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Scene2 皆さんの歓迎っぷりが嬉しいです
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シャーロットが、久し振りに見る穏やかな景色に感動していると、外から「子爵様~」「シャーロット様~」と歓迎の声がかけられる。声をかけるのは、領民たちだ。
コールマン子爵領は、潤っていた。堅実な領地経営により作物の収穫が順調というのもさることながら、何よりエルウィンをはじめとする子爵家面々の人柄が領民の心を掴み、それがまた彼らの意識向上に繋がり、好循環を生み出していた。
それでも自然というのは、いつ牙を剥くか分からない。金遣いの派手な貴族も多い中、凶作となった時に備え、子爵たちは無駄遣いを嫌っていた。かと言って決してケチではない。今のシャーロットのワンピースのように使うときは使う。要するに堅実なのだ。それ故、子爵家は領民から慕われていた。
その証拠が、先程からあちこちからかけられる声だった。そんな、領民たちの声に笑顔で手を振り応えるシャーロットとエルウィンを乗せた馬車は、屋敷へと入って行った。
屋敷についたシャーロットは、早速母レジーナに会いに行く。レジーナは、シャーロットを見ると涙ぐんだ。
「まぁぁぁぁ!!ロッティちゃん!!!会いたかった!まさか来てくれるなんて、嬉しいわ!」
二ヶ月ぶりの再会にやや大袈裟に喜ぶレジーナ。ギュッと抱きしめる様は、いつもの光景だ。
「お母様、突然ごめんなさい。お母様に会いたくなっちゃって」
「・・もう!なんて天使なの!ロッティちゃんは!」
そう言うと、レジーナはもう一度シャーロットを強く抱きしめ、そんな母親に苦笑しながら、シャーロットは母の背中をさすった。
ひとしきり挨拶を済ませると、シャーロットはワンピースを作るためエーデルの店を訪れた。店に入ると、突然の訪問に驚く女性が「まあ!シャーロット様!」と声を上げる。
「こんにちは。エーデルさん」
「さっきお戻りになったと聞いたばかりですよ。お越しいただき、嬉しゅうございます」
嬉々とした声を上げるのは、この仕立て屋の店主エーデルだ。女ひとりで切り盛りしているため、忙しい時はなかなか手が回らず、完成まで時間を要した。そのためエルウィンの言っていた弟子をとったのだろうとシャーロットは思う。
「今日はワンピースをお願いしようと思って・・いま忙しい?」
「まあ、お陰様で忙しくさせてもらってます。ああ、弟子というには大袈裟ですが、手伝いを雇ったんですよ。コール!・・・コール!」
エーデルがその弟子の名前を呼ぶと、奥の扉から「はい?お師匠様」と少年が顔を出す。素直そうなブロンドヘアの少年コールはシャーロットを見ると、目を輝かせ「シャーロット様ですね!」と駆け寄った。
「こんにちは、コールさん」
「初めまして!お師匠様から・・というか街の人たちから、子爵家の方々のお話は伺ってます。お会いできて光栄です!」
そう言って頭を下げるコール。自分などそんな大した人間ではないというのに、何だか自分のほうが申し訳ないと思うほど、シャーロットは恐縮してしまう。そして元気よく頭を下げる彼の姿は愛らしく、シャーロットは微笑んだ。すると、横からエーデルが口を挟んだ。
「ほらね。可愛いでしょう?うちの看板娘ならぬ看板息子ですよ」
そう言ったエーデルの顔は、嬉しさで緩んでいた。
そんなやり取りの後、シャーロットはまずどんなデザインや色の希望を伝える。そして、エーデルに採寸してもらうのだが、この作業も久々である。
こうしてワンピース作りの依頼したシャーロットは、「精一杯作らせていただきます!」というエーデルとコールの声を背に受け、店を後にした。
シャーロットは、屋敷へ戻る前に街を回っていた。あの問題をどうするべきか考えたかったのだが、街の人たちから次々と声をかけられ、ささやかなプレゼントを渡される。とても考え事どころではなかった。シャーロットは考え事を諦めると、領民たちとの交流に専念した。
花一輪、ひと包みのお菓子、綺麗な石ころ、可愛らしい髪飾り等々。それ等は、どれも温かくシャーロットの心を満たした。店で土産を買ったおまけの意味もあったが、大抵はシャーロットを慕うささやかな気持ちの表れだった。
そして、そんな楽しい時間はあっという間に過ぎ去り、気づけば日は傾き始めていた。そろそろ帰ろうと思い、屋敷へ足を向けた時だった。荷物を両手いっぱいに抱えるシャーロットの前に、数人の男たちが立ち塞がった。
皆若く、二十代前半くらいだろうか。仕立ての良い身なりをしており、屈強な体つきをしている。
「私に何か御用でしょうか?」
シャーロットが首を傾げ尋ねると、男たちの後ろから一人の男が姿を見せた。ブロンドヘアに赤い瞳が印象的だ。そしてその赤目の男は、シャーロットの荷物を見ると、屈強な男たちに指示をする。
「荷物を抱える女性を前にボサッとしてないで、手伝ってあげなよ」
それを合図に一斉に荷物を抱えていた両腕はすっからかんになり、かわりに赤目の男に腕を取られた。そのあっという間で強引な行動に呆気にとられるシャーロット。そして「先に屋敷に帰っていいよ」と言われた男たちの大きな背中は、あっという間に街の喧騒に飲み込まれていった。
