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Scene20 最終話 転生令嬢の行き先
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「サミュエル殿下がヘラのことを忘れたことに、君はとてもショックを受けているね」
(そりゃあ、ショックだよ。だってあんな手を握る姿を見ちゃったら、夫婦の愛なんて見た目だけで信じてはいけないんじゃないかって、普通思うじゃん!)
「案外、ロマンチストだな」
「悪かったですね。案外で!」
口を尖らせ、そっぽを向くミーリエルにマーカスは、クスッと笑う。
「まあ、そんな顔しないで聞いてくれ。サミュエル殿下は、確かにヘラを忘れた。しかし、それはヘラが望んだことなんだ。ヘラの殿下への愛情と優しさだよ。孤独の辛さを知ってるヘラだから、こうしたんだ。最後のキスでサミュエル殿下の記憶を消して、王家へ戻す。そうしなければ、殿下に自分と同じ想いをさせてしまうだろう?」
マーカスの言葉にミーリエルは、ハッとした。確かにあのままヘラの死を目の当たりにすれば、まだ若いサミュエルは悲しみに打ちひしがれる。小説では一人余生を過ごした彼が、唯一ヘラの死の前で幸せになれる道だ。
そして、ミーリエルは思い出す。ヘラの最後の言葉を・・・
『サミュエル、最後に私からの贈り物を受け取ってね』
ミーリエルは自分の浅はかな思い込みを恥じ、素直にマーカスに謝った。
「アリアナは、ヘラから聞いていたんだ。彼女の望む最期を・・結果、私も事前にあの状況になることを知っていた。分かってくれたようで、よかったよ」
マーカスは嬉しそうな表情を浮かべ、ミーリエルの頭を撫でた。
その時、広間の方から呪いを解く儀式が始まる合図が聞こえてきた。ミーリエルとマーカスはお互いに微笑むと、立ち上がる。
「では、この宝探しの結末を見届けに参りましょうか、姫」
「姫って、そんなガラじゃありませんよ。さあ、さっさと行きましょう!」
そんな会話を交わしながら、2人の姿をは中庭へと消えて行った。
◇◇◇◇◇
「おおおおおっ!!」
「これで王国も安泰だ!」
「国王陛下バンザイ!」
「オーウェン殿下バンザイ!」
「サミュエル殿下バンザイ!」
儀式を終えると、広間の至るところから歓迎の声が上がった。
儀式は、小説どおりに行われた。
呪いによって奪われた心を取り戻すために、集めた宝石たちを使って、魔法陣を描く。そして、その宝石たちを触媒として、魔法を発動させた。魔法陣から放たれた七色の光は、オーウェンと国王の身体を包み込み、一瞬で弾け飛んだ。
光の中から現れた国王とオーウェンは、皆に笑顔を向け、握手をしていく。その姿に、誰もが安堵の息を漏らしていた。ようやく呪いは解けたのだと・・・
ミーリエルもまた、その様子を遠目に見ながら、ホッとしていた。
(一時はどうなるかと思ったけど、無事に終わって良かったぁ。結局、小説どおりだったのか、よく分からない結末だったな。強制力みたいなのが働いて、思いっきりストーリーを外れた道を強引に戻した感じだし・・・まあ、これで私の任務も終了!あとは侯爵令嬢として、のんびり、気楽に暮らすだけ・・ヒャッハー!明日から楽しみだ~)
心の中でミーリエルは小躍りしながら、喜びを噛み締めていた。そんな彼女に声がかけられる。
「ミーリエル様、随分と楽しそうですね」
「アリアナ様!」
今日もまた綺羅びやかな男装で颯爽と姿を見せたアリアナに、ミーリエルの心はさらに跳ね上がる。
(嗚呼、神様は私をどうしたいの!?こんなアリアナの姿を見せられたら、正気じゃいられなくなっちゃう・・ヤバッ、私、鼻息荒くなってない?スケベ親父張りに鼻の下を伸びてない?)
ミーリエルは、慌てて口元を手で隠すと、アリアナの様子を窺った。
「ミーリエル様?」
不思議そうに見つめてくるアリアナの姿に、ミーリエルは確信する。
(私、百合かもしれない。この時代にアリなの?ナシなの?)
ミーリエルは、我慢できずにアリアナを誘った。「あちらで少し話しませんか?」と・・
すると、横でそのやり取りを見ていたマーカスが割って入る。
「リンドン嬢、ぜひ私にミーリエル嬢と呼ぶ権利を与えてほしい。今すぐに」
(へっ!?いやいや、待って!妹と張り合ってどうする!?落ち着いて!もう、ゴタゴタはお腹いっぱいなの!侯爵令嬢の穏やかな貴族生活目指してるんだからね!)
