彼女と僕と

マイリトルジョー

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編入生

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 『青は藍より出でて―』
 先生の声が、静かな教室に響く。
 真剣に先生の声に耳を傾けるものもいれば、授業に関係あるのか―恐らく関係ない―ことを何かに一生懸命書き込む者もいる。居眠りに勤しむものもいる。
 僕は、先生の声に耳を傾けながら、窓の外を見やった。
 肌寒かった季節が終わりに近づき、穏やかな風が窓から流れ込む。心地よい温度に、気持ちがまどろむのを感じる。

 高校三年生になり、どこか皆気持ちが忙しなくなる人も増えてきて―自分もその1人である―かえって集中が続かない気がする。

  「じゃあ響野ひびきの次のところ読んでくれるか」
 僕はちゃんと聞き逃さずに、言われた箇所を読み終えた。

 淡々と過ごす日々、単調に進む時間、それなりに楽しく、平凡だけど平穏に暮らしている。

 「ユウ帰ろうぜ」
 授業が終わると、友人たちが声をかけてくる。
 「今日は漫画の新刊が出るので、本屋に寄りましょう」
 僕たちは、どちらかと言えば、明るいグループでは無いのだけど、十分楽しかった。

 「ごめん、今日部活行かなきゃ」
 僕は面倒くささを表現するように苦笑いで言う。
 ひとつ上の先輩と入学前から知り合いで、その縁で写真部に入部していた。
 当初はあまり忙しくない、むしろ暇、くらいの話だったが、ちょうど自分が入部した時に顧問になった先生が積極的にコンテストへの応募や、他部活動の写真撮影協力に参加する人で、あまり時間的な余裕はなかった。
 まぁ、それでも、他の部員はバイトを理由に休んでいるのだけれど。
 「そか、ならしょうがないな」
 「また帰りましょう」
 2人と別れてから、写真部が部室として使っている、パソコン室へ向かう。

 途中、職員室を通ろうとすると、女子生徒が母親らしき人と出てきた。
 小柄で髪はハーフツインテールにしている。かわいらしく、大人しい雰囲気の印象だった。
 その彼女たちを入口のところで見送っていたのは、自分のクラスの担任だった。
 うちのクラスにあんな子いたっけな、と思いながら、そのまま部室へと向かった。

 ―次の日、朝教室に入ると、自分の席の隣にあるはずのない机が置かれていた。
 誰も何も聞いていないらしい。
 僕は想像ではあるけど、合点が行く。

 と、間もなく常田先生が入ってきて、ホームルームが始まる。
 「今日は早速、皆さんにご報告があります」
 転校生ですかー?という誰かからのガヤに、先生は、『ご名答』と笑いながら、
 「急ではありますが、編入生です」
 扉を開けると、入って、と促す。
 入ってきたのは、昨日みかけた女子生徒だった。
 「神園えるです。今日からよろしくお願いします」
 しばしの沈黙の後、どこからともなく聞こえた拍手につられるように、みんなで拍手をした。
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