〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です

hanakuro

文字の大きさ
46 / 74
アフターストーリー

アフターストーリー小マリオン爆誕!

しおりを挟む
「疲れたぁ~。充電~」

「預けてきたのか?」

「うん。もうお義父様もお義母様も、“何なら明日までゆっくりしても構わない”なんて言っちゃって、リオルのこと本当に可愛くて仕方がないみたい」

ソファーに座るマリオンに充電と称して抱きついているのは、エルメだ。ダリオンとエリザベートの“たまには二人でゆっくりしなさい”という計らいで、マリオンとエルメの子リオルを二人が預かってくれたのだ。

「久しぶりに、二人でゆっくりできるね」

「ああ、そうだな」と肯定のセリフを口にしながら、マリオンはエルメの肩を抱く。その表情は口の端を上げ、穏やかな雰囲気を漂わせている。そして、マリオンにくっつくエルメも、まるで温かい毛布に包まれているような甘美な温もりを堪能していた。

テラスへ続く窓から聞こえる鳥のさえずりはエルメの耳を楽しませ、差し込む穏やかな日差しは春の訪れを感じさせた。

「外、気持ちよさそう」

エルメの呟きにマリオンは「待ってろ」と言うと、エルメを軽々と抱き上げ、テラスのベンチへ連れて行く。穏やかな風は、木々のざわめきを耳に届ける。

エルメとマリオンは、雲ひとつない青空に見守られ、二人きりの時間を堪能していた。

しかしその時間は、想定よりだいぶ早く終わりを告げた。

「リオルが言葉を喋ったぞ!」

勢いよく二人がイチャつく部屋に飛び込んで来たのは、ダリオンだ。リオルを抱き上げ、興奮して入ってきた。後ろにはエリザベートの姿もある。

ピタリと寄り添うエルメとマリオンは、慌てて身体を離し、テラスから戻る。

「父上、何事ですか」

「おお、マリオン!リオルが言葉を喋ったぞ!」

ダリオンの言葉にエルメは「あっ!」と声を上げる。それに察したマリオンは苦笑すると、彼女の頭をポンと撫でた。

「父上、伝えるのを忘れていましたが、リオルは喋るようになりましたよ」

「なにっ!!なぜそれを早く言わんのだ!」

「そうよ!私たち、それはもう驚いたのよ!」

「お義父様、お義母様、申し訳ございませんでした。私がお話するのを、忘れていたんです」

「父上、母上、リオルはなかなか賢い子ですよ。いまお見せしますから、お座りください」

マリオンはそう言うと、ソファーへ皆を誘導した。皆が腰を落ち着けると、エルメがリオルと目線を合わせ、語りかける。

「リオル、練習の成果をお見せしましょうね。この人はだぁれ?」

エルメはそう言って、エリザベートを指し示す。それにリオルは「ばぁ」と答える。エリザベートは孫の様子に目をキラキラさせ、胸を押さえて感動している。

そして次に「この人は?」と、ダリオンを指すと、リオルは「じぃ」と答え、ダリオンもまた驚きの表情を浮かべ「天才だ」と呟いた。

そして、次のマリオンにも「ちち」とリオルは正解を答える。そして、最後にエルメは自分を指し、「じゃあこれは?」と尋ねるとリオルは「はな」と返した。

「はな!?」

「リオル、“はな”ではなくて、“母”だろう?」

マリオンがそう語りかけると、リオルは「はーなっ!」と繰り返した。エルメは「もう一回やってみましょうね」と言い、先程と同じやり取りをエリザベートから繰り返す。そして最後に自分のことを尋ねると、リオルの答えはやはり“はな”だった。

「母って、発音しづらいのかしら」

「でも、昨日はちゃんと出来てたじゃないか」

エルメとマリオンが疑問符を浮かべ話していると、突然ダリオンが豪快に笑いだした。

「ブハハハハッ・・いやいや・・リオルは賢い子だなっ!いったい誰に似たのか・・」

ダリオンの言葉にエリザベートが「私ですよ」と鼻息荒く返している。そんな皇帝と皇妃のやり取りを首を傾げ見守るエルメとマリオン。そんな二人にエリザベートは、笑顔で説明を始めた。

「エルメ、貴女の尋ね方よ。リオルは質問に忠実に答えを出したのですよ」

「忠実ですか?」

「ええ、だって貴女、私たちの時は“この人は?”と聞いたのに、自分の時は“これは”と聞いたでしょう?しかも自分の鼻を指して・・だからリオルは“母”ではなく“鼻”と言ったのです。本当に賢い子ねぇ」

ダリオンとエリザベートは、今にも溶け出しそうなデレデレの微笑みを浮かべて孫を見つめている。

「えっ!そんな些細な言葉の違いで?」

「そうですよ。今度は、ちゃんと尋ねてみなさい」

エリザベートに促され、エルメは自分を指し「この人はだぁれ?」と聞くと、リオルは「はは!」と答えた。

「ねえ、言ったとおりでしょう?」

「はい、本当に驚きました」

エルメとマリオンは、我が子の新しい一面に気付かされ、顔を見合わせる。

そしてダリオンは「よし!爺がもっと教えてやるぞ!」と宣言すると、リオルを抱き上げ扉へと足を進める。エリザベートも慌てて立ち上がり「私も一肌脱ぎましょう!」と後を追った。
 
