〘完〙なぜかモブの私がイケメン王子に強引に迫られてます 〜転生したら推しのヒロインが不在でした〜

hanakuro

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後日談 リーナストーリー ピンクエンド - Ⅷ

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廊下を歩くリーナは、ふと足を止め、ついさっき目の前で起こった出来事を思い出す。

リーナがビクトリアにシリウスを元に戻す方法を告げると、彼女は僅かに驚きの表情を浮かべ「それを私がするの?」と尋ねる。

「はい。私のいた世界には、長い眠りについていたお姫様がそれで目覚める物語が人気だったんですよ」

リーナの言葉を聞いたビクトリアは、その紫の瞳でリーナの視線を受け止める。そしてゆっくりと瞬きをして言った。

「そう・・リーナがそう言うなら、信じるわ」

ビクトリアはそう言うと、冷たくなったシリウスへと歩み寄る。そして顔を近づけると、冷たく固まる唇に自身の唇を重ねた。すると灰色の石と化していた彼の身体は、みるみる血色のいい肌色へと変化し、端正な顔もまた赤みを帯びた色へと変わる。

ゆっくりと閉じた瞼を開き、その瞳に涙を流すビクトリアを映したシリウスは、起き上がるとそっと彼女の身体を抱きしめたのだった。

リーナはポケットから火傷しそうなほど熱くなっていた石を手に取ると、既にそれは冷たくなりヒビが入っていた。そして、みるみるうちに粉々な砂になると、霧が晴れるように消えた。

リーナは何もない手のひらを見つめ、いよいよ前世との完全な別れが訪れたことを感じ、去来する寂しさを胸に再び歩き出した。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


シリウス石化騒動から数日後、リーナはビクトリアとシリウスを前に頭を下げていた。

「この度は、お二人に大変なご迷惑をおかけしました。大変申し訳ありませんでした」

「迷惑だなんて」

「そうだよ。君のおかげでこうして彼女とも、想いを交わすことができたんだ」

有り難いビクトリアとシリウスの言葉だったが、リーナは自身で決めた決意を告げる。

「もう演技は終わりにしましょう。自分から相談しておいて、身勝手なのは重々承知しております。だからこそ、もういいのだという考えに至りました。セドリック様も愛想を尽かしたようですし、もう、私に絡んでくることはないと思います。これで静かな生活が送れます」

「リーナ、それは違うのよ。私の話を聞きなさい」

「あっ、申し訳ありません。これから用がありますので、これで失礼いたします」

そう言って一方的に会話を終わらせたリーナは、逃げるように二人の前から立ち去った。

(二人も何とか上手くいったし、めでたしめでたしね。あー、私もシリウスみたいな素敵な人探そう。何と言ってもシリウスは、イケメンだし、誠実だし、嫌なことしないし、浮気の心配もないし、穏やかな時間を共有できる・・・
でもドキドキしないわ・・セドリックは、イケメンすぎるし、強引だし、すぐエッチなことしてくるし・・でもきっとよそ見はしない。それに彼以上に私をドキドキさせて、楽しませてくれる人なんているかしら・・・きっと居ないわね・・)

リーナは今更ながら、セドリックの存在の大きさに気付くが、後悔しても戻ることができない関係に胸を締め付けられる。

「もう手遅れだし・・・・」

その声は、リーナが虚無感を手繰り寄せるのに充分すぎるくらい悲しげなものだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


リーナは少し前から増殖を始めたリーナの取り巻きたちに囲まれていた。やけにリーナを持ち上げる令嬢たちに辟易へきえきしていた彼女は、八つ当たりのように強い口調で言った。

「もういい加減にして!私に魅力がないことは、見れば分かるでしょう!みんなの夢を私に重ねるは止めて!はっきり言って、迷惑だわ!」

リーナの言葉に顔を見合わせる取り巻きたち。一気に悪くなった場の空気に耐えられなくなったリーナは、逃げ出したい気持ちに素直に従う。乱暴に立ち上がると、取り囲む人の輪を抜け出した。

そして「リーナ様」とまだすがる取り巻きたちを置き去りにして、走り出したその時、青ざめたシリウスがリーナの視界に飛び込んできた。

「リーナ嬢!ビクトリアが殿下に拉致された!」
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