だが、この時ミーリエルはまだ知らなかった。自分の山あり谷ありの波乱万丈な人生が、これからだということを・・・
(そりゃあ、ショックだよ。だってあんな手を握る姿を見ちゃったら、夫婦の愛なんて見た目だけで信じてはいけないんじゃないかって、普通思うじゃん!)
「案外、ロマンチストだな」
「悪かったですね。案外で!」
口を尖らせ、そっぽを向くミーリエルにマーカスは、クスッと笑う。
「まあ、そんな顔しないで聞いてくれ。サミュエル殿下は、確かにヘラを忘れた。しかし、それはヘラが望んだことなんだ。ヘラの殿下への愛情と優しさだよ。孤独の辛さを知ってるヘラだから、こうしたんだ。最後のキスでサミュエル殿下の記憶を消して、王家へ戻す。そうしなければ、殿下に自分と同じ想いをさせてしまうだろう?」
マーカスの言葉にミーリエルは、ハッとした。確かにあのままヘラの死を目の当たりにすれば、まだ若いサミュエルは悲しみに打ちひしがれる。小説では一人余生を過ごした彼が、唯一ヘラの死の前で幸せになれる道だ。
そして、ミーリエルは思い出す。ヘラの最後の言葉を・・・
『サミュエル、最後に私からの贈り物を受け取ってね』
ミーリエルは自分の浅はかな思い込みを恥じ、素直にマーカスに謝った。
「アリアナは、ヘラから聞いていたんだ。彼女の望む最期を・・結果、私も事前にあの状況になることを知っていた。分かってくれたようで、よかったよ」
マーカスは嬉しそうな表情を浮かべ、ミーリエルの頭を撫でた。
その時、広間の方から呪いを解く儀式が始まる合図が聞こえてきた。ミーリエルとマーカスはお互いに微笑むと、立ち上がる。
「では、この宝探しの結末を見届けに参りましょうか、姫」
「姫って、そんなガラじゃありませんよ。さあ、さっさと行きましょう!」
そんな会話を交わしながら、2人の姿をは中庭へと消えて行った。
◇◇◇◇◇
「おおおおおっ!!」
「これで王国も安泰だ!」
「国王陛下バンザイ!」
「オーウェン殿下バンザイ!」
「サミュエル殿下バンザイ!」
儀式を終えると、広間の至るところから歓迎の声が上がった。
儀式は、小説どおりに行われた。
呪いによって奪われた心を取り戻すために、集めた宝石たちを使って、魔法陣を描く。そして、その宝石たちを触媒として、魔法を発動させた。魔法陣から放たれた七色の光は、オーウェンと国王の身体を包み込み、一瞬で弾け飛んだ。
光の中から現れた国王とオーウェンは、皆に笑顔を向け、握手をしていく。その姿に、誰もが安堵の息を漏らしていた。ようやく呪いは解けたのだと・・・
ミーリエルもまた、その様子を遠目に見ながら、ホッとしていた。
(一時はどうなるかと思ったけど、無事に終わって良かったぁ。結局、小説どおりだったのか、よく分からない結末だったな。強制力みたいなのが働いて、思いっきりストーリーを外れた道を強引に戻した感じだし・・・まあ、これで私の任務も終了!あとは侯爵令嬢として、のんびり、気楽に暮らすだけ・・ヒャッハー!明日から楽しみだ~)
心の中でミーリエルは小躍りしながら、喜びを噛み締めていた。そんな彼女に声がかけられる。
「ミーリエル様、随分と楽しそうですね」
「アリアナ様!」
今日もまた綺羅びやかな男装で颯爽と姿を見せたアリアナに、ミーリエルの心はさらに跳ね上がる。
(嗚呼、神様は私をどうしたいの!?こんなアリアナの姿を見せられたら、正気じゃいられなくなっちゃう・・ヤバッ、私、鼻息荒くなってない?スケベ親父張りに鼻の下を伸びてない?)
ミーリエルは、慌てて口元を手で隠すと、アリアナの様子を窺った。
「ミーリエル様?」
不思議そうに見つめてくるアリアナの姿に、ミーリエルは確信する。
(私、百合かもしれない。この時代にアリなの?ナシなの?)
ミーリエルは、我慢できずにアリアナを誘った。「あちらで少し話しませんか?」と・・
すると、横でそのやり取りを見ていたマーカスが割って入る。
「リンドン嬢、ぜひ私にミーリエル嬢と呼ぶ権利を与えてほしい。今すぐに」
(へっ!?いやいや、待って!妹と張り合ってどうする!?落ち着いて!もう、ゴタゴタはお腹いっぱいなの!侯爵令嬢の穏やかな貴族生活目指してるんだからね!)
だが、この時ミーリエルはまだ知らなかった。自分の山あり谷ありの波乱万丈な人生が、これからだということを・・・
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