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後日談 リーナストーリー ホワイトエンド - Ⅲ
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「リーナ、やっと会えた」
嬉しそうにそう話すセドリックとは裏腹に、リーナの頭は混乱していた。
(今日は、ここにいないはずじゃ・・)
戸惑うリーナに、セドリックが一歩前へ歩み寄る。すると、リーナは彼の瞳の色が少しだけ変わった気がした。
セドリックの纏うキラキライケメンオーラに久しぶりに当てられたリーナは、その眩さに耐えられず思わず踵を返し、廊下の奥へと走り出す。
「リーナッ!」
切なそうに呼び止める彼の声を背中で受け止めながら走るが、すぐに力強い腕に捕らえられた。後ろから抱きしめるセドリックの息づかいがリーナの耳をくすぐり、彼女の胸を高鳴らせる。
そして力強く、しかし壊さぬように華奢な身体を抱きしめたセドリックは、彼女の肩に顔を埋め「やっと捕まえた」と漏らす。その声は、安堵の色を滲ませていた。
「君に会えなくて寂しかった・・」
甘く囁かれた声色に、ゾクッと背筋が震える。
「離してください」
セドリックの腕から逃れようともがくものの、彼女の身体を捕らえる檻は、一層狭まる。力の差は歴然だった。そして身動きが取れないリーナは、ただただ顔を赤くして俯くことしかできなかった。
そんな彼女にセドリックの甘く囁く声が再び届く。
「悪かった・・・反省したんだ。今まで君の気持ちを考えずに、自分の気持ちを押し付けていた。調教などと言って悪かった。もう無理強いはしない・・」
リーナの知っているセドリックのセリフではなかった。まるで別人のようだ。
(いつも自信に溢れていた彼が、謝るなんて・・それにこんなに優しい言葉を掛けてくれるなんて・・・)
リーナが彼の言葉に戸惑っていると、さらに彼女を戸惑わせる言葉が紡がれる。
「リーナ・・君を愛してる 。君が愛おしくて仕方ない。君が受けて入れてくれなければ、この気持ちどうしたらいい?」
そして、最後にセドリックは苦しそうに言葉を紡ぎ出す。
「・・俺じゃダメか・・・?」
(“俺”・・いつもは“私”だったはず・・ヤバい、それ反則だわ)
素直に気持ちを吐露するセドリックに、リーナの胸にはムズムズとした心地良さと同時に困惑が大波となって押し寄せる。そして彼女の胸を支配したのは、困惑の波だった。
「こんなのセドリック様じゃない!!」
思わずそう叫んだリーナに不意を突かれたセドリックが、彼女を閉じ込めていた腕を緩める。その一瞬のスキをついたリーナは檻から飛び出すと、そのまま走った。
(あぁ・・もう!何なのよ、あれ!!おかしい!絶対におかしい!いつも自信たっぷりで強引で周りを振り回すのが、彼でしょう?いつもなら強引にキスして、身体に触れてくるのに・・・本当に別人・・もしかして彼、転生した・・?)
頭の中を様々想いがグルグルと渦を巻き、リーナの足を早める。そして「リーナッ!」と呼ぶセドリックの声は、遠ざかっていった。
角を曲がったリーナは、誰かとぶつかる。
「きゃっ!」
倒れ込んだ身体を起こしながら、リーナの胸にある想いが・・
(セドリックとの出会いもこんな感じだったな・・・)
「ごめん、大丈夫かい?」
そう心配して手を差し伸べてくれた相手の顔を見たリーナは、思い出の彼ではないことに胸が痛むのを自覚する。今、自分が置き去りにして来たばかりだから、当然だ。
「すみません」
手を借り、立ち上がったリーナに、見知らぬ男が「君、かわいいね。この後、時間ある?少しおしゃべりしない?」と誘いの言葉をかける。
リーナは、お茶会でビクトリアに連れられて出席者にはひと通り挨拶していた。なので、どう見ても出席者の男にも会っていたはずだが、全く見覚えがない。
(私がかわいい?目ちゃんと見えてる?)
