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Scene1 目撃しちゃいました
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(!!きゃぁぁぁ・・ルーカス様・・何て表情を・・・あんなお顔見たことない・・・)
庭の茂みの陰から目の覗かせているのは、シャーロット。コールマン子爵家令嬢。ふわふわのブラウンヘアと曇りのないピンクの瞳が印象的な愛らしい少女だ。
そして彼女がいま目撃しているのは、婚約者であるルーカスの浮気現場である。大木の陰で抱き合う男女。ルーカスは激しく深く唇を重ね合わせ、恍惚の表情で女の胸に手を入れている。シャーロットは、見てはいけないものを見てしまっている自覚はあるが、目が離せなかった。
ルーカスは、コーネリアス伯爵家の令息だ。婚約して五年になるが、シャーロットは彼から手を握られたことさえなかった。
彼には、今日訪ねることを伝えていたのだが、少し早く到着しまったシャーロットは、庭をこっそり散策していた。それがいけなかった。婚約者の浮気現場を目撃してしまったのだから・・・
(あの方は確か・・バーガンディ男爵家のシーラ様ね・・・そうよね。男性はやっぱりボン・キュッ・ボンな豊満な身体がお好きよね)
そう思ったシャーロットは、自身の胸に目を落とすと、お世辞にも豊満とは言い難い身体が目に入った。まさに壁である。
(はぁぁ・・私もあんなふうに生まれた・・くはないわね。重そうだし、お仕事の邪魔になりそうだし・・それに別に見事なお胸がなくたって、私、幸せだもの)
シャーロットは考えを整理するため、静かにその場を後にした。
伯爵家を出たシャーロットは、王都をボーッと歩いていた。目的もなく、ただ思考を整理するためだけに、プラプラとしている。
(ルーカス様があんなことするなんて・・・しかもあんなに激し・・・)
ここでシャーロットの顔は、ボッボッボッと真っ赤になる。脳裏にさっきの光景が浮かんだからだ。
シャーロットも友人からそっち方面の話は色々聞いてはいたものの、ああして目撃することは初めてだった。想像していたより何とも艶めかしく、まるで獣のような行いに、シャーロットの無垢な心は動揺していた。
しかしその動揺が、婚約者に浮気されたことによるものではないことに、彼女はまだ気付いていない。
(ちょっと領地に帰ってこようかな~。みんなの顔、見たくなっちゃったし・・・)
婚約者の浮気現場目撃という事件があったにも関わらず呑気なシャーロットは、子爵家に向かって歩き出した。
◇◇◇◇◇
屋敷に帰ったシャーロットは、父エルウィンに領地に帰る許可をもらった。理由は、領地にいる母レジーナの顔を見てくるというものだ。別にそれは、父も兄ギルバートも皆ぷらっと領地に帰ることは珍しくなかった。
もちろんルーカスの浮気のことは、まだ内緒だ。自分の考えがまとまるまで、話すつもりはなかった。話せば、自分がどうしたいのか聞かれることが分かっていたからだ。
シャーロットの両親は、どんなことでも子どもたちの意志を尊重した。決して、親の都合を無理強いすることはない。それが教育方針なのだろう。
ルーカスとの婚約もそうだ。先方から話が持ち込まれ、彼女の両親は娘の婚約を急いでいたわけでもなかったが、シャーロットの“婚約してもいい”という一言で婚約が結ばれたのだ。
ちょうどエルウィンも領地に大事な用があるそうで、明日出発するところだった。思いがけず、愛娘とのプチ旅行となったエルウィンは小躍りしていたが、一人留守番のギルバートは、不満そうだ。
「ギルお兄様、お土産たくさん買ってきますから、そんなに拗ねないでくださいね」
「いや、別に俺は拗ねてるわけではないよ。ただ、せっかくロッティと二人っきりになれると思ったのに・・・」
「お兄様、二人で出かけるときはいつも二人っきりですよ?」
