをよろしくお願い致します」 
  

  
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