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42シストラ王国では
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転移させられた国王一行は、王都の真ん中で呆然としていた。
ライディン王国との国交断絶を再度宣告され、取り引きの凍結も、魔法石一つ持ち帰ってくる事も出来なかった。
ルルアは一人、リドウィンに嵌められたバングルを眺めて撫で回しながらうっとりしている。
「やっぱりリドウィン様はルルアの事を好きなんだわ。あの意地悪な王太子の前だから言えなかったのね────────でもっ、リーザロッテがエルバルト様の婚約者になったなんておかしいわっ、エルバルト様も私を好きになるはずなのに!!」
急に思い出したように顔を歪めて怒鳴り始めたルルアを、リチャード達は呆然と見ていたが、国王達は王都にいる民達の様子が少し変わっている事に気がついた。
ライディン王国に出向く前はルルアが街に出れば、聖女様聖女様と目を輝かせて崇めていた民達が、射るような鋭い視線を向けているのだ。
一週間以上王国を離れていた為に、民達が掛かっていた魅了が解けかけていたのだ。
リチャード達も戸惑ったように周囲をキョロキョロと見回していると、ようやくルルアも気づいたようで、慌てて儚げな雰囲気を装い、手を胸の前で握りしめて
「ごめんなさい··········リーザロッテ様が、邪魔をして··········ルルア達は、ライディン王国の国王様に会わせてもらえなかったの·····ルルアが、リチャード様を奪ったと、憎まれていて·····ごめんなさい·····」
瞳を潤ませて魅了の魔力を声に乗せたはずだったが、今までならすぐに魅了に掛かった民達が、ルルア様のせいではありません、リーザロッテが悪いのだと、リーザロッテを悪し様に罵るはずなのに、誰一人そんな声をあげなかったのだ。
それどころか、ルルアに向ける視線が更に鋭くなっている。
街にいた貴族達、学園に通っていた子女達は
「またリーザロッテ様のせいにしているわ」
「学園にいた時もそうだったわ、何かあれば全部リーザロッテ様のせいにして」
「でも、何故かそう言われるとそんな気がして·····リーザロッテ様に酷い事を言ってしまっていたわ」
「何故だったのかしら·····」
そう囁きあいはじめると、あちらこちらで同じような声が上がり始めた。
ルルアは焦りはじめる、誰も魅了に掛からないのだ。
「どうしてどうして··········リチャード様、皆ルルアの味方をしてくれないの。リチャード様はルルアの味方ですよね」
隣りに立っているリチャードの腕に縋り付いて見上げる。
リチャードも戸惑っていた。
愛しいと思っていたルルアの声も、無遠慮に身体を押し付けてくる態度にも、今までのような気持ちが湧いてこないのだ。
すぐに抱きしめて優しい言葉を掛けてもらえると思っていたルルアは、愕然とした。
ライディン王国との国交断絶を再度宣告され、取り引きの凍結も、魔法石一つ持ち帰ってくる事も出来なかった。
ルルアは一人、リドウィンに嵌められたバングルを眺めて撫で回しながらうっとりしている。
「やっぱりリドウィン様はルルアの事を好きなんだわ。あの意地悪な王太子の前だから言えなかったのね────────でもっ、リーザロッテがエルバルト様の婚約者になったなんておかしいわっ、エルバルト様も私を好きになるはずなのに!!」
急に思い出したように顔を歪めて怒鳴り始めたルルアを、リチャード達は呆然と見ていたが、国王達は王都にいる民達の様子が少し変わっている事に気がついた。
ライディン王国に出向く前はルルアが街に出れば、聖女様聖女様と目を輝かせて崇めていた民達が、射るような鋭い視線を向けているのだ。
一週間以上王国を離れていた為に、民達が掛かっていた魅了が解けかけていたのだ。
リチャード達も戸惑ったように周囲をキョロキョロと見回していると、ようやくルルアも気づいたようで、慌てて儚げな雰囲気を装い、手を胸の前で握りしめて
「ごめんなさい··········リーザロッテ様が、邪魔をして··········ルルア達は、ライディン王国の国王様に会わせてもらえなかったの·····ルルアが、リチャード様を奪ったと、憎まれていて·····ごめんなさい·····」
瞳を潤ませて魅了の魔力を声に乗せたはずだったが、今までならすぐに魅了に掛かった民達が、ルルア様のせいではありません、リーザロッテが悪いのだと、リーザロッテを悪し様に罵るはずなのに、誰一人そんな声をあげなかったのだ。
それどころか、ルルアに向ける視線が更に鋭くなっている。
街にいた貴族達、学園に通っていた子女達は
「またリーザロッテ様のせいにしているわ」
「学園にいた時もそうだったわ、何かあれば全部リーザロッテ様のせいにして」
「でも、何故かそう言われるとそんな気がして·····リーザロッテ様に酷い事を言ってしまっていたわ」
「何故だったのかしら·····」
そう囁きあいはじめると、あちらこちらで同じような声が上がり始めた。
ルルアは焦りはじめる、誰も魅了に掛からないのだ。
「どうしてどうして··········リチャード様、皆ルルアの味方をしてくれないの。リチャード様はルルアの味方ですよね」
隣りに立っているリチャードの腕に縋り付いて見上げる。
リチャードも戸惑っていた。
愛しいと思っていたルルアの声も、無遠慮に身体を押し付けてくる態度にも、今までのような気持ちが湧いてこないのだ。
すぐに抱きしめて優しい言葉を掛けてもらえると思っていたルルアは、愕然とした。
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