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  大きな箱を抱えて廊下を歩くルイの姿があった
  中には出来上がったドレスが入っている
  律儀で実直なルイは、出来上がったドレスにカードを添えて届けさせる、というような事はせずに自分の手で届けに行くようだ

  廊下に控えている護衛達に断りをいれると、部屋の扉を叩いた
  侍女が扉を開けてルイの姿を確認すると部屋に招き入れられる

  テーブルの上に箱を置くと、少し赤くなった顔を片手で覆い隠して、その姿をエミリアが不思議そうに眺めた

  「エミリア嬢、明日の夜会に、エスコートさせてもらえないだろうか」

  一つ咳払いすると、真っ直ぐにエミリアを見つめながら問い掛ける

  「私を、ですか?」

  エミリアが驚きとともに思わず問い返すと、ルイはこくりと頷いた
  夜会は、女性は必ず誰かがエスコートをして参加するのだが、他国からの参加という事でエミリアと辺境伯夫人は、リーザロッテの兄であるフィリオと公爵夫人とともに会場入りする事になっていた

  「ご迷惑でないのでしたら、よろしくお願いしますわ」

  「迷惑など、私の方から申し込んだのに。·····それから」

  チラッと箱の方に視線を向けてエミリアに視線を戻し

  「ドレスを、贈らせてほしい。エミリア嬢が嫌でなければ、明日、そのドレスを着て夜会に出てもらえたら、嬉しく思う」

  驚いたエミリアは、ルイが抱えてきた大きな箱を見つめている
  いきなりドレスを贈ると言われれば戸惑いが大きいのだろう

  「無理にとは言わない。俺が、贈りたいと思って勝手に作らせてもらった。エミリア嬢の意思で、もし、着てもいいと思ってもらえたらで構わない」

  早口でそう告げると部屋を後にしようとするルイに

  「ありがとうございます。ロットナー様」

  エミリアの声が追いかけてきた、ルイは片手を上げて、では、明日。と言って部屋を出た
  扉を閉めると、ドアにもたれて赤くなった顔を隠しながら息を吐いたルイを、廊下にいる護衛達が不思議そうに眺めていた
  
  翌日、ルイは騎士団の紺色の軍服をモチーフにした正装をしてエミリアを迎えに行く

  扉から出てきたエミリアは、ルイの贈ったワインレッドに近い赤みのドレスを着ていた
  落ち着いた赤みのドレスは、黒髪が映えて華やかな雰囲気のエミリアにとても似合っている
  思わず見惚れてしまいながらも、赤くなった顔を隠すようにした

  「とても綺麗だ」

  「ありがとうございます。ロットナー様      似合っていますか?」

  美しい笑みを浮かべたエミリアが問い掛けると、はあっと天を仰いだルイはそのままの勢いでこくりと頷き

  「もの凄く、似合っている」

  そう言って手を差し出す。控え目に手を添えたエミリアをエスコートして王宮の大広間に向かった

  
  
  

  

  
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