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  アルベルトは執事と家令メイド長を呼ぶと、説明は後でするとしてすぐに領地に戻る準備をするように命じた
  急な事で驚きながらも、アルベルトとフィリオのいつもとは違う緊迫した雰囲気に、粛々と準備を進めた
  リーザロッテ付きの侍女を二人と料理長の夫婦だけを残し、屋敷からは一人残らず領地に引き払うとなれば準備は大掛かりであった

  その間に学園の寮に使いを出してセレスティア達三人を公爵邸に呼び出した
  すぐに駆けつけた三人も公爵家の者達との挨拶を済ませると

  「エルバルト殿下、リーザロッテ様はお屋敷に残すおつもりでございますの?」

  「ああ、うちの騎士を何人か付ける予定だが」

  「学園の行き帰りなどもありますし、危険ではありません?」

  教会でルルアが聖女だと認定されてしまえば、学園の者達は心酔するようになるであろう
  告示され、王都民に顔見せするような事になれば、人々がどのような動きを見せるか分からない
  過去の国では、出先の馬車を襲われるなどという事も起きているのだ
  ライディン王国の騎士達は魔法が使える為守りは堅いが、いつどんな事が起こるか分からない状況に置かれるのである

  「屋敷に残す者も、かなりな危険に身を置く事になるか」

  「私達の寮に入ってもらいましょうか。あそこなら公爵家の広大な屋敷よりは、騎士達が確実に守りを固められます」

  エルバルトとリドウィンは即座に計画を変更し、侍女の二人だけは寮の中でリーザロッテに付いてもらい、料理長の夫婦は他の者達と一緒に領地に向かってもらうことにする事とした

  準備は着々と進み、真っ暗な闇が薄暗くなってきた明け方には出立の準備が整った
  セレスティアが全員に回復魔法と癒し魔法を掛け、一睡もしていなかった者達の体力と気力が回復した
  念の為アイリスが認識阻害の魔法を一行に掛けて、公爵家とは分からないようにする
  加護の掛けられた魔石のペンダントをアルベルトに渡した

  「なるべく、他の領地を通過するのを避けて、森の中を進んでください。それには加護が掛けられていますから、危険から一行を守ってくれます」

  リドウィンがアルベルトに言い含め、アイリスが認識阻害の魔法の解除の暗号を、公爵領に入ったら唱えるようにと伝える
  セレスティアも回復の魔法の加護も掛けている為疲弊する事なく領地まで辿りつけるだろうと伝えると

  リンドル公爵家の者達は深々と頭を下げ

  「会ったばかりの私達に、何から何まで有難う御座います。リーザロッテを、どうか、よろしくお願い致します」

  これから起こるであろう事に、無力であることを不甲斐なく思いながらも、今自分達一家が出来る事は王都を離れ、影響を受けずにリーザロッテを守る事だと、それぞれがリーザロッテと束の間の別れであると惜しみながら別れを告げた

  使用人達や護衛の騎士達も丁寧に頭を下げ、一行は領地に向け出発した
  それを見送ったエルバルト達はリーザロッテを伴い、急ぎ学園寮に引き返した

  
  
  
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