嵐のように去っていった皇帝夫妻にマリオンとエルメは、顔を見合わせ苦笑する。そして再び部屋に訪れた二人きりの静寂にホッと胸をなでおろすと、マリオンに手を引かれたエルメは、春の日差しが降り注ぐテラスへと消えていった。

この後の夫婦水入らずの時間は、ダリオンたちがリオルを離さなかった為、翌日まで続いたのだった。

そして、この微笑ましい会話の日からちょうど一年後、エルメの耳に既視感ありすぎるリオルの宣言が届く。

「母上っ!賭けをしよう!僕が勝ったら、母上は僕のものになれっ!父上には絶対渡さないぞ!」

(はっ?賭けっ!?既視感半端な~い・・一体マリオンと何があったの・・・)

この瞬間、ガイアール皇家に小マリオンが爆誕したのだった。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


マリオンの後日談、続きます。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜

矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】 公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。 この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。 小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。 だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。 どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。 それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――? *異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。 *「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。

転生賢妻は最高のスパダリ辺境伯の愛を独占し、やがて王国を救う〜現代知識で悪女と王都の陰謀を打ち砕く溺愛新婚記〜

紅葉山参
恋愛
ブラック企業から辺境伯夫人アナスタシアとして転生した私は、愛する完璧な夫マクナル様と溺愛の新婚生活を送っていた。私は前世の「合理的常識」と「科学知識」を駆使し、元公爵令嬢ローナのあらゆる悪意を打ち破り、彼女を辺境の落ちぶれた貴族の元へ追放した。 第一の試練を乗り越えた辺境伯領は、私の導入した投資戦略とシンプルな経営手法により、瞬く間に王国一の経済力を確立する。この成功は、王都の中央貴族、特に王弟公爵とその腹心である奸猾な財務大臣の強烈な嫉妬と警戒を引き寄せる。彼らは、辺境伯領の富を「危険な独立勢力」と見なし、マクナル様を王都へ召喚し、アナスタシアを孤立させる第二の試練を仕掛けてきた。 夫が不在となる中、アナスタシアは辺境領の全ての重責を一人で背負うことになる。王都からの横暴な監査団の干渉、領地の資源を狙う裏切り者、そして辺境ならではの飢饉と疫病の発生。アナスタシアは「現代のインフラ技術」と「危機管理広報」を駆使し、夫の留守を完璧に守り抜くだけでなく、王都の監査団を論破し、辺境領の半独立的な経済圏を確立する。 第三の試練として、隣国との緊張が高まり、王国全体が未曽有の財政危機に瀕する。マクナル様は王国の窮地を救うため王都へ戻るが、保守派の貴族に阻まれ無力化される。この時、アナスタシアは辺境伯夫人として王都へ乗り込むことを決意する。彼女は前世の「国家予算の再建理論」や「国際金融の知識」を武器に、王国の経済再建計画を提案する。 最終的に、アナスタシアとマクナル様は、王国の腐敗した権力構造と対峙し、愛と知恵、そして辺境の強大な経済力を背景に、全ての敵対勢力を打ち砕く。王国の危機を救った二人は、辺境伯としての地位を王国の基盤として確立し、二人の愛の結晶と共に、永遠に続く溺愛と繁栄の歴史を築き上げる。 予定です……

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。

三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*  公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。  どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。 ※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。 ※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!

美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』  そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。  目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。  なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。  元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。  ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。  いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。  なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。  このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。  悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。  ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――

偽聖女と追放された私は、辺境で定食屋をはじめます~こっそり生活魔法で味付けしていたら、氷の騎士団長様が毎日通ってくるんですけど!?~

咲月ねむと
恋愛
【アルファポリス女性向けHOTランキング1位達成作品!!】 あらすじ 「役立たずの偽聖女め、この国から出て行け!」 ​聖女として召喚されたものの、地味な【生活魔法】しか使えず「ハズレ」の烙印を押されたエリーナ。 彼女は婚約者である王太子に婚約破棄され、真の聖女と呼ばれる義妹の陰謀によって国外追放されてしまう。 ​しかし、エリーナはめげなかった。 実は彼女の【生活魔法】は、一瞬で廃墟を新築に変え、どんな食材も極上の味に変えるチートスキルだったのだ! ​北の辺境の地へ辿り着いたエリーナは、念願だった自分の定食屋『陽だまり亭』をオープンする。 すると、そこへ「氷の騎士団長」と恐れられる冷徹な美形騎士・クラウスがやってきて――。 ​「……味がする。お前の料理だけが、俺の呪いを解いてくれるんだ」 ​とある呪いで味覚を失っていた彼は、エリーナの料理にだけ味を感じると判明。 以来、彼は毎日のように店に通い詰め、高額な代金を置いていったり、邪魔する敵を排除したりと、エリーナを過保護なまでに溺愛し始める。 ​最強の騎士団長と騎士たちに胃袋を掴んで守られながら、エリーナは辺境で幸せなスローライフを満喫中?

処理中です...