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第3章
第181話 リリス14歳 届けられた記憶
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帰り支度をするリリスにアリーナが聞いてきた。
「ねえ、さっきアルミーダさんに何て言ったの?」
「えっ?あぁ、さっき耳打ちした時?」
頷くアリーナにリリスは言った。
「”どうせ変えるなら、カエルみたいに潰れた顔の男の子に。それなら美しさに振り返ることもないでしょう”って言ったの」
リリスの言葉を聞いたアリーナが「実は一見優しく見えて、一番の厳しいのはリリスかもね。無自覚なのがまた・・」と苦笑した。リリスはアリーナの言葉の意味を理解できず「そーお?」と首を傾げている。
支度を終えたリリスたちが広場を出ようと歩き始めた時、その先に一人の少女が立ち塞がった。その姿は向こうの景色を透かし、今にも消えそうな幻影のようだ。皆が目の前の少女の姿に、首を傾げる中、リリスが声を上げた。
「ミズキ!」
リリスに名を呼ばれた少女は、淋しげな笑顔を見せた。突然、現れたミズキに驚きを隠さず駆け寄るリリス。手の届くほど目の前に来たリリスは「良かった・・また会えたね」と微笑んだ。しかし、その微笑みもミズキの身体が透けて消えてしまいそうに揺らいでいることに気付くと、悲しみに染まる。
「どうしたの?消えちゃいそうだよ」
そう問いかけるリリスにミズキは『忘れ物を届けに来た』と言った。リリスは「忘れ物?」と首を傾げ、ミズキは『そうだよ』と笑った。その笑顔にリリスの目には自然と涙が溢れてくる。涙を必死に堪えながら「最後なんだね、私たち」と聞くと、ミズキは黙って頷いた。
「そっか、最後か・・・折角会えたのに・・・・ねえ、忘れ物のお礼に私に何か出来ることない?」
思案する様子のミズキにリリスが思い付いたように手を叩き言った。
「あっ・・ねえ、さっきミズキは心残りがあるって言ってたよね。あれ聞かせて。ほら悩みって、一人で抱え込むより友達に話すほうがスッキリするじゃない」
リリスの提案に一瞬躊躇する仕草を見せたミズキだったが、すぐに笑顔を見せ話し始めた。
『話すつもりはなかったのに、リリスには負けたわ。心残りね。あるんだ・・・私が助けた男の子は無事だったのか。そしてもう一つは・・サクラは私がいなくなっても元気にしてるのか・・・ただそれだけだよ・・』
すると、リリスの身体が淡い水色の光に包まれ、それはミズキもろとも包み込んだ。突然の出来事にキョロキョロと自分たちを包む光を見渡す二人の目に映像が映し出される。
それは、見覚えのある男の子が友達に囲まれ元気に遊ぶ姿と友達に呼ばれた少女が一冊の本を手に駆け寄る姿。呼ばれた少女の名はサクラ、手に持つ本には”婚約破棄された悪役令嬢の雪辱”とタイトルが・・・
『嗚呼、二人とも元気にしてるんだ・・・良かった・・リリスありがとう』
ミズキが心から安心した表情を見せると、包んでいた光がパッと消えた。
「ううん、私は何もしてないよ。あっ、でもあの本のタイトルはどうかと思うわ。”婚約破棄された悪役令嬢の雪辱”って・・・」
『えー、本当に面白いんだから』
リリスが笑いながらミズキにそう言うと、彼女も楽しそうに笑顔を返した。そして、ミズキは決心したように言葉を続ける。
『最後に私からリリスに忘れ物という名のプレゼントあげるね』
彼女のセリフと共に走馬灯のように前世の記憶がリリスの頭の中を駆け巡る。見知らぬ世界、見知らぬ景色、見知らぬ人々、見たことのない道具・・・・
そして、リリスの体中を電気が走ったように刺激が巡った瞬間、彼女の中に前世の記憶が全て蘇った。
戻った記憶に呆然とするリリスに、ミズキが優しく語りかける。
『これで渡すべきものは全部渡せた。リリスが私の記憶も全部思い出してくれたから、もう思い残すことないよ。ありがとう・・リリス・・・貴女に生まれ変われて私に本当に幸せだよ・・・・』
そう言葉を残してミズキの姿は、リリスの前から永遠に消えた。