こうして赤目の男と取り残されたシャーロットは、強引に腕を引かれながら歩を進めることになった。
コールマン子爵領は、潤っていた。堅実な領地経営により作物の収穫が順調というのもさることながら、何よりエルウィンをはじめとする子爵家面々の人柄が領民の心を掴み、それがまた彼らの意識向上に繋がり、好循環を生み出していた。
それでも自然というのは、いつ牙を剥くか分からない。金遣いの派手な貴族も多い中、凶作となった時に備え、子爵たちは無駄遣いを嫌っていた。かと言って決してケチではない。今のシャーロットのワンピースのように使うときは使う。要するに堅実なのだ。それ故、子爵家は領民から慕われていた。
その証拠が、先程からあちこちからかけられる声だった。そんな、領民たちの声に笑顔で手を振り応えるシャーロットとエルウィンを乗せた馬車は、屋敷へと入って行った。
屋敷についたシャーロットは、早速母レジーナに会いに行く。レジーナは、シャーロットを見ると涙ぐんだ。
「まぁぁぁぁ!!ロッティちゃん!!!会いたかった!まさか来てくれるなんて、嬉しいわ!」
二ヶ月ぶりの再会にやや大袈裟に喜ぶレジーナ。ギュッと抱きしめる様は、いつもの光景だ。
「お母様、突然ごめんなさい。お母様に会いたくなっちゃって」
「・・もう!なんて天使なの!ロッティちゃんは!」
そう言うと、レジーナはもう一度シャーロットを強く抱きしめ、そんな母親に苦笑しながら、シャーロットは母の背中をさすった。
ひとしきり挨拶を済ませると、シャーロットはワンピースを作るためエーデルの店を訪れた。店に入ると、突然の訪問に驚く女性が「まあ!シャーロット様!」と声を上げる。
「こんにちは。エーデルさん」
「さっきお戻りになったと聞いたばかりですよ。お越しいただき、嬉しゅうございます」
嬉々とした声を上げるのは、この仕立て屋の店主エーデルだ。女ひとりで切り盛りしているため、忙しい時はなかなか手が回らず、完成まで時間を要した。そのためエルウィンの言っていた弟子をとったのだろうとシャーロットは思う。
「今日はワンピースをお願いしようと思って・・いま忙しい?」
「まあ、お陰様で忙しくさせてもらってます。ああ、弟子というには大袈裟ですが、手伝いを雇ったんですよ。コール!・・・コール!」
エーデルがその弟子の名前を呼ぶと、奥の扉から「はい?お師匠様」と少年が顔を出す。素直そうなブロンドヘアの少年コールはシャーロットを見ると、目を輝かせ「シャーロット様ですね!」と駆け寄った。
「こんにちは、コールさん」
「初めまして!お師匠様から・・というか街の人たちから、子爵家の方々のお話は伺ってます。お会いできて光栄です!」
そう言って頭を下げるコール。自分などそんな大した人間ではないというのに、何だか自分のほうが申し訳ないと思うほど、シャーロットは恐縮してしまう。そして元気よく頭を下げる彼の姿は愛らしく、シャーロットは微笑んだ。すると、横からエーデルが口を挟んだ。
「ほらね。可愛いでしょう?うちの看板娘ならぬ看板息子ですよ」
そう言ったエーデルの顔は、嬉しさで緩んでいた。
そんなやり取りの後、シャーロットはまずどんなデザインや色の希望を伝える。そして、エーデルに採寸してもらうのだが、この作業も久々である。
こうしてワンピース作りの依頼したシャーロットは、「精一杯作らせていただきます!」というエーデルとコールの声を背に受け、店を後にした。
シャーロットは、屋敷へ戻る前に街を回っていた。あの問題をどうするべきか考えたかったのだが、街の人たちから次々と声をかけられ、ささやかなプレゼントを渡される。とても考え事どころではなかった。シャーロットは考え事を諦めると、領民たちとの交流に専念した。
花一輪、ひと包みのお菓子、綺麗な石ころ、可愛らしい髪飾り等々。それ等は、どれも温かくシャーロットの心を満たした。店で土産を買ったおまけの意味もあったが、大抵はシャーロットを慕うささやかな気持ちの表れだった。
そして、そんな楽しい時間はあっという間に過ぎ去り、気づけば日は傾き始めていた。そろそろ帰ろうと思い、屋敷へ足を向けた時だった。荷物を両手いっぱいに抱えるシャーロットの前に、数人の男たちが立ち塞がった。
皆若く、二十代前半くらいだろうか。仕立ての良い身なりをしており、屈強な体つきをしている。
「私に何か御用でしょうか?」
シャーロットが首を傾げ尋ねると、男たちの後ろから一人の男が姿を見せた。ブロンドヘアに赤い瞳が印象的だ。そしてその赤目の男は、シャーロットの荷物を見ると、屈強な男たちに指示をする。
「荷物を抱える女性を前にボサッとしてないで、手伝ってあげなよ」
それを合図に一斉に荷物を抱えていた両腕はすっからかんになり、かわりに赤目の男に腕を取られた。そのあっという間で強引な行動に呆気にとられるシャーロット。そして「先に屋敷に帰っていいよ」と言われた男たちの大きな背中は、あっという間に街の喧騒に飲み込まれていった。
こうして赤目の男と取り残されたシャーロットは、強引に腕を引かれながら歩を進めることになった。
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