メイドから母になりました

夕月 星夜

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魔法省で臨時メイドになりました

友の思い

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なんだかんだと私の感情が追いつかぬまま、今日の予定が終わったらしい。あの後ぴったり私に張り付いていたレオナール様に王女様がなんども質問していたけれど、私の傍から離すことは出来なかった。というかずっと私の手を握っていたからレオナール様が移動すると必然的に私もくっついていく感じだったんだよね。
私を見る王女様の目が本当に悲しそうだったのが、どうしようもなく罪悪感を覚えさせらえれる。と呟いたら、ヴィオラさんに怒られたんだけどね、自分に自信がないのはよくないって。
そして王女様を部屋まで送った後、魔法省のレオナール様の部屋に戻ってきたまではいいんだけど、何故かソファーに座ったレオナール様の足の間に座らされて後ろから抱き締められた。
あのね、別にそうされること自体は嫌じゃないというか、でも場所と状況がよろしくないというか、うなじに息がかかってくすぐったいやら恥ずかしいやらなんだよね!

「レオナール様、そろそろ離してくださいー」

じたばたしてみても反応が返ってこない。まさかこの体勢で寝てたりしないよね?

「リリーちゃんも大変ねぇ」

しみじみと呟いたのはヴィオラさんで、部屋には他にもルーカスさんやグレイさん、ウィレムさんもいたりする。
うん、そうなんだよ。他にも人がいるんだよ、だから離していただきたいんだよね!

「もー、家なら好きなだけしていいですから、外は嫌ですっ!」

ルーカスさんとウィレムさんはそっと視線外してるし、ヴィオラさんは哀れみ混じりの顔してるし、グレイさんは嬉しそうだし……ん?

「どうしてグレイさんはそんなに嬉しそうな顔しているんですか?」

向かいに座ったグレイさんは自分の膝に肘をついて物凄くにこにこしてるんだけど、この状況そんなに面白い?

「んー、だって嬉しいからね。リリーちゃんがそうやって取り繕わない姿を見せてくれるのもだけど、なによりレオナールさんが心を許せる相手を見つけられたっていうのがさ」
「それは、ええと。魔法使い同士の共通認識ですか?」
「少なくともここにいる全員はそうじゃないかなー」

ねえ、とグレイさんが呼びかけたら、本当に全員が頷いた。

「リリーちゃんが来てからレオちゃん明るくなったし、毎日楽しそうなのよね。ジルちゃん引き取った時にはどうなることかと思ったけど、上手くいってるみたいだし」
「そうですね、それに表情が豊かになり、会話も続くようになりました。だから、よりレオナール殿の気持ちを理解できるようになったのが嬉しいですね」
「最初はレオナールが傷つくんじゃねーかと心配もしたが、あんたは凄くはいい奴でさ。なんつーか、ああ大丈夫だなって安心したし、仕事じゃなくて本当の家族になってくれたらいいんだけどなとは思ってたぜ」

口々にレオナール様と私の関係を肯定されて、恥ずかしいけど嬉しい。思わず赤くなった頬を両手で覆ったら、グレイさんが瞳を輝かせて身を乗り出してきた。

「ねえねえ、どうしてリリーちゃんはレオナールさんを選んでくれたの?」
「え?」
「レオナールさんが好きになる気持ちはわかるんだー、俺は恋愛感情じゃないけどリリーちゃん好きだしさ。でも、リリーちゃんの周りはレオナールさん以外にも色んな男性いたじゃん? 次期宰相殿とか、いっつも一緒にいた髪の長い護衛さんとか、王太子の近衛隊長とか」
「ロイゲンはない」

思わず勢いこんで叫ぶように言っちゃったけど、本当にそれだけは絶対ないから。ありえないから。
天地が逆さまにひっくり返る方がまだありえるから。

「まあ、その方は置いておくとして。確かにリリー殿なら黙っていても男性の方から近寄って来そうではありますよね」
「……あの、皆様が思われるほど男性と接点ありませんよ?」
「それ、謙遜にもほどがあるからな」

ウィレムさんに呆れた声を出されるけど、だって事実そうだし。仕事以外の関係はなかったんだってば。

「ねね、じゃあレオナールさんのどこが好き?」

グレイさんの質問に目を瞬かせる。レオナール様のどこが好き?

「そういうのは、本人の前で言っていいのでしょうか」
「だってレオナールさん全然動かないし、寝てるならいいんじゃない?」

確かにこの体勢になってから何も喋らないし、身動きもしてないんだよね……

「レオナール様、起きてますか?」

訊ねてみてもやっぱり反応はない。ほんとに寝てるのかなぁ。

「ね、いいでしょ? 教えてよ!」

グレイさんだけじゃなく、ルーカスさんたちも聞きたいみたいな雰囲気だ。
これは話すしかない、かな?
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