そして、どこからともなくリリスの頭上では番の青い鳥が飛びまわっていた。
「ねえ、さっきアルミーダさんに何て言ったの?」
「えっ?あぁ、さっき耳打ちした時?」
頷くアリーナにリリスは言った。
「”どうせ変えるなら、カエルみたいに潰れた顔の男の子に。それなら美しさに振り返ることもないでしょう”って言ったの」
リリスの言葉を聞いたアリーナが「実は一見優しく見えて、一番の厳しいのはリリスかもね。無自覚なのがまた・・」と苦笑した。リリスはアリーナの言葉の意味を理解できず「そーお?」と首を傾げている。
支度を終えたリリスたちが広場を出ようと歩き始めた時、その先に一人の少女が立ち塞がった。その姿は向こうの景色を透かし、今にも消えそうな幻影のようだ。皆が目の前の少女の姿に、首を傾げる中、リリスが声を上げた。
「ミズキ!」
リリスに名を呼ばれた少女は、淋しげな笑顔を見せた。突然、現れたミズキに驚きを隠さず駆け寄るリリス。手の届くほど目の前に来たリリスは「良かった・・また会えたね」と微笑んだ。しかし、その微笑みもミズキの身体が透けて消えてしまいそうに揺らいでいることに気付くと、悲しみに染まる。
「どうしたの?消えちゃいそうだよ」
そう問いかけるリリスにミズキは『忘れ物を届けに来た』と言った。リリスは「忘れ物?」と首を傾げ、ミズキは『そうだよ』と笑った。その笑顔にリリスの目には自然と涙が溢れてくる。涙を必死に堪えながら「最後なんだね、私たち」と聞くと、ミズキは黙って頷いた。
「そっか、最後か・・・折角会えたのに・・・・ねえ、忘れ物のお礼に私に何か出来ることない?」
思案する様子のミズキにリリスが思い付いたように手を叩き言った。
「あっ・・ねえ、さっきミズキは心残りがあるって言ってたよね。あれ聞かせて。ほら悩みって、一人で抱え込むより友達に話すほうがスッキリするじゃない」
リリスの提案に一瞬躊躇する仕草を見せたミズキだったが、すぐに笑顔を見せ話し始めた。
『話すつもりはなかったのに、リリスには負けたわ。心残りね。あるんだ・・・私が助けた男の子は無事だったのか。そしてもう一つは・・サクラは私がいなくなっても元気にしてるのか・・・ただそれだけだよ・・』
すると、リリスの身体が淡い水色の光に包まれ、それはミズキもろとも包み込んだ。突然の出来事にキョロキョロと自分たちを包む光を見渡す二人の目に映像が映し出される。
それは、見覚えのある男の子が友達に囲まれ元気に遊ぶ姿と友達に呼ばれた少女が一冊の本を手に駆け寄る姿。呼ばれた少女の名はサクラ、手に持つ本には”婚約破棄された悪役令嬢の雪辱”とタイトルが・・・
『嗚呼、二人とも元気にしてるんだ・・・良かった・・リリスありがとう』
ミズキが心から安心した表情を見せると、包んでいた光がパッと消えた。
「ううん、私は何もしてないよ。あっ、でもあの本のタイトルはどうかと思うわ。”婚約破棄された悪役令嬢の雪辱”って・・・」
『えー、本当に面白いんだから』
リリスが笑いながらミズキにそう言うと、彼女も楽しそうに笑顔を返した。そして、ミズキは決心したように言葉を続ける。
『最後に私からリリスに忘れ物という名のプレゼントあげるね』
彼女のセリフと共に走馬灯のように前世の記憶がリリスの頭の中を駆け巡る。見知らぬ世界、見知らぬ景色、見知らぬ人々、見たことのない道具・・・・
そして、リリスの体中を電気が走ったように刺激が巡った瞬間、彼女の中に前世の記憶が全て蘇った。
戻った記憶に呆然とするリリスに、ミズキが優しく語りかける。
『これで渡すべきものは全部渡せた。リリスが私の記憶も全部思い出してくれたから、もう思い残すことないよ。ありがとう・・リリス・・・貴女に生まれ変われて私に本当に幸せだよ・・・・』
そう言葉を残してミズキの姿は、リリスの前から永遠に消えた。
そして、どこからともなくリリスの頭上では番の青い鳥が飛びまわっていた。
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