「あの、すみません。間に合ってます」
“間に合ってます”とは、また検討違いな返事だったが、それしか思い浮かばなかった。
しかし「まあまあそう言わずに・・ねっ?ちょっとだけ・・・」と男はしつこく食い下がる。そして、そんな男に内心ため息をついたリーナが、はっきり言ってやろうかと口を開いたその時、突然男は、顔を真っ青して口をパクパクさせた。視線はリーナを素通りして、彼女の背後に向いていた。
「悪いな。彼女は俺との先約があるんだ」
嬉しそうにそう話すセドリックとは裏腹に、リーナの頭は混乱していた。
(今日は、ここにいないはずじゃ・・)
戸惑うリーナに、セドリックが一歩前へ歩み寄る。すると、リーナは彼の瞳の色が少しだけ変わった気がした。
セドリックの纏うキラキライケメンオーラに久しぶりに当てられたリーナは、その眩さに耐えられず思わず踵を返し、廊下の奥へと走り出す。
「リーナッ!」
切なそうに呼び止める彼の声を背中で受け止めながら走るが、すぐに力強い腕に捕らえられた。後ろから抱きしめるセドリックの息づかいがリーナの耳をくすぐり、彼女の胸を高鳴らせる。
そして力強く、しかし壊さぬように華奢な身体を抱きしめたセドリックは、彼女の肩に顔を埋め「やっと捕まえた」と漏らす。その声は、安堵の色を滲ませていた。
「君に会えなくて寂しかった・・」
甘く囁かれた声色に、ゾクッと背筋が震える。
「離してください」
セドリックの腕から逃れようともがくものの、彼女の身体を捕らえる檻は、一層狭まる。力の差は歴然だった。そして身動きが取れないリーナは、ただただ顔を赤くして俯くことしかできなかった。
そんな彼女にセドリックの甘く囁く声が再び届く。
「悪かった・・・反省したんだ。今まで君の気持ちを考えずに、自分の気持ちを押し付けていた。調教などと言って悪かった。もう無理強いはしない・・」
リーナの知っているセドリックのセリフではなかった。まるで別人のようだ。
(いつも自信に溢れていた彼が、謝るなんて・・それにこんなに優しい言葉を掛けてくれるなんて・・・)
リーナが彼の言葉に戸惑っていると、さらに彼女を戸惑わせる言葉が紡がれる。
「リーナ・・君を愛してる 。君が愛おしくて仕方ない。君が受けて入れてくれなければ、この気持ちどうしたらいい?」
そして、最後にセドリックは苦しそうに言葉を紡ぎ出す。
「・・俺じゃダメか・・・?」
(“俺”・・いつもは“私”だったはず・・ヤバい、それ反則だわ)
素直に気持ちを吐露するセドリックに、リーナの胸にはムズムズとした心地良さと同時に困惑が大波となって押し寄せる。そして彼女の胸を支配したのは、困惑の波だった。
「こんなのセドリック様じゃない!!」
思わずそう叫んだリーナに不意を突かれたセドリックが、彼女を閉じ込めていた腕を緩める。その一瞬のスキをついたリーナは檻から飛び出すと、そのまま走った。
(あぁ・・もう!何なのよ、あれ!!おかしい!絶対におかしい!いつも自信たっぷりで強引で周りを振り回すのが、彼でしょう?いつもなら強引にキスして、身体に触れてくるのに・・・本当に別人・・もしかして彼、転生した・・?)
頭の中を様々想いがグルグルと渦を巻き、リーナの足を早める。そして「リーナッ!」と呼ぶセドリックの声は、遠ざかっていった。
角を曲がったリーナは、誰かとぶつかる。
「きゃっ!」
倒れ込んだ身体を起こしながら、リーナの胸にある想いが・・
(セドリックとの出会いもこんな感じだったな・・・)
「ごめん、大丈夫かい?」
そう心配して手を差し伸べてくれた相手の顔を見たリーナは、思い出の彼ではないことに胸が痛むのを自覚する。今、自分が置き去りにして来たばかりだから、当然だ。
「すみません」
手を借り、立ち上がったリーナに、見知らぬ男が「君、かわいいね。この後、時間ある?少しおしゃべりしない?」と誘いの言葉をかける。
リーナは、お茶会でビクトリアに連れられて出席者にはひと通り挨拶していた。なので、どう見ても出席者の男にも会っていたはずだが、全く見覚えがない。
(私がかわいい?目ちゃんと見えてる?)
「あの、すみません。間に合ってます」
“間に合ってます”とは、また検討違いな返事だったが、それしか思い浮かばなかった。
しかし「まあまあそう言わずに・・ねっ?ちょっとだけ・・・」と男はしつこく食い下がる。そして、そんな男に内心ため息をついたリーナが、はっきり言ってやろうかと口を開いたその時、突然男は、顔を真っ青して口をパクパクさせた。視線はリーナを素通りして、彼女の背後に向いていた。
「悪いな。彼女は俺との先約があるんだ」
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