「ロッティ・・・そういう意味じゃなくてだね・・・まぁいい。楽しんでこいよ」
ギルバートは苦笑いを浮かべながら、妹の頭をポンポンとした。
◇◇◇◇◇
翌日早朝、馬車に乗ってシャーロットは父親と領地に向かった。エルウィンと共に馬車に乗ると、ガタゴトと揺れる車内でシャーロットは心地よい振動に身を預けていた。
(二ヶ月ぶりかな~。お母様に会うのは・・フフッ嬉しいな~)
ニコニコと嬉しそうなシャーロットを向かいに座るエルウィンが、優しい眼差しで見つめる。
「ロッティ、そのワンピースも似合ってるが、そろそろ新しいものが欲しくないかい?」
父親の申し出に窓の外に向けていた視線を戻すと、シャーロットは思案する。しかし、答えはすぐに出た。
「お父様、ありがとうございます。でも洋服でお腹は満たせませんよ。今あるもので、充分です」
「ロッティ、堅実なのはいいことだが、たまには父の願いを聞いてくれないのかい?」
「堅実なのは、お父様とお母様ですよ。それに領民のもしもの時のために、お金は取っておかなくてはいけません。これはお父様たちから教わったことですが、違いましたか?」
これにエルウィンは一瞬目を丸くしたが、すぐに優しく微笑んだ。
「相変わらずだなぁ。それではこうしよう!エーデルの店にお願いしよう。それなら無駄遣いではないし、エーデルの店の売上になるんだから。領地でお金を回すのも、大事なうちの仕事だからね。それに最近弟子を取ったようだから、その子の技術向上にも貢献できる」
エルウィンはそう言うと、ウインクをした。
(へぇ、お弟子さんを取ったんだ。エーデルが、お師匠さんなんて想像がつかないなぁ。でもお父様の言う事も最もね)
そう納得したシャーロットは「分かりました。それでしたら、遠慮なく」と頷くと、エルウィンから「うん。みんな喜ぶぞ」というセリフと、満足気な笑顔が返ってきたのだった。
それから数時間後、シャーロットたちを乗せた馬車は、無事にコールマン子爵領に入った。
そして、このいつもと変わらぬ領地で、思わぬ出会いがシャーロットを待っているのだが、それを彼女はまだ知らない。
庭の茂みの陰から目の覗かせているのは、シャーロット。コールマン子爵家令嬢。ふわふわのブラウンヘアと曇りのないピンクの瞳が印象的な愛らしい少女だ。
そして彼女がいま目撃しているのは、婚約者であるルーカスの浮気現場である。大木の陰で抱き合う男女。ルーカスは激しく深く唇を重ね合わせ、恍惚の表情で女の胸に手を入れている。シャーロットは、見てはいけないものを見てしまっている自覚はあるが、目が離せなかった。
ルーカスは、コーネリアス伯爵家の令息だ。婚約して五年になるが、シャーロットは彼から手を握られたことさえなかった。
彼には、今日訪ねることを伝えていたのだが、少し早く到着しまったシャーロットは、庭をこっそり散策していた。それがいけなかった。婚約者の浮気現場を目撃してしまったのだから・・・
(あの方は確か・・バーガンディ男爵家のシーラ様ね・・・そうよね。男性はやっぱりボン・キュッ・ボンな豊満な身体がお好きよね)
そう思ったシャーロットは、自身の胸に目を落とすと、お世辞にも豊満とは言い難い身体が目に入った。まさに壁である。
(はぁぁ・・私もあんなふうに生まれた・・くはないわね。重そうだし、お仕事の邪魔になりそうだし・・それに別に見事なお胸がなくたって、私、幸せだもの)
シャーロットは考えを整理するため、静かにその場を後にした。
伯爵家を出たシャーロットは、王都をボーッと歩いていた。目的もなく、ただ思考を整理するためだけに、プラプラとしている。
(ルーカス様があんなことするなんて・・・しかもあんなに激し・・・)
ここでシャーロットの顔は、ボッボッボッと真っ赤になる。脳裏にさっきの光景が浮かんだからだ。
シャーロットも友人からそっち方面の話は色々聞いてはいたものの、ああして目撃することは初めてだった。想像していたより何とも艶めかしく、まるで獣のような行いに、シャーロットの無垢な心は動揺していた。
しかしその動揺が、婚約者に浮気されたことによるものではないことに、彼女はまだ気付いていない。
(ちょっと領地に帰ってこようかな~。みんなの顔、見たくなっちゃったし・・・)
婚約者の浮気現場目撃という事件があったにも関わらず呑気なシャーロットは、子爵家に向かって歩き出した。
◇◇◇◇◇
屋敷に帰ったシャーロットは、父エルウィンに領地に帰る許可をもらった。理由は、領地にいる母レジーナの顔を見てくるというものだ。別にそれは、父も兄ギルバートも皆ぷらっと領地に帰ることは珍しくなかった。
もちろんルーカスの浮気のことは、まだ内緒だ。自分の考えがまとまるまで、話すつもりはなかった。話せば、自分がどうしたいのか聞かれることが分かっていたからだ。
シャーロットの両親は、どんなことでも子どもたちの意志を尊重した。決して、親の都合を無理強いすることはない。それが教育方針なのだろう。
ルーカスとの婚約もそうだ。先方から話が持ち込まれ、彼女の両親は娘の婚約を急いでいたわけでもなかったが、シャーロットの“婚約してもいい”という一言で婚約が結ばれたのだ。
ちょうどエルウィンも領地に大事な用があるそうで、明日出発するところだった。思いがけず、愛娘とのプチ旅行となったエルウィンは小躍りしていたが、一人留守番のギルバートは、不満そうだ。
「ギルお兄様、お土産たくさん買ってきますから、そんなに拗ねないでくださいね」
「いや、別に俺は拗ねてるわけではないよ。ただ、せっかくロッティと二人っきりになれると思ったのに・・・」
「お兄様、二人で出かけるときはいつも二人っきりですよ?」
「ロッティ・・・そういう意味じゃなくてだね・・・まぁいい。楽しんでこいよ」
ギルバートは苦笑いを浮かべながら、妹の頭をポンポンとした。
◇◇◇◇◇
翌日早朝、馬車に乗ってシャーロットは父親と領地に向かった。エルウィンと共に馬車に乗ると、ガタゴトと揺れる車内でシャーロットは心地よい振動に身を預けていた。
(二ヶ月ぶりかな~。お母様に会うのは・・フフッ嬉しいな~)
ニコニコと嬉しそうなシャーロットを向かいに座るエルウィンが、優しい眼差しで見つめる。
「ロッティ、そのワンピースも似合ってるが、そろそろ新しいものが欲しくないかい?」
父親の申し出に窓の外に向けていた視線を戻すと、シャーロットは思案する。しかし、答えはすぐに出た。
「お父様、ありがとうございます。でも洋服でお腹は満たせませんよ。今あるもので、充分です」
「ロッティ、堅実なのはいいことだが、たまには父の願いを聞いてくれないのかい?」
「堅実なのは、お父様とお母様ですよ。それに領民のもしもの時のために、お金は取っておかなくてはいけません。これはお父様たちから教わったことですが、違いましたか?」
これにエルウィンは一瞬目を丸くしたが、すぐに優しく微笑んだ。
「相変わらずだなぁ。それではこうしよう!エーデルの店にお願いしよう。それなら無駄遣いではないし、エーデルの店の売上になるんだから。領地でお金を回すのも、大事なうちの仕事だからね。それに最近弟子を取ったようだから、その子の技術向上にも貢献できる」
エルウィンはそう言うと、ウインクをした。
(へぇ、お弟子さんを取ったんだ。エーデルが、お師匠さんなんて想像がつかないなぁ。でもお父様の言う事も最もね)
そう納得したシャーロットは「分かりました。それでしたら、遠慮なく」と頷くと、エルウィンから「うん。みんな喜ぶぞ」というセリフと、満足気な笑顔が返ってきたのだった。
それから数時間後、シャーロットたちを乗せた馬車は、無事にコールマン子爵領に入った。
そして、このいつもと変わらぬ領地で、思わぬ出会いがシャーロットを待っているのだが、それを彼女はまだ知